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循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

東京多摩地域の焼却施設事情

2009年11月25日 | 廃棄物政策
いま、東京多摩地域で焼却炉建設の動きが進行している。遅くとも2020年をメドにほぼ横並びの状態だ。
 東京都は23の区部と多摩地域で構成されているが、前者はもともと1932年に成立した旧東京市(35区)である。
 一方の多摩地域は南多摩、北多摩、西多摩の3つの郡部で成り立っていたが、北多摩と南多摩は郡内町村の市制施行に伴って1970年から71年に相次いで消滅し、現在郡部として残るのは西多摩郡(日の出町、瑞穂町、奥多摩町、檜原村)だけとなった。
 したがって現在の多摩地域には26の市と、3町1村の西多摩郡が存在し、総面積で約1,170平方キロメートル、総人口は昨年5月現在で約413万人である。なお現時点で多摩地域での焼却施設は18ヶ所である。
 
◆市民の感度が変った
多摩地域の焼却炉建設がダイオキシン特需の時期からほぼ7、8年遅れた理由は、八王子市(推計人口575,578人)を除く各都市の建設年次が1980年代に集中しているためである。ダイオキシン特需の背景となった「ごみ処理広域化計画」通達が1997年5月なので、その時点での建て替えは時期尚早だったといえよう。
しかも建設計画が遅れている間に焼却をめぐる状況はかなり変化していた。まずダイオキシン特需に乗って全国で動き出した大型施設の事故・トラブルが相次ぎ、市民の間に脱焼却の機運が出始めたこと、第二に「もはや右肩上がりで人口やごみが増える時代じゃない」という意識が次第に定着しつつあることで、10数年に及ぶ日の出処分場反対運動が市民の感度を変えたことも大きいといえよう。

◆着々と進む計画
 現時点で建て替え事業が先行しているのが、ふじみ衛生組合(管理者・清原慶子三鷹市長)と西秋川衛生組合(管理者・臼井孝あきる野市長)だ。
 三鷹市と調布市で構成するふじみ衛生組合は、9月にPFIによる整備運営事業者を特定し、2013年度の稼働を見込んでいる。規模は140トン2基。
 あきる野市、日の出町、檜原村で構成する西秋川衛生組合は、PFIアドバイザリー業務をパシフィックコンサルタンツに委託し、2010年度に事業者の選定、14年度の稼働開始を予定している。
武蔵野市(約13万人)は現有施設(1984年竣工・195トン)を2018年まで稼動させたあと、単独施設の建設に入る予定だが、規模も120トンに縮小する予定だ。ただし建設場所は必ずしも確定していない。

◆立川市のトラブル
 問題を抱え込んでいるのが立川市(約17万5,000人)である。同市の清掃工場(1979年竣工)は小平市との境に位置しており、地元との約束で昨年暮れまでに移転させることになっていたが果たせなかった。そのため日野市(1987年現工場を竣工))に共同建設を持ちかけたが日野市は単独の新施設を2019年を目途に整備する方針で、いまのところ立川市の誘いに乗る気配はない。そのため立川市は緊急の対応として、①可燃ごみを今後5年間で50%減らす、②収集の有料化、などを打ち出しており、同時に「燃やさない焼却炉」として売り込みに懸命なベンチャー企業EENの装置(炭素化装置)の導入を検討しているという。
 だが立川市はもうひとつの悩みを抱えていた。今年3月、最も新しい3号炉内の空冷壁が229枚中、99枚が脱落するという事故を起こしたのである。しかも8月中旬には制御システムが作動せず、約1時間、黒煙が煙突から噴きあがるというトラブルが起きている。
(立川市の事故については稿をあらためて紹介したい)。
だが何といっても深刻なのは小金井市(約11万人)だった。

◆果たして決着はつくのか
 2009年04月18日のブログ、「小金井市の焼却施設と新庁舎問題」で触れたところだが、11月9日、事態が大きく動いた。小金井、調布、府中の3市にまたがる「二枚橋ごみ処理場跡地」(約1万1,100平方メートル)について、来年3月末の組合(二枚橋衛生組合)解散後、3市に同一面積でわける分割案が組合清算特別委員会から提示されたのである(図)。分割案は本来の市域とは少しずれており、北側を小金井市に、南東部を調布市に、残ったL字形の土地を府中市に割り当てる。
小金井市に住む友人がいみじくも「間借り生活だよ」と自嘲したとおり、二枚橋という施設を失った同市は2007年4月から可燃ごみ焼却を周辺各市や組合に全面委託しつづけてきた。翌08年6月、市民検討委員会は「新焼却工場の建設候補地に二枚橋跡地」を答申し、同年10月、小金井市が跡地の買取り案を表明している。
 これに対し調布市は絶対反対の姿勢を崩さないが、府中市の野口忠直市長は分割した後、小金井市への売却も選択肢の一つとしており、小金井、府中2市分の土地に、小金井の新処理場を建設する案が浮上する可能性も出てきた。
 小金井市は今年1月、府中、調布の両市長にあて、稲葉孝彦市長名で、新処理場建設に向け、両市の割り当て分を買い取り、跡地全体を使いたい意向を示しているが、長友貴樹・調布市長は、メディアの取材に「調布市内の市域に、ごみ処理場を建てさせないという従来の主張に変わりはない」との考えを改めて強調したという。
 小金井市としては「今年3月まで」という焼却委託をまた1年延ばしたわけだが、来年3月まで実質4ヶ月しかない。その時、また延ばしてくれ、となったら、それこそ「仏の顔も3度までだよ」と友人は苦笑した。
それ以外の自治体や組合の建設計画について各紙から拾っておこう。

◆各市の動き
<日野市>
 19年度を目標に単独でクリーンセンター内に新工場を建設する計画。ただ、現在の計画を2012年度をめどに見直す予定のため、この間に立川市が共同建設に向け調整できるかが注目される。
<八王子と東村山市/20年度稼働目指す>
 小平・村山・大和衛生組合(管理者・小林正則小平市長)と、八王子、東村山、町田の3市は今後、建て替えに向けた検討を本格化させる見通しである。
<小平・村山・大和衛生組合>
 小平、武蔵村山、東大和の3市で構成。現時点では具体的な検討に着手していないものの、2021年度の稼働を目安に建て替えに向けた検討を進める見込みだ。
 一部事務組合による共同処理も含め4つの清掃工場を保有する八王子市は、3施設に統合した上で、老朽化した館清掃工場を解体し、跡地に新施設を建設する方針である。
 東村山市も現在の清掃工場が立地している秋水園(秋津町4-17-1)内での建て替えを想定し、両市はともに、2020年度の稼働開始を見込む。
 町田市は、リサイクル文化センター(下小山田町3160)内の清掃工場が築25年以上を経過したため、早急に建て替えの検討を本格化させる。2011年度秋以降に施設計画作成に向けた検討に着手する予定だ。


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