富山県は、組織としては政策官庁である。このところ、思い切りバイオ製薬の技術の可能性に力が入ったには、誠に喜ばしい。見るに見かねて、県立大に製薬工学の学部・学科の新設を提案したものとして楽しみである。薬のクの字も知らないから、僕の役は開演の合図で終わった。
さて、県の製造業を航空機産業に導くことの非を唱えてきた。それは、三菱重工に信を置きすぎるな、という意味である。同時期に、医工学の産業の可能性を論文にしていた。これが、富山大学の中村真人教授の目に留まり、富大で活字化された。その後の医工学の製造業における進展は、すばらしい。オムロンで活躍された飛田さんを朝日建設の林和夫社長のご紹介と尽力により、富山でゴールドラットの経営理論を学んだ。
新薬の開発は不可欠で、今後は、バイオ製薬にあるという見解はそうである。ただ、富山の製造業の伝統は、バイオではない。電気系統にすぐれた産業連関を持っている。それが、水力発電の伝統である。実は、富山には、小さな自動車メーカーがある。ただ、余りにも小規模すぎる。
ここで、富山の製造業の全体努力で、電気自動車に関し、産業集積と技術連関を精力的に企画する段階に来ている。バッテリーの技術は、日本のトップ水準にあるファクトリーが高岡にある。車体の軽量化では、炭素繊維を使うのは、石川県の技術なので、富山では車台の軽量化のもう一つの道筋であるアルミ合金の技術である。回転軸は、炭素繊維ではむり。ここに一つの新素材の課題がある。第二は、ガラスにからむ課題である。ガラスを活かすか、アクリルを利用するのが。
ともかく、富山にないのは、タイヤ工場である。しかし、リサイクル産業をさらに高度化すれば、中古タイヤの解体・粉砕から、電気自動車用のタイヤ開発は可能である。つまり、ガソリン車から電気自動車への転換を徹底的に利用することである。これも、富山県立大学の力量で十分に舞台に載せられる。
ところで、大事なのは、電気自動車に有利な法制の整備である。これは、富山大学の経営法学科による基礎研究が望ましい。ものづくりより困難なのは、規制緩和と法制の改善である。車検制度や、免許制度、公道の利用制限の緩和など、「法制改革」が前提となる。県庁は、ここを指導して欲しい。急がないと、中国の自動車市場は、急速に変化する。藤堂工業、田中精密には、転形期を乗り越える指導がいる。明日がないと信じたら、打開できる。