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笹子トンネル崩落事故は設計不備?

2012-12-04 08:40:36 | 雑感
 12月2日に中央高速道路の笹子トンネル天井が崩壊し多くの犠牲者が出たニュースは衝撃的でした。私もこのトンネルは何度も利用していましたので、とても他人事とは思えません。「長いトンネルだなあ」とは感じても、「もし途中で地震でも起きたらどうなるんだろう」とふと思っても、当たり前のようにトンネルを通過していました。
 さて、この事故の原因や再発防止は道路会社や学者達に任せるとしても、報道番組を見ていて彼らの感性に疑問が生じました。私は土木技術者ではありませんが、長く機械設計を経験した立場から見ると、このトンネルの構造からして、不可思議な点があります。
構造上、左右対になっているコンクリート板を中央の吊り棒で支えています。吊り金具の強度は十分過ぎるほどあるはずです。でもそれを固定しているアンカボルト部が抜けたか、天井のコンクリート塊ごと崩れ落ちたかが主因の様だとのことです。また、走行方向に並べた板は、隙間が出来ないようにオーバーラップさせていたとのことです。これにより、130mに渡り連鎖反応の如く計330枚もの板が崩落しました。安全点検も板面からトンネル最上部までの高さが5mもあって目視検査しか出来なかったとの事です。
 疑問は次の4点です。
①吊り具を固定しているアンカボルト部分の経時劣化が言われますが、設計時この吊り金具が外れる事を想定した設計をしなかったかと言うことです。強度的に十分と言っても、普通の設計者は、これが外れた場合も想定し、補助的な吊り具なり他の方法でも板が崩落しえない様な構造に設計するのが基本です。2重3重の安全対策を何故しなかったのか?が問題です。多分費用面からの制約が大きかったのでしょうが、設計者としてはそれを言い訳にしては絶対にいけません。
 また、恵那山トンネルの様に、板が左右の対ではなく、一枚板なら(吊り具が外れても)簡単に崩落することも無かったかもしれません。吊り棒が全壊しても、対の板がお互い踏ん張って、(多少落ちこんでも)崩落できない形状にすべきだったでしょう。
②130mに渡り連鎖的に崩落しましたが、これも設計上考え方がおかしいと思います。
仮に1箇所の吊り具が外れて崩壊現象が発生したとしても、その衝撃力が隣の板に数倍かかったとしても、それに耐えうる安全率を設定しておくことが必要です。安全率が10なのか20なのかは分かりませんが、少なくとも2~3では無いはずです。安全率を無視した設計だったと言わざるをえません。
③天井の高さが高すぎて、直接の打音点検が出来なかったとの事ですが、そもそも点検も出来ないような構造にしておくこと自体が設計者の怠慢です。点検が出来る様に屋根裏部屋を2階構造にするなり、専用の動く踏み台を準備するなり、高くても確実に点検できるシステムを準備するなりの設計が必須なはずです。高すぎて点検できなかったというのは詭弁以外の何者でもありません。
④大地震が起きたとき、耐えられますか?
今回以上のトンネル内惨劇が考えられます。当然ながらトンネルは山の多い地域に作られます。地震による山崩れなども想定され、トンネル内はその非難場所としてシェルターの役割も有用であり、絶対安全な場所であって欲しいものです。

 以上私の考えですが、トンネル設計者も設計時は同じ様に万一の事態を想定していたと思います。(想定していなかったら、その方は設計の初心者です!)でも、予算が限られたりしていて、経営側からの圧力などなどで、心ならずも今の構造にせざるを得なかったのだと信じたい。でもそれは設計者の恥です。頑としてでも安全を優先できなかった設計者の怠慢です![設計ミス]とまでは言いませんが、私は少なくとも「設計不備」だったと思います。報道番組に出てくる学者達は設計本質について全く突っ込みをしていません。あたかもNEXCOに遠慮している様にさえ見えます。
 皆さんは、このトンネル構造についてどうお考えでしょうか?


