チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

ベルンに「里帰り」

2004年09月27日 06時02分20秒 | Weblog
スイスの首都がベルンであるということを知らない人が意外に少なくありません。チューリヒだとか、ジュネーヴだとか、はたまたベル「リ」ンだなどと言う人までいる始末。ベルンに住んでいた頃、日本から知人が送ってくれた手紙の宛先に、CH-3013 Bern, Germany と書かれていることが時々ありました。スイスが無名なのか、ベルンが無名なのかよくわかりませんが。

しかし我が家にとってはベルンは懐かしい故郷です。かつて留学で4年住み、その後も半年滞在したこの町は、地図がなくても歩けるし、どこに行けば何を売っているのかも知っている「地元」なのです。大学に行けば、建物のどこに図書館があり、神学部の図書をどうやって検索し、どうやって借り出すかもわかっています。今回、全てにおいてまだ慣れていないチューリヒに住んでいるだけに、ベルンのそういった良さが一層強く感じられます。

そのベルンに、一家で「里帰り」してきました。ベルンの郊外(と言ってもトラムで10数分)にある Bern Expo 会場で、おもちゃ博覧会 Suisse TOY が開かれていたので、その見物がてら出かけてきたわけです。ベルンまでは、チューリヒ中央駅から InterCity で1時間10分ほど。ベルン駅に列車が近づき、ベルン旧市街の中心である大聖堂が見えてくるともう懐かしさでいっぱいです。

ベルンの中央駅は、チューリヒと違って折り返し形式でなく、通過形式の駅で、味わいには少々欠けます。しかも、ベルン大学本館前の大きな広場の地下をくぐるような格好になっているので、プラットホームが薄暗くなっています。そんなわけで、駅自体はチューリヒの方が明るくて好きなのですが、それでもやはりベルンは地元。ホームに降りると、昔のことがいっきょに思い出されるような気持ちになりました。

博覧会の会場までは、中央駅からトラムで行けるのですが、わざと1停留所分だけ、中央駅からベーレン広場まで旧市街を歩くことにしました。街の匂いが思い出を刺激します。自分は、スイスが好きだというよりもベルンが好きなんだということに気づきました。今回のスイス滞在は、研究のための資料収集が主目的なので、それにはチューリヒの方が便利だし、子どもの学校のことを考えても、チューリヒにしたことは正解だと思っています。チューリヒにして良かったと思うことは他にももちろんあります。でも、やはり住み慣れたベルンの町に、少々無理してでも住めば良かったかな、という気持ちになってしまうような散歩でした。写真は、ベーレン広場とブンデス広場でやっている市(マルクト)です。正面奥に見えているのが連邦議事堂(ブンデスハウス)です。

ベルンとチューリヒを比べてみると、

*ベルンの方が町が小さい。トラムやバスで15分も行けばすぐに野原が広がっていて、牛や羊にお目にかかれる。チューリヒは郊外にも町がいくつもあり、そのような光景にお目にかかるまで時間がかかる。

*それに応じて、ベルンのトラム・バス網は簡単に覚えられる。だいたい、中央駅を通らない線というものがほとんどない。チューリヒではこれを把握するのにひと苦労。中央駅だって、停留所が3箇所に分かれているし、中央駅を通らないものも少なくない。

*主観的かつ体験的だが、ベルンの方が人の情が厚いように思う。道行く人と挨拶を交わすことも多い。買物や食事に出かけても、店の人が親切。チューリヒはどうもその点、冷たい感じがする。

*道行く人の服装は圧倒的にチューリヒの方がおしゃれ。ベルンの人の服装はどうも垢抜けない感じがするが、チューリヒでは、いい服やカバンを持っている人、しゃれた服装をしている人をよく見かける。

*ベルンの人はゆっくりしゃべる。ベルンという名称は「熊」(Baer)から来ているが、熊のごとくゆっくり話す、と半ばバカにしたようにチューリヒ人は言っている。確かにチューリヒ人の方が早口。にもかかわらず、チューリヒの方言の方が理解しやすい。独特の方言であるベルン・ドイツ語で話されると、ちんぷんかんぷんなことがほとんどだが、チューリヒ・ドイツ語(なんだろう、たぶん)は、細部はわからないまでも、何を言っているのかわかることがしばしばある。

とまぁ、結論としては、チューリヒは都会で、ベルンは田舎だということになります。ベルンは、連邦首都(Bundesstadtと呼ばれています)とは言っても、政治機能が集まっているというだけで、他には何もありません。大使館の類もベルンにありますが(日本大使館も、バスで10分ほど行った、郊外すれすれのところに立派なものが建っています)、国際政治といえばジュネーブだし、商業の中心はチューリヒということで、ベルンは「首都」(Hauptstadt)じゃなくて「首村」(Hauptdorf)だと言う冗談を何度も聞いたことがあるくらいです。かつての西ドイツの首都、ボンみたいなものでしょうか。

でも、だからこそこの町(村か?)に愛着を感じるのでしょう。店の1軒1軒、大聖堂の大きな塔、アーレ川の流れ、すべてが懐かしくて仕方ありませんでした。今度(いつのことか?)在外研究の機会があれば、必ずベルンにしよう、と思わずにいられない、胸に迫るような一日でした。

おもちゃ博のことはほとんど書きませんでしたが、子どもたちは大満足でした。良かったら、www.suissetoy.ch をご覧になってください。「遊戯王」(Yu-Gi-Oh!)がこちらでは大人気で、会場の中でもカードゲームに興じているスイス人の(結構大きい)子どもがたくさんいました。任天堂のゲームキューブ(ドンキーコンガのコーナーがあって、子どもたちが大きな画面を見ながらやっていました。あまりに下手なので笑えましたが)のようなものから、伝統的(?)なボードゲームの類、またレゴのコーナーもあり、丁寧に見ていたら一日はたっぷりかかる規模でした。電車模型のパビリオンには、子どもよりもおじさんが多く、こういう趣味に興じる男の人がスイスにも多いことがよくわかりました。船の大きなラジコンを実演するコーナーもあり、なぜか人だかりがしていました。娘は、フェイスペインティングのコーナーで、魔法の猫のペインティングをしてもらいました。無料の上に、ポラロイドで写真まで撮ってくれるサービスぶりでした。USJで同じことをしたら、安くないでしょうに。

おもちゃ博を見た帰りには、ベーレン広場に戻り、昔から知っている(けど行ったことは1度しかない)レストラン Le Mazot(『地球の歩き方』などにもよく載っているそうな)でラクレットとチーズフォンデュを食べ、スイスワインを楽しんでから、夜の電車でチューリヒに戻りました。Le Mazot は、大衆的な雰囲気で、地元の人も多いようですが、旅行客向けに英語メニューも置いており、ベルンで夕食を食べるなら勧めたい店の一つです。

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