■ はじめに
ちょうど就活シーズンになり、私も面接をすることが多くなりました。面接の時などに、学生から「会社に入る前に、何かやっておいた方が良いことはありますか?」という質問を受けます。私は、この時には必ず「タイピングを練習しておいてください」と話をするようにしています。タイピングなんて、いまさら語るほどのものでもないのですが、今回はあえてタイピングについて話をしたいと思います。
■ 意外と軽視されているタイピング
今回、あえてタイピングを取り上げるのは、意外と軽視されていると感じることが多いからです。例えば、デージーネットがここ5年間に採用した中途社員で、タイピングのスピードが満足できる社員は、ほとんどいませんでした。もちろん、中途社員ですから、全員が何らかのビジネスの経験があります。ほとんどの人は、プログラマーとしての経験者です。にも関わらず、タイピングが遅いのです。
デージーネットでは、lettersというタイピングソフトを使って、タイピング能力の測定をしています。
このソフトは、インベーダ風のゲームです。上から落ちてくる英単語を、正確にタイプすることでクリアしていきます。このゲームの点数が、3000点以上になることが、デージーネット内で設けている基準です。例えば、内定者(つまり大学生)にやってもらうと、最初は100~500点くらいしか取れません。ですので、タイピングソフトをUbuntu(Linux)のLive CDに入れて渡して、練習してもらっています。それで、今年入社した社員は全員が3000点の基準をクリアした状態で会社に入ってきました。つまり、努力すれば越えられる程度の基準ということです。新入社員の場合には、真面目に取り組んでくれるので、みんなが基準を越えられています。
しかし、経験者であるはずの中途社員で、最初からこの基準をクリアしている人は、ほとんどいません。多くの人が、ちょっと練習すれば出せる点数(1000点程度)です。さらに、その後真面目に練習する人も非常に少ないです。「タイピングなんて」と、軽視してしまう人が多いのです。
■ タイピングが遅いと...
タイピングが遅くて損をすることは、挙げれば切りがありません。プログラマーであれば、当然プログラムを作るのが遅くなります。事務方の業務の場合も、メールや文書を作成するのが遅く時間がかかります。効率がとても悪いのです。
効率が悪い以上に問題なのは、トライアンドエラーで身につけられるはずのものが、なかなか身につかないということです。プログラミングやソフトウェアの設定方法などを身につけるためには、実際にやってみて、上手く行かなくて、やり方を変えて...というトライアンドエラーが適していることが少なくありません。そのため、タイピング遅いと、このトライアンドエラーができる回数が少なくなります。私たちの経験上、タイピングだけで5倍~10倍くらいの差が出ます。トライアンドエラーが5分の1の回数しかできなければ、それだけ身につくものが少なくなります。当然ですが、時間とともに、大きな差がついてしまうことになります。
また、人に教えてもらうときの印象にも影響を与えます。技術の仕事をしていると、「ちょっと打ってみて」というような形で教えてもらうことが多いと思います。この時に、タイピングが遅かったり打ち間違いが多かったりすると、教えている相手はとてもイライラします。実際に、デージーネットの社員に聞いてみると、「人に教えるときに、タイピングが遅くてイライラした」という経験がある人はとても多かったです。教える側がイライラしたのでは、丁寧に教えてもらうことはできなくなります。また、何度かイライラした経験ができてしまうと、次は教えようという気にならないでしょう。
■タイピングが早いと仕事ができるように見える
タイピングが早いだけで得することもあります。
例えば、お客様先で上手く行かないことがあって、呼ばれて作業に行ったような場合です。こうした場合には、技術者が作業をしている真後ろに立って、作業を見守っているお客様というのは意外と多いものです。こうした時に、タイピングが遅いと、何をやっているのかが良く分かります。ですので、お客様は、遅いことにイライラしながら、ずっと見守っているという状態になってしまいます。これは、とても緊張します。打ち間違いが増えて、さらに遅くなるという悪循環にもなりやすいです。
一方、タイピングが早いと、お客様は何をやっているのか分からないうちに、どんどん作業が進んでいるという印象を受けます。見ていても分からないので、しばらくすると他のことをやるために離れていきます。タイピングが早いだけで、「できる技術者が来た」という印象になるのです。お客様にじっと見られながら作業をしなくて良いので、緊張度も低く、仕事が上手くいく確率が上がります。
■どれくらいのスピードが必要か?
どれくらいのスピードが必要かという客観的な指標はなかなか難しいですが、世の中にはタイピングの資格試験などもあるようです。例えば、商工会議所が実施している「ビジネスキーボード認定試験」の基準では、10分間に日本語900文字、英語3000字が入力できれば、最高のSの評価になると書いてあります。だいたい、1秒間に5文字程度の入力スピードです。実際には、入力ミスなどもありますので、倍の1秒間に10文字くらい打てるのが理想だと思います。
これくらいのスピードで入力すると、後ろから見ていて何をやっているか分からないくらいだと言えます。10文字程度のコマンドなら1秒以内で入力が完了しますので、実行結果が多ければ画面が流れてしまいます。また、結果を読み取って、次のアクションをするのが数秒でできれば理想的です。数秒単位でめまぐるしく画面が変わっていくと、周囲からは何をやっているのか分からない状態になります。
■おわりに
今回は、いまさらながらタイピングについて取り上げて見ました。タイピングは、IT技術者にとって、基本中の基本です。基本をおざなりにしては、何事も習得することはできません。
IT技術者なら、タイピングぐらいは、「すごい!」と言ってもらえるレベルでいたいものです。
私はIT業界の人間ではありませんが、メールやワープロを使う機会は多いため、これからタイピングを鍛えて能率をあげようと思います。
この機会に自分も実力を試してみたいのですが、lettersというソフトはネットでは見つかりませんでした。私では100点もとれないでしょうが・・・。社内のものですか?
lettersは、もともとUNIX用に開発されたタイピングゲームで、私の手元にあるマニュアルには1991年と書かれています。Windowsが出てくるよりもずいぶん前のソフトですね。
ソースコードが公開されていましたので、ランキング表示を付けたり、Linuxでコンパイルできるようにするなど、改良して使っています。
MS-DOSなどでも動作すると書いてあります。いろいろやったのですが、今のところWindowsでは動作していません。
もし、ご希望でしたらソースコードやLinux(CentOS)で動作するバイナリをお渡しすることはできます。
せっかくですが、私は現在Windowsしか使っていないため、ソースを頂いても使えないと思います。他にもゲームはありますので、1秒10文字(これが3000点くらいなのですよね)を打てるように頑張りたいと思います。この文章もそうですが、もっと早く打てたら私の能率はぐっとあがると思います。手書きと違って活字は雑になることがありませんし。
“letters” は一般名詞なのでなかなか手こずりましたが、
1991 unix "letters" typing
というキーワードで検索して見つけた man page
http://web.mit.edu/games/man/cat6/letters.6
から、作者の Larry Moss と unix で、
"letter-invaders" という別名を発見、そして、
http://www.fooledya.com/games/letters/
を見つけました。
しかし、難しいですね。
エイリアンがランダムに辞書から英単語を選択するということなので、見たこともないような単語が多くて。
ちなみに、 Mac OS X バージョンで遊んでみましたが、なぜか背景がバルーンアートの背景に変わって行きます。
http://gyazo.com/3f63254f4833e9c2aa4e9181cd0d2e90
なぜかと思うと、作者の Larry Moss さんはバルーンアーティストなのですね。
http://airigami.com/larry-moss/
http://airigami.com/community/