8 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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同感です (建築士)
2012-12-04 10:34:24
建築士を約40年やっている者です。報道では(経年劣化)を主原因に述べていますが、設計者として反省すべき点はあると思われます。①まずケミカルアンカーを上向き且つ引き抜き力が掛かる所に使用する適否です。②あなたが言われる様に例え抜けても一瞬に落下しないように中央部の吊り下げる部分を少し上げて天井版を山形になるようにすれば、左右の天井版同士がアーチのように圧縮力で支えられる様にするとかの工夫(安全寄与策)ができなかったのか。などです。今でも同様の施工方法を採用されているのであれば、設計者のコメントを聞きたいものです。
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基本的な設計上の問題が含まれています (TF(建築士です))
2012-12-04 18:45:51
このトンネルは換気のために天井プレナムチャンバー方式が採用されていますが、その天井材をコンクリートのような重量材料で設計していること自体が基本的な誤りであると考えます。天井板として数10mmAq程度と思われる空気圧を支えるのには鋼板を使うのが常識でしょう。人が乗った乗り物が走行するトンネルの上部にコンクリートのような重量材料を採用するとは非常識そのものと考えます(トンネル土木の設計者のコンクリート信奉主義も感じられます)。
さらにこのような重量材料を支持するのに側壁での支持と中央の1点のみで吊り支持と言うのはあまりにもお粗末である。建築であればこのようなコンクリート板を支持する場合は両側の側壁から梁を渡すのが常識であり、さらに梁を途中で吊り支持するにあたっては中央1か所ではなく2~3か所吊りとするはずです。
さらにこの重要な吊り支持材を固定しているアンカーが固定箇所あたりたった2本しかないようであり、1か所が腐食などで無力になるとこの釣り鋼材は偏芯状態での1点支持になってしまいます。
今回の事故ではコンクリート板が100m以上にわたって落下したと言うことですので、中央部長手方向の隔壁を吊り支持しているアンカー部分の安全率が非常に少なかったことが想定されます。アンカーの本数や安全率が高ければどこかのアンカーボルトの腐食などによりコンクリート板が落下したとしても数mの局所的な落下で済んだはずです。
繰り返しますが、この事故は単なるメンテナンス不良だけではなく設計上の問題も含んだ複合要因により発生したと考えるべきでしょう。
事故調査委員会が発足したとのことですが、土木系の中心の学者や技術者で構成されたこの委員会でこのような基本的な設計思想そのものの観点から判断がなされる事が期待できるでしょうか?
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その通り (SomeOne)
2012-12-04 21:35:01
その通り と 感じます。 テレビ局の呼ぶ専門家は?。
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握手 (なかしまはん)
2012-12-05 21:32:02
同感ですねー 同じ事を思っている方がいることにうれしく思います。福知山線の脱線転覆事故もまるで戦前の兵器の様に性能だけの追求でまるで人命を羽根のごとく軽いのが日本なのでしょうか・・・悲しくなりますねー
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私も同感です (MI(建築士です))
2012-12-06 00:59:15
ゼネコンで25年建築に携わっているものです。報道やインターネットのコメントに違和感を覚え、建築技術者は今回の事故を実際にどのように考えているのだろうと思いながら、このサイトを拝見しました。私もまさに同じことを考えていました。笹子トンネルの発注者と設計者はともに既に解散した日本道路公団です。開通して35年となると設計は40年近く前になると思われますので、当時の設計担当者の責任を追求するのは、いささか難しいと思います。しかし、現在の国交省や土木技術者には、経年劣化やメンテナンスだけを問題にするのでなく、設計思想そのものを評価してもらいたいものですが、49か所も同様の構造があるとのことなので、期待できないかもしれません。事故調査委員会に、機械設計技術者や建築技術者も入ってもらいたいものです。
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同感ですが? (kaesaru)
2012-12-12 11:48:59
同感しますが、土木屋が全て”悪”のような意見はよしませんか?これは当時の”日本道路公団と空調会社”の問題が大きいのであって、全ての土木屋が同じ考えではないですよ。
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Unknown (Wです1級建築士です)
2012-12-15 09:01:14
多くの方は専門家ではないと思いますので専門的な話はしませんが誰でも思うことは「自宅を建てて30年したらつぶれた。」そんなことがあったらどう思いますか。「持ち主が日常の点検を行っていなかったから悪いのだ」と言われて「はい、そうですね。」という方が世の中にいますでしょうか。根本的な設計に対するミスとしか言い様がありませんね。
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疑問 (素人)
2013-01-01 04:48:11
素人の発想なのですがトンネルの真上はコンクリート強度はあまりないのでは?コンクリートうちの最後になるからバイブレターかけにくい。
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