ギリシャ神話の中で、海の神ポセイドンとの約束を破った、クレタ島の王ミノスは、神の逆鱗に触れて、王妃は竜頭人身の怪物ミノタウロスを産まされた。怪物ミノタウロスは、島民を追い回し、喰らい、島中を恐怖のどん底につきおとした。困りはてたミノス王は、名工ダイダロスに相談することにした。彼は、巨大な迷宮をつくり、魔王ミノタウロスを閉じこめるアイディアを思いつく。こうして造られたのが、迷宮ラビリンスであった。そして、毎年アテネから送られてくる7人の若者と、7人の乙女を、迷宮ラビリンスに閉じこめ、魔王ミノタウロスのエサとして与えたのである。
同じ伝説がナゴドに存在することを、あなたはご存知だろうか。怪物の名は、オチアイオレ竜。そして、この怪物が閉じ込められている場所こそが、名球(ナゴヤドーム)ラビリンスなのだ。魔王オチアイオレ竜の所業は、トラキチの誰もが知るところ。心にトラウマを抱えた、内弁慶な虎猫を追い回し、喰らい、エサとしているのだった。いつしかナゴドが、タイガースの鬼門、艮(うしとら)となってしまったのだ。
12勝25敗
過去三年間のナゴドにおける、タイガースの戦績である。優勝できなかった一昨年は、なんと2勝12敗だった。ありえないことだ。ありえないからこそ、その年は優勝できなかった。逆に言うと、優勝するためには、ナゴドで大きく負け越さないことが必要なのだ。ナゴドに閉じ込められた、魔王オチアイオレ竜の魔性の呪いから、タイガースを救わねばならないのだ。そして今日、全知全能の神「ゼウス」により、タイガース救済のミッションを授けられた私は、生まれてはじめて、魔王オチアイオレ竜がいる魔性の巣窟、名球ラビリンスを訪れたのであった。
もう一度、ここに明言しておく。これは単なる娯楽や余暇の類の野球観戦ではない。もちろん、仕事ついでの余興でもない。誰がなんと言おうと、これはミッションなのだ。
ミッション!
ミッションなの!
重要なミッションだからこそ、慎重を期する必要がある。当然ながら、ドラゴンズ関係者に悟られてはいけない。そのためにも、私の体から放出されている“ガンマトラキチ線”をカムフラージュする必要がある。私の体を「タイガーカウンタ」で計測すると、常に約20万ピコタイガーの“ガンマトラキチ線”が放射されている。一般的なファンと比較すると、かなり強めの値である。ゆえにドラゴンズ関係者に知れると、ハードなマークを強いられるであろう。しかし対策は怠りない。私は「野村ノート」の書籍を持ち歩いた。こいつを持っているだけで“ガンマトラキチ線”の放出量が、確実に一桁は低下する。おお、なんと危険な書物であろうか。
文部科学省よ、発禁図書に指定しなさい。
人影もまばらなナゴド周辺から調査を開始したら、いきなり“気配”はやってきた。
屏風から追い出した虎を、捕まえようと身構える一休さんのごとく、私は身構えた。
そして、あたりを見回すと、すぐに“気配”の正体は発見できた。
「オチアイオレ竜」の描かれた不吉なタテ看板だった。これだけのものでも、私の放射する“ガンマトラキチ線”は、激しく乱された。魔力の強さがうかがい知れる。
しばらく球場周辺を調査した後、次に「大幸横丁」に潜入を試みた。まだ、時間が早かったこともあり、客人はまばらで、むしろ店員のほうが多いくらいであった。端のほうから店のひとつひとつをつぶさに観察した。回転すし、カツ定食、パスタ、串カツ、中華。そして私は、一番奥にある、うどん・そば処「彦兵衛」というお店で足を止めた。
なぜ、そのメニューに目が留まったのかは分からない。感じるものがあったのかもしれない。とにかく私は、その店に腰を下ろして、その、「土手味噌きしめん」(¥830円)を注文することにした。
ややしばらくして「土手味噌きしめん」が運ばれてきた。きしめんに八丁味噌で煮込んだモツ煮込みが乗っかっただけのものだった。が、しかし、これを食することで、大きな身体的変調を経験したのだった。食後、みるみる“ガンマトラキチ線”の放出が低下したのであった。今日のミッションのためには、むしろ好都合なのだが、確かにこの地には、トラキチをかき乱す“何か”を秘めていることを知る。
「恐るべし、土手味噌きしめん!」
おなかが膨れたところで、私はコーヒーをいただくことにした。「大幸横丁」の入り口に近いお店でコーヒーを注文した。そして、周囲には誰一人いない中、適当なテーブルに腰掛けて、コーヒーをすすっていると、またしても“気配”を感じるのだった。私はさりげなく、辺りを見回してみた。すると、左側の壁に近い場所に驚くべきものを目撃した。
怪童ヒトツブダネ竜だ!
