The Giving Tree
12月最初の絵本は「ギビングツリー」です。
毎年ご紹介しているので、すでにお読みくださった方もあるかもしれませんね。
つややかな緑色の背景に1本の高い樹と、枝から落ちてくる赤いリンゴの実と、思い切り手を伸ばしてそのリンゴを受け取ろうとしている小さな男の子が描かれている表紙は、つややかな緑が目に鮮やかで、明るく印象的。一見、いかにも陽光きらめく春か夏の印象です。が、冬にもクリスマスにも縁がなさそうに見えるこの絵本、実はアメリカではクリスマスの定番絵本。クリスマスになると、雪だるまの冒険物語や、くるみ割り人形、あるいはサンタやトナカイが表紙を飾る絵本やクリスマスソングのCDと並んで、毎年必ず本屋さんのクリスマスコーナーに飾られる(どころか平積みになる)一冊なのです。
「ギビングツリー(The Giving Tree)」は、世界中で30ヶ国語以上に翻訳され、子どもにも大人にも愛読されている絵本です。絵もお話もシルバースタイン(Shel Silverstein)の作。べストセラー作家の名を欲しいままにしているシルバースタインの作品の中でも、最も多くの人に読まれてきた絵本で、かつ長いあいだ読まれ続けているロングセラーでもあります。
リンゴの樹が少年と友達になりました。樹は少年が大好きでした。大好きで、大好きで、少年の望むものは何でも与えようとします。暑い日には少年のために涼しい木陰をつくってやり、おなかがすいたと言えばリンゴの実を与え、遊びたいと言えば枝を差し出してブランコを下げて遊んでやりました。
ある日、少年は、遠くの広い世界へ行きたいと言いました。それを聞いて、樹はみずからの幹を投げ出して船を造らせます。そして……少年は、その船に乗って樹のもとを去って遠くに行ってしまいました。
永い年月が過ぎ、ある日、切り株だけになってしまった樹のもとに、かつての少年が戻ってきました。年をとって疲れ果て……。少年は、もちろん、もうかつての少年ではありません。
樹は、悲しいけれど、もう何もあげるものがない……と嘆きます。でも今、年老いたかつての少年が欲しいのは安らぎだけ。ああ、それなら、ここでおやすみ……。樹は、少年の望むものを与えることができて、ほんとうに幸福でした。
そう。まさにクリスマスに読むにふさわしい愛のお話です。
クリスマスのプレゼントにいかがですか? お子さんに、ご両親に、恋人に、子育てのパートナーに、恩師に、どなたと分かち合っても素敵な絵本です。大人から大人へのプレゼントにも最適で、しかもおしゃれな一冊です。日本では最近、村上春樹さんの翻訳で新しい版が刊行されました。