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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

田老「第一防潮堤」の今(9=つづき)

2013年09月18日 | どうなる田老

前ページより続く)

 

d、パラペットはそこにただ置いただけ パラペットと防潮堤本体躯体の結合がないという事は最大のピンチである。本体への最初のメスに続いて、防潮堤の(将来の)破壊が始まっているといえる。



図6 パラペット

パラペット自体の長さは概ね10メートル。そのスパンで1,070メートル並ぶという。30センチピッチで鉄筋が入る。三肢の厚さは基本50センチであるが、高さならびに基本角度(90°)以外の角度は防潮堤躯体本体の高さ、勾配に合わせて変わる。


図7

防潮堤本体のゆがみやばらつきに合わせたパラペットの製作、また、同様に微妙な本体への据え付け作業は難工事である事は想像できる。しかし、躯体本体との接合・合体・融合の技術はありやなしや? とうてい想像する事ができない。図7の横断断面図で鉄筋(赤色)は30センチピッチで編み込まれており、もちろん縦断的にも必要量の鉄筋が通されて横の鉄筋と結束されている。そのようにパラペット自体は大丈夫だとはいえ、既存コンクリートには、図7のように30センチピッチでそれぞれ20センチはめ込んだだけだという。 据え付けとは言葉だけで、まさに「ただ置いただけ」なのである。

注意) ここに来てはてな? と思った。図6のパラペットは宙吊りに書き、別の場所での製作を暗示しているが、それは防波テトラポットからの自分なりの推測でそう思ったからにすぎない。そうではなく、現場で型枠を組み、鉄筋を編み、コンクリートを流し込んで完成させるものかもしれないナ、と思ってみたのである。どっちかと言えば後者の方が合理性に勝るような気がする、と…。

他所(よそ)製作、現地製作、いずれにしても一体性の崩れた脆弱な補修工事の実態は変わらない。既存躯体と新たに取り付けたパラペットの接触面は一体的に融合する事は不可能で、気象条件で遊離し、年月で空洞ができる(8図の空色の接触面の全面)。


8図

「ただ置いたでけ」の接面の状態は、今次津波の直後から言われ続けている「田老の防潮堤には、コンクリートに鉄筋は入っておらず、ブロックとブロックには噛み合わせもなくただ重ねただけであった」というその通りではないかっ! 教訓はどうなっているのであろうか?… ちなみにパラペットには十分な鉄筋は入っているが、それはパラペット自体の強化のためのものであり防潮堤の強さには少しも貢献していない。図を見ればだれでも分かる事だ。


e、正面の力に弱いパラペット工法 
「ただ置いただけ」のパラペット工法は気象条件や年月で崩壊するが、特に大小の地震に弱く、頻発する地震に揺さぶられ共鳴して防潮堤の崩壊に加速がつく。そのようにあらゆる接面がゆるんでしまった防潮堤が大津波に襲われたら、パラペットは簡単に転び、防潮堤の頂点から転落する。同時に一体性を失った躯体そのものが波に洗われて時間を待たずに全面崩落する事は明らかだ。東日本大震災で崩壊した沿岸各地の堤防、防潮堤の崩壊の再現プロセスを見るようだ。

また田老「第一防潮堤」の対極にあった田老「第二防潮堤」の無惨な崩落のプロセスがそのようなものではなかったかと思う。たった50年で全面崩壊した。


   


 図9 劣化は接触面から始まる

パラペットと本体コンクリートとの不安定な接触面は気象条件、自然条件、経年劣化、大小の地震にさらされる。図8はその事を大げさに表現しているが、津波はこの隙間を襲ってくる。劣化し、弛み、錆び、剥離すれば防潮堤の崩壊は始まっており、すでに津波に対する防災効果は失われている。1)コンクリートのせいなのか? 2)修復(工事)のせいなのか? 3)沿岸立地のせいなのか? 常にこの事が念頭になければならない。


図10 正面の力に弱いパラペット工法

パラペット工法とパラペット自体の構造から、この工法では正面から押し寄せる津波に弱く、もろい。それは引き潮の場合でも同じである。津波の力が加わると劣化に加えて支えもなく即刻転倒する造りなのである。

パラペットの転倒が引き金になって、天頂だけでなく、本体躯体まで、瞬時に、全的に、防潮堤が崩落する事は説明するまでもない。




(2)世界的災害遺構が消えた。(10)につづく


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