あ、いや、これは・・・。取り乱した私は、すこし冷静さを失ったようである。気を落ち着けて目を凝らしてみたら、ドラゴンズのキャラクターの「シャオロン」ではないか。(「福嗣クン」と紛らわしいじゃねえか、ったく。遠目にゃ区別不能だわ、これ。)
「恐るべし、落合ジュニア・福嗣クン!」
やがて開門した。まだ試合開始まで2時間もあるが、早速、中に入ることにした。案の定、入り口では手荷物検査を行う振りして、「タイガーカウンター」を使った“ガンマトラキチ線”の検問が行われていた。でも、大丈夫。「野村ノート」と「土手味噌きしめん」のおかげで、難なく検問をすり抜けることに成功した。ありがとう、ノムさん。
私の席は三塁側スタンドの、最も外野席に近い席である。まだ、人影まばらとはいえ、“ガンマトラキチ線”を放射するタイガースファンが、三々五々席に就き始めていた。さりげなく、座席シートの調査に入る。トラキチで埋まる、レフトスタンドとレフトスタンドよりの三塁側シートには、“ガンマトラキチ線”を撹乱する装置が埋め込まれている可能性が高いはずだ。しかし丹念に調査を試みたが、残念ながら、証拠を得るに至らなかった。「“ガンマトラキチ線”撹乱装置究明委員会」の発足が急がれる。
いつしか試合が始まった。しかしミッションを抱えた私は、応援などしていられない。
が、しかし・・・。
下柳-中田の老若投手対決。下さん、プロの飯を伊達に16年も食っとらんところを見せてやってくれ!
1回表、よし行け!赤星!(三振。シーツ、金本も三振 orz)
1回裏、頼んだぞ!下さん!(あれれ・・・福留のタイムリーで、1-0 orz)
2回、3回、4回、5回と両投手、一歩も譲らない投手戦。
6回裏、下さん、この回までがノルマだ。がんばれ!(あれれ・・・安全牌のウッズのバットに交通事故で、3-0 orz)
7回表、無死一、二塁のチャンス到来。濱ちゃん、たのむで!(あれれ・・・結局、無得点 orz)
8回表、林と藤本で再び一死一、二塁のチャンス到来で、クリーンナップ。(あれれ・・・またまた、無得点 orz)
9回表、岩瀬登場で万事休す。おつかれさまー。orz
にいちゃん、おまはん投げいれたろかーー;
本日のミッションはここで中断せざるを得なかった。しかし、いずれこの魔物の正体が暴かれる日は近いであろう。そう確信した夜だった。
さあて、大阪までの道のりは長い。トホホ。
同じ伝説がナゴドに存在することを、あなたはご存知だろうか。怪物の名は、オチアイオレ竜。そして、この怪物が閉じ込められている場所こそが、名球(ナゴヤドーム)ラビリンスなのだ。魔王オチアイオレ竜の所業は、トラキチの誰もが知るところ。心にトラウマを抱えた、内弁慶な虎猫を追い回し、喰らい、エサとしているのだった。いつしかナゴドが、タイガースの鬼門、艮(うしとら)となってしまったのだ。
12勝25敗
過去三年間のナゴドにおける、タイガースの戦績である。優勝できなかった一昨年は、なんと2勝12敗だった。ありえないことだ。ありえないからこそ、その年は優勝できなかった。逆に言うと、優勝するためには、ナゴドで大きく負け越さないことが必要なのだ。ナゴドに閉じ込められた、魔王オチアイオレ竜の魔性の呪いから、タイガースを救わねばならないのだ。そして今日、全知全能の神「ゼウス」により、タイガース救済のミッションを授けられた私は、生まれてはじめて、魔王オチアイオレ竜がいる魔性の巣窟、名球ラビリンスを訪れたのであった。
もう一度、ここに明言しておく。これは単なる娯楽や余暇の類の野球観戦ではない。もちろん、仕事ついでの余興でもない。誰がなんと言おうと、これはミッションなのだ。
ミッションなの!
