伝えるネットねこレポート

「水俣」を子どもたちに伝えるネットワークのブログ。
首都圏窓口の田嶋いづみ(相模原市在住)が担当してます。

芝浦工大への出前は、いつもお土産付き

2012-06-14 15:22:19 | 出前レポート
芝浦工大への出前は、いつもお土産付き

2012年5月17日  13:00~14:30
芝浦工業大学システム環境学科 「環境と文明社会」
行ったひと・田嶋

●今年のテーマは、患者の視点だけではなく

伝えるネット設立の翌年から続いている芝浦工大の出前。
「環境と文明社会」の講座のなかで、毎年松下潤先生が招請してくださいます。
(写真は、出前の開始に紹介してくれている松下先生。
背後に、桑原史成氏撮影の大きな写真パネルが見えています)



松下先生の出前招請は、私たちにいつも課題をくださいます。
アンケートをとるようになったのも、レジュメの書き方も、事前資料として1週間前に提示するPPスライドづくりも、
課題をクリアするため。結果的に、私たちの出前の仕方を鍛えてもらってきたと思っています。

そして、今年度の課題は、「客観性のある伝え方を」でした。
昨年、学生から「患者側に立ちすぎではないか、チッソの側の視点もほしい」という意見があったから、ということでした。

これは、相当の難題でした。
専門家でも研究者でもなく、生活者としての私たちの視点は、「人間として」と言いたいと思っています。
しかし、人間としてのチッソの姿が見えてこない。
立場や意見が異なるとしても、人間としての共感はあります。ナマの声が聞こえてくれば。

今年2月26日、環境省主催で行われた水俣病セミナーで、JNCという名前になったチッソの声を聞きました。
(はるか昔、伝えるネットを立ち上げたばかりのころ、水俣のチッソ工場を見学させてもらったことがあります。
それこそ、チッソのことも知らなきゃ、って思ったから。
そのとき、説明者として現れたのは、子会社の方でした。
事前に見学目的も、見学者名簿も出していて、対応は子会社の社員の方でした。・・・とすると、
チッソのひとの声はこの日が初体験だった?!・・・)
共感以前に、言葉がわからなかった。
「私たちは、倒産以上の苦しみを味わった」って。

・・・というようなことは、結局、余談として。

事実はひとつ。ひとつだけれど、それはローソクのようなものかもしれない、と考えました。
燃えるローソクを見るのに360度。私たちはどこから見ることを選ぶのか。
まず、自分の立ち位置を自覚することから始めよう。
それが、今年度の出前の姿勢となりました。
事前にレジュメを届けた折の、松下先生の言葉はこうでした。
「これで行きましょう。あとは、あなたのパーソナリティーですね」


● そして、今年のお土産はふたつの研究成果

それで、出前の中身がどうなったかは、学生のみなさんのアンケートにのぞいてみるしかありません。
アンケートの集約は、次の会報で報告しますね。

そして、講義後、松下先生の研究室で、少しお話させていただいて帰路につくのも習いとなってずいぶんとなります。
出前をのぞきにいらしたトヨタ財団から、それをご縁に、助成をお願いされるようになった松下先生は、
その後、研究成果などの資料を見せてくださるようにもなりました。
今年は、「沖縄地方における赤土流失抑制・さんご礁保全に向けた環境経済調和型農業生産モデルの実証実験」と
「都市型農園を用いた高齢者の『生きがい・就労』社会実験~超高齢化社会のフフロントランナー・日本の安心安全基盤に向けて~」の
ふたつの報告を説明つきでいただいて帰ってきました。

専門家の松下先生の研究は、私たちのような市民にとっても、とても興味深く、
ホクホクとした気持ちでお土産をめぐって、メンバーで話もはずんだのでした。


【付けたし】 チッソからの人の声を探そうとして、ひとつだけ、
その声が聞こえてくる書籍を見つけました。
 『水俣病 20年』 水俣病50年取材班/西日本新聞社 です。