急成長するアジアの光と陰 ・・・国連ハビタット(福岡)設立から10年・・・
昨年3月まで新しい国土計画(国土形成計画)の策定に携わっていた。いくつかの太い柱を考えていたが、中でもアジアとの共生は重要な課題であった。国内的には人口減少・高齢化、国際競争力の低下など先行きの不透明感があるが、アジアに軸足を移し、成長するアジアと共に生きる道を選択すれば、明るい未来が見えてくるのではないかと考えた。本年4月の国土審議会計画部会報告でも、東アジアとの交流連携、シームレスアジアの形成などアジアとの共生に向けた柱が残っている。
昨年9月に現職に着いて、アジアに出張することが多く、国土計画策定時に想定していたよりも、アジアが急成長していることを実感している。1997年の金融危機の後、アジアの成長もここまでかと危惧する向きもあったが、その後も力強い回復、成長を続けている。中国、インドの台頭もあって、過熱気味ではないかと思うほどの状況である。しかし、国内的には不均衡な発展が続いており、都市と農村の地域的な水平格差、都市内の富裕層と貧困層の垂直格差が同時に拡大しており、一つの国に二つの経済があるように見える。
特に、富裕層に加えて確実に新中間層が成長しており、この二つのグループが日米欧の諸都市と十分に競争できるような「光」の経済を形成しているようである。最近、クリエイティブで多様性のある都市が持続的に成長すると言われている。都市学者リチャード・フロリダは、寛容性、技術、人財をその評価軸とし、特に、科学者、技術者、起業家、芸術家などを「クリエイティブクラス」と呼んでいる。アジアはまだそんなレベルには来ていないといった議論を聞くが、上述した富裕層と新中間層が作りだした経済は、アジアの多様性を十分に残しながらフロリダが指摘する要素を貯えたクリエイティブな都市を形成しているのではないか。インドや中国におけるクリエイティブクラスの数は膨大であろう。さらに、この経済は貧困層を低賃金労働者として雇用するため、先進国と比較して有利であり、相当に強い国際競争力を持っていると言わざるを得ない。
一方、特に過去30年間におこった急速な経済成長は所得格差を広げており、今後25年間にアジア地域で約10億人の人口増加があることを考えると、もう一つの貧困の経済、「陰」の経済が見えてくる。スラム地区が急速に拡大するのは確実であり、貧困対策に対する要請が極めて高まるものと予測される。
このような状況の中、8月1日に私共のアジア太平洋事務所は設立10周年を迎える。1997年の設立当初の予算規模は30億円程度であったが、現在の総事業費は130億円を越え、現地事務所には約2000人の職員を抱えるようになった。アジア太平洋地域における貧困対策や住宅、生活インフラなどの需要が確実に増加している現われだと思う。
一方、この間、当事務所は地元福岡への貢献や連携を進め、国際会議の開催や講演会を頻繁に行ってきた。今後はさらにその連携を発展させるため、地元の技術、ノウハウによる国際協力を進めるほか、具体的な開発プロジェクトへ地元企業にも参加してもらいたい。現在、アジア都市連携センター構想を進めているが、地元からアジアへの総合的な情報発信と地元企業の技術の活用に貢献できるものと考えている。
8月1日にはアジア都市ジャーナリスト会議も開催する予定だ。アジアに近い北部九州から何も東京を経由してアジアに情報発信する必要はなかろう。地元から直接アジアに情報発信できるチャネルが出来上がれば、さらにアジアに開かれた地域づくりが進むものと期待したい。
昨年3月まで新しい国土計画(国土形成計画)の策定に携わっていた。いくつかの太い柱を考えていたが、中でもアジアとの共生は重要な課題であった。国内的には人口減少・高齢化、国際競争力の低下など先行きの不透明感があるが、アジアに軸足を移し、成長するアジアと共に生きる道を選択すれば、明るい未来が見えてくるのではないかと考えた。本年4月の国土審議会計画部会報告でも、東アジアとの交流連携、シームレスアジアの形成などアジアとの共生に向けた柱が残っている。
昨年9月に現職に着いて、アジアに出張することが多く、国土計画策定時に想定していたよりも、アジアが急成長していることを実感している。1997年の金融危機の後、アジアの成長もここまでかと危惧する向きもあったが、その後も力強い回復、成長を続けている。中国、インドの台頭もあって、過熱気味ではないかと思うほどの状況である。しかし、国内的には不均衡な発展が続いており、都市と農村の地域的な水平格差、都市内の富裕層と貧困層の垂直格差が同時に拡大しており、一つの国に二つの経済があるように見える。
特に、富裕層に加えて確実に新中間層が成長しており、この二つのグループが日米欧の諸都市と十分に競争できるような「光」の経済を形成しているようである。最近、クリエイティブで多様性のある都市が持続的に成長すると言われている。都市学者リチャード・フロリダは、寛容性、技術、人財をその評価軸とし、特に、科学者、技術者、起業家、芸術家などを「クリエイティブクラス」と呼んでいる。アジアはまだそんなレベルには来ていないといった議論を聞くが、上述した富裕層と新中間層が作りだした経済は、アジアの多様性を十分に残しながらフロリダが指摘する要素を貯えたクリエイティブな都市を形成しているのではないか。インドや中国におけるクリエイティブクラスの数は膨大であろう。さらに、この経済は貧困層を低賃金労働者として雇用するため、先進国と比較して有利であり、相当に強い国際競争力を持っていると言わざるを得ない。
一方、特に過去30年間におこった急速な経済成長は所得格差を広げており、今後25年間にアジア地域で約10億人の人口増加があることを考えると、もう一つの貧困の経済、「陰」の経済が見えてくる。スラム地区が急速に拡大するのは確実であり、貧困対策に対する要請が極めて高まるものと予測される。
このような状況の中、8月1日に私共のアジア太平洋事務所は設立10周年を迎える。1997年の設立当初の予算規模は30億円程度であったが、現在の総事業費は130億円を越え、現地事務所には約2000人の職員を抱えるようになった。アジア太平洋地域における貧困対策や住宅、生活インフラなどの需要が確実に増加している現われだと思う。
一方、この間、当事務所は地元福岡への貢献や連携を進め、国際会議の開催や講演会を頻繁に行ってきた。今後はさらにその連携を発展させるため、地元の技術、ノウハウによる国際協力を進めるほか、具体的な開発プロジェクトへ地元企業にも参加してもらいたい。現在、アジア都市連携センター構想を進めているが、地元からアジアへの総合的な情報発信と地元企業の技術の活用に貢献できるものと考えている。
8月1日にはアジア都市ジャーナリスト会議も開催する予定だ。アジアに近い北部九州から何も東京を経由してアジアに情報発信する必要はなかろう。地元から直接アジアに情報発信できるチャネルが出来上がれば、さらにアジアに開かれた地域づくりが進むものと期待したい。