チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

「冬」学期の始まり

2004年10月19日 05時51分36秒 | Weblog
研究休暇でチューリヒに来ているはずなのに、研究のことは何も書いていない。実は研究などしていないのではないか、という疑念を晴らすために、大学のことも少し書いておくことにします。

今週からようやく大学の授業期間が始まりました。つまり、日本風に言えば、先週までは「夏休み」だったのです。さすがに「夏休み」とは誰も言いませんが、学期間の休みが延々と続いていたわけです。

「休み」という言い方は、本当は正しくなくて、学期はすでに9月1日から始まっています。ただ、授業が始まるのが10月18日からなのです。今年の冬学期の授業期間は2月5日まで。学期は2月末までですが。学期中でありながら授業のない期間には、試験などが行われるようです。しかし、試験のない学生にとっては休みも同然です。

学部によって制度は少しずつ違うでしょうが、神学部(やその他の文系学部)の場合、日本と違って、各科目が学期末に試験を行うのではなく、一定の段階ごとにまとまって試験がなされるみたいです(「みたい」というのは、自分が経験したことがないので)。

こちらの大学では、いわゆる卒業資格が、日本の修士課程修了に相当するレベルですが(あくまで「課程」の話です。個々の学生のレベルではありません)、スイスでは(ドイツもそうらしいですが)、アメリカ式に学士・修士・博士の3段階にカリキュラムを改定する作業が進行中だそうです。すでにその仕組みをホームページで発表している大学もあります。教授と学生の「親方―徒弟」関係を基盤にして成立してきたドイツ語圏の大学の仕組みが大きく変わりつつあるようです。そのうち「博士課程」が出来て、アメリカのようにコースワークなどが課せられるようになるかもしれません。

さて、授業期間は今週から始まったわけですが、僕自身は客員研究員として来ているので、授業に参加する予定はほとんどありません。一つだけ、2週間ごとに開かれる、教授や助手、博士候補生などが参加する「研究セミナー」に顔を出すことにしていますが、これも、もちろん研究のためだけれど、他の教員と知り合いになって、色々話をすることに大きな意味がある(と、今回もお世話になっている、かつての指導教授が言っておられました)。2時間ほどの文献講読と意見交換が行われた後、皆でレストランに行って(おそらくワインでも飲みながら)話をするのだそうです。第1回は来週の木曜に開かれます。

こちらに来て2ヶ月が過ぎましたが、ようやく神学部図書館(写真)や中央図書館の使い方が少しずつ呑み込めてきました。一部の図書を除いて、たいていは自宅からインターネット経由で検索しておいてから図書館に行き、実物を手にしています。

中央図書館は、日本では見ることのできない古い文献も所蔵していて、今回の滞在の主な目的である資料収集には大変役立ちます。全面開架でないので、借り出しの手続きが多少面倒ではありますが。それと、館内のコピー機でコピーすると、1枚25ラッペン(20円くらい)するのには笑いました。今どきそんなコピー代があるなんて。やっぱりスイスです。神学部でコピーすれば日本と同じくらいで済みますが。

日本だと、大学の狭い研究室に研究書を詰め込んで、大学で主に仕事をするという教員が多いと思いますが(だって家が狭くて大量に本など置けない。僕もその一人です)、こちらの文系学者(分野にもよるでしょうが)は、自宅で仕事をしている人が多いようです。わが指導教授もそうで、ご自宅の広い書斎に本がまとめて置かれており、大学の研究室(あまり広くなく、僕の研究室よりひと回り大きいかな、という程度)には、それほど多くの本は置いてありません。大学教授のホームページを見ると、自宅の住所や電話番号を平気で載せている場合が珍しくないのですが、きっと家にいることが多いせいでしょう。しかし、プライバシーは大丈夫なのかと他人事ながら心配になります。

ということで、僕も真似をして(というより、大学に居場所がないから)、仕事は主に自宅でしています。決してインターネットで毎日遊んでいるわけではありません。

ところで:
こちらでは「夏学期」「冬学期」という言い方をします。関西学院大学では「春学期」「秋学期」と呼びますが(おそらく同じ言い方をしている大学は他にもあるでしょう)、「冬学期」と言われると、いかにも寒くて暗い時が始まったという感じがして、いい気持ちはしません。ウチの大学では「春学期」「秋学期」って呼ぶよ、とこちらの知り合いに言うと、その方がいい、という人が結構いるので面白く思いました。だいたい、4月初めに始まって、夏の前に終ってしまう学期を「夏学期」というのはおかしい、というわけです。なるほど。しかし、いつ始まっていつ終ったのかわからないスイスの秋ですから、「秋学期」と呼ぶのもどうかとは思います。やっぱり「冬学期」なんでしょう。これは。