重要なミッションだからこそ、慎重を期する必要がある。当然ながら、ドラゴンズ関係者に悟られてはいけない。そのためにも、私の体から放出されている“ガンマトラキチ線”をカムフラージュする必要がある。私の体を「タイガーカウンタ」で計測すると、常に約20万ピコタイガーの“ガンマトラキチ線”が放射されている。一般的なファンと比較すると、かなり強めの値である。ゆえにドラゴンズ関係者に知れると、ハードなマークを強いられるであろう。しかし対策は怠りない。私は「野村ノート」の書籍を持ち歩いた。こいつを持っているだけで“ガンマトラキチ線”の放出量が、確実に一桁は低下する。おお、なんと危険な書物であろうか。
人影もまばらなナゴド周辺から調査を開始したら、いきなり“気配”はやってきた。
屏風から追い出した虎を、捕まえようと身構える一休さんのごとく、私は身構えた。
そして、あたりを見回すと、すぐに“気配”の正体は発見できた。
「オチアイオレ竜」の描かれた不吉なタテ看板だった。これだけのものでも、私の放射する“ガンマトラキチ線”は、激しく乱された。魔力の強さがうかがい知れる。
しばらく球場周辺を調査した後、次に「大幸横丁」に潜入を試みた。まだ、時間が早かったこともあり、客人はまばらで、むしろ店員のほうが多いくらいであった。端のほうから店のひとつひとつをつぶさに観察した。回転すし、カツ定食、パスタ、串カツ、中華。そして私は、一番奥にある、うどん・そば処「彦兵衛」というお店で足を止めた。
なぜ、そのメニューに目が留まったのかは分からない。感じるものがあったのかもしれない。とにかく私は、その店に腰を下ろして、その、「土手味噌きしめん」(¥830円)を注文することにした。
ややしばらくして「土手味噌きしめん」が運ばれてきた。きしめんに八丁味噌で煮込んだモツ煮込みが乗っかっただけのものだった。が、しかし、これを食することで、大きな身体的変調を経験したのだった。食後、みるみる“ガンマトラキチ線”の放出が低下したのであった。今日のミッションのためには、むしろ好都合なのだが、確かにこの地には、トラキチをかき乱す“何か”を秘めていることを知る。
おなかが膨れたところで、私はコーヒーをいただくことにした。「大幸横丁」の入り口に近いお店でコーヒーを注文した。そして、周囲には誰一人いない中、適当なテーブルに腰掛けて、コーヒーをすすっていると、またしても“気配”を感じるのだった。私はさりげなく、辺りを見回してみた。すると、左側の壁に近い場所に驚くべきものを目撃した。
怪童ヒトツブダネ竜だ!
あ、いや、これは・・・。取り乱した私は、すこし冷静さを失ったようである。気を落ち着けて目を凝らしてみたら、ドラゴンズのキャラクターの「シャオロン」ではないか。(「福嗣クン」と紛らわしいじゃねえか、ったく。遠目にゃ区別不能だわ、これ。)
やがて開門した。まだ試合開始まで2時間もあるが、早速、中に入ることにした。案の定、入り口では手荷物検査を行う振りして、「タイガーカウンター」を使った“ガンマトラキチ線”の検問が行われていた。でも、大丈夫。「野村ノート」と「土手味噌きしめん」のおかげで、難なく検問をすり抜けることに成功した。ありがとう、ノムさん。
私の席は三塁側スタンドの、最も外野席に近い席である。まだ、人影まばらとはいえ、“ガンマトラキチ線”を放射するタイガースファンが、三々五々席に就き始めていた。さりげなく、座席シートの調査に入る。トラキチで埋まる、レフトスタンドとレフトスタンドよりの三塁側シートには、“ガンマトラキチ線”を撹乱する装置が埋め込まれている可能性が高いはずだ。しかし丹念に調査を試みたが、残念ながら、証拠を得るに至らなかった。「“ガンマトラキチ線”撹乱装置究明委員会」の発足が急がれる。
いつしか試合が始まった。しかしミッションを抱えた私は、応援などしていられない。
が、しかし・・・。
下柳-中田の老若投手対決。下さん、プロの飯を伊達に16年も食っとらんところを見せてやってくれ!
1回表、よし行け!赤星!(三振。シーツ、金本も三振 orz)
1回裏、頼んだぞ!下さん!(あれれ・・・福留のタイムリーで、1-0 orz)
2回、3回、4回、5回と両投手、一歩も譲らない投手戦。
6回裏、下さん、この回までがノルマだ。がんばれ!(あれれ・・・安全牌のウッズのバットに交通事故で、3-0 orz)
7回表、無死一、二塁のチャンス到来。濱ちゃん、たのむで!(あれれ・・・結局、無得点 orz)
8回表、林と藤本で再び一死一、二塁のチャンス到来で、クリーンナップ。(あれれ・・・またまた、無得点 orz)
9回表、岩瀬登場で万事休す。おつかれさまー。orz
にいちゃん、おまはん投げいれたろかーー;
本日のミッションはここで中断せざるを得なかった。しかし、いずれこの魔物の正体が暴かれる日は近いであろう。そう確信した夜だった。
さあて、大阪までの道のりは長い。トホホ。