循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

セイダカアワダチ草

2012年11月01日 | その他
ある男がただの大口叩きなら黙って放っておくしかない。だがその男が巨大な政治権力を掌握する立場の人間だったら話は別だ。しつこいようだが石原慎太郎前都知事のことである。
 その彼が数日前の記者会見で吠えた。「ああ、80歳だよ。何で俺なんかにいつまでもやらせておくんだ。若いもんがもっとしっかりしろよ」。かなり嫌味な空威張りである。
 だが演壇に登る彼の姿は背中を丸めたタダの老爺だった。80歳といえば「お迎え適齢期」。いわば13階段の1段目に足を掛けたところである。だから年中怒っている。人間、あんまり怒ってばかりいると脳の働きが止まって、行く先は確実に老人性ボケである。

◆黙れ!の石原
 その石原慎太郎に天賦の才があるとすれば「俺よりほかはみんなバカ」といい切れる才能だ。日本のマスコミはそんな男に多くの紙面と画面(テレビ)を提供し、お追従合戦に余念がない。むろん石原がやった数々の“悪事”にも多少は触れてはいるが、それも「実力者ゆえのフライング」という扱いだ。それだけ彼の発信力が抜群だともいえる。
 たしかにこの10数年、石原都政の“成果”がなかったわけではない。たとえば就任早々黒い粉が入ったペットボトルを何度も振りかざし、「この空気を都民は毎日吸っているんだ」と絶叫し、デイーゼル規制を断行した。だがその一方、日の出第二処分場の強制土地収用を問答無用で強行している。
 あとは東京都庁~皇居前~日比谷~銀座~日本橋~浅草雷門~築地~豊洲~東京ビッグサイトと、派手な観光地を網羅した東京マラソンコースを設定したこと。
 最近では被災地からの「がれき受入れ」でマスコミを喜ばす。その勢いに乗って各地の反対運動に対し「そんな連中には黙れ!といえばいい」と、余計な嘴を入れた。
 だが石原が「黙れ!」のひと言で済ませられたのは東京湾上にスーパーエコタウンという巨大廃棄物処理施設があり、480ヘクタールという途方もない面積の最終処分場があったからである。
 だが多年にわたる石原の悪業はそれら成果?をはるかに上回っていた。

◆原発事故はちっぽけな問題
 まず3・11直後の無視できない暴言。「日本のアイデンティティは我欲。この津波を利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。(大地震は)やっぱり天罰だ」(東日本大震災から3日後の記者会見で)。
 ジャーナリストの斎藤貴男氏がいう「(石原は)人間の尊厳と生命をバカにしすぎている」。その体質はいまに始まったことではない。1977年の環境庁長官時代、「水俣病患者は補償金目当てのニセ患者」と発言し、土下座して患者に謝っている。この傲慢男のプライドはズタズタになったまま今日まで尾を引いている。そして都知事在任中、1,400億円の巨費を投じた新銀行東京を挫折させ、4,000億円も注ぎ込んだ豊洲の土壌からはいまなお有害物質が掘りだされている。2006年のオリンピック誘致で100億円もの浪費をやったという。
 これら一連の所業に石原はまったく責任をとっていない。「そもそもこの男がブチ上げた政策が都民のためになったためしはない」と日刊ゲンダイも痛烈に指摘している(2012/10/30)。
 しかも先週の記者会見ではよくぞホザいた。「いま最も大切なのは官僚支配で硬直化した日本を変えること。それに比べれば原発や消費税などささいな問題」。下劣な日本語でアメリカから押し付けられた憲法を破棄しろ、ともいった。

◆「尖閣炎上」の責任をとれ
 だが「俺なら何をいっても許される」という石原慎太郎の驕りもそろそろ限界に来たようだ。すでに橋下徹も「立ち上がれ日本の方々とは一線を画したい」と及び腰である。「その歳で、マジにホンマに立ち上がる?」TBSラジオが選んだリスナーからの川柳である。「もう兄貴、よせよと空から裕次郎」との傑作もあった。
 90年代に石原は「国政を変えるために東京都を変える」といって国会議員を辞めた。今度は「東京都を変えるために国を変える」といって都知事を辞任する。「義経の八艘飛び」もかくやである。それなら新銀行の焦げ付きをどうするのか。豊洲にもまったくメドをつけずにあとは野となれ山となれ、を決め込むつもりなのか。
 そんな中でNHKニュース(10月31日夜)は「銀行設立や尖閣の購入など、自治体の枠を超えた大胆な施策を展開」などとトンチンカンなコメントを読みあげているのだから世話はない。 
 今回の国政進出は先の自民党総裁選で自分のバカ息子が「落選」したための尻拭いだ。これぞ我欲の最たるものだろう。すべての難題を押し付けられた猪瀬直樹副知事もいい面の皮だ。猪瀬は所詮石原あっての猪瀬なのである。これら一連の騒ぎに亀井静香も石原慎太郎を一喝した。
だが石原にはもっと大きな罪科がある。前述の尖閣買収だ。もともとこの問題は当分棚上げにしておこうと日中間で合意していた事項である。にも関わらず愛国者・石原がアメリカまで行って火をつけ、口だけ達者なペテン師・野田が前後を考えず国有化を宣言した。これに荒れ狂った中国民衆(特に貧困層)が各地で暴動を起こす。
 トバッチリを受けたのは中国に進出中の企業群である。パナソニック、トヨタ、上海ユニクロ、マツダ、ソニー、ジャスコ、平和堂等など。石原がこの現実に知らん顔をすることは許されない。そんなに新党をつくりたいならこれら企業が被った多額の損害を賠償してからだろう。しかし石原慎太郎都知事殿が13年7ヵ月の間に得た金はほぼ4億円。1年8カ月しかいなかった都政4期目の退職金は約1,700万円という。東京都が支払った石原への全費用を時給に換算すると約13万円と日刊ゲンダイはご苦労にも試算している。そして昨日(2012年10月31日)、自らリクェストしたマイウエイのメロディに乗って石原は颯爽と都庁を後にした。

◆セイダカアワダチ草の教訓
 宇井純氏に次いで万年助手(工学部)のまま90年代半ば東大を退任した依田彦三郎という人がいる。自分の研究室にデカい冷蔵庫を置き、いつもビールがギンギンに冷えていた。訪問者が来たら冷蔵庫を開けて歓待する。その依田氏と処分場めぐりをしていたころ、こんな話を氏から聞いた。「セイダカアワダチ草ってのは自分の内側に凄い毒をもっていて、まわりの草を片端から枯らしてしまう。でもすべて枯らし終わったら自分の毒で自分自身を枯らしてしまうんだ」。   
当時はまだ悪質な産廃業者が全国にはびこっており、セイダカアワダチ草の話は卓抜な隠喩として十分なリアリティを持っていた。それはそっくりいまの政治状況に当てはまるのだが、といって我々が何もせず傍観していて済むわけではない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。