日伊相互文化普及協会

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食・スローフード【イタリア食材の範疇にないケチャップ】8月2日(水)

2006-08-02 11:07:49 | Weblog
イタリア人はケチャップを使わないから、家庭でもレストランでも置いていないと前回書いた。昔も今も。
イタリア人にとってケチャップはおぞましい「もの」であるようだ。

36年前の日本にはパスタといえばロングパスタのスパゲッティナポリタンしかなく、ソースはケチャップだった。水煮トマトやトマトソースの缶詰もまだなかった。
イタリアでロングパスタの味を覚えた私は日本に帰ると時々作って食べた。
若かった私はトマトを買ってきてソースを作るなどという、日本ではまだ誰もやっていないことをやろうとは思わなかったから、ソースは当然ケチャップ。
不思議な味のスパゲッティになるのだが、日本にいるときはそれでいいと思っていた。

あるときイタリア人に「あんた、日本でスパゲッティを食べるん?」と聞かれ、「自分で作って食べる」と自信たっぷりに答えた。
「ソースは?」と聞かれ、「ケチャップ」とまた自信たっぷりではないが答えた。相手は口をポカンと開け、二人の間にしばしの間があいた。そして「ケチャップ?」と3度聞き返され、「フランス人がトマトソースの代用でオムレツにかけたりするやつ?」と念を押された。

その後あちこちで何度か同じことをたずねられ、同じことを答えた。
「ソースぐらい自分で作りなさいよ」「味おんちになるよ」「能なし」「オエ~ッ」。
なんだかケチャップと言うのがはばかられてきた。
しゃあない、と、とうとうトマトを買ってきて自分で作った。作ってみて心からしみじみ「作ってよかったあ」と思った。
その頃はレストランでもトマトから作ったソースが出始めていたが、まだ大半がケチャップだった。

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