肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『崖の上のポニョ』、観ました。

2008-07-22 20:55:55 | 映画(か行)
Ponyo_2_1b
監督:宮崎駿
出演者:(声)山口智子、天海祐希、所ジョージ、奈良柚莉愛、土井洋輝

 『崖の上のポニョ』、映画館で観ました。
海を臨む崖の一軒家に住む5歳のソウスケは、瓶に入り込んで動けなくなっていた
さかなの子ポニョを助けた。一緒に過ごすうちにお互いのことを好きになる2人だが、
ポニョの父親フジモトによってポニョは海へ連れ戻されてしまう。それでもソウスケを
想い、人間になりたいと願うポニョは、妹たちの力を借りてフジモトの蓄えた魔法の
力を盗み出し、再びソウスケの元を目指すが……。
 今朝のスポーツ紙を読んでたら、宮崎駿監督が自身の最新作『崖の上のポニョ』を
評して「この作品がどう受けられてもらえるかに、未来がかかっている」って。
うーん、オイラが観る限り、それはなかなか難しい願望だと思うんだよね‥‥。
オッと、ここまで読んで、この映画を“駄作”だと決め付けたそこのアナタ!!、まぁ、
そう結論を急ぎなさんな。もうチョイと腰を落ち着けて、オイラの話を聞いて頂戴よ。
恐らくね、ファンの人はこれがスタジオジブリの最新作で、宮崎駿の監督作だとくりゃ、
夢と冒険に満ち溢れてハラハラドキドキの連続…、でいてメッセージ性も心に響く、
思いっきり“贅沢なエンターテイメント大作”を期待する。ただ、この映画の宮崎駿
監督は、あえてそれらを封印して、ちっちゃくても“手作りの安心感”に拘ったように
思うんだ。例えるなら、どうだ見てみろと言わんばかりに、一流シェフが作った
フランス料理のフルコースじゃなくて、自分の田舎の母親が受験勉強の夜食に
作ってくれたお茶漬けみたいな、サラッとしたカンジ。あ、断っておくと、オイラには
そんな経験ありません。ひたすら自分でカップ麺にお湯注いでました。とにかく
宮崎駿監督自身、もう若い頃にあった“感性の鋭さ”は消えてなくなっちゃて
るんだけど、歳喰って、そのカドがなくなって丸くなった、みたいな。“ピュア”に
戻ってった感じ。巧く説明できないけど。思うに、晩年の黒澤明監督なんかも、
『八月の狂詩曲』とか、『まあだだよ』とか、遺稿となった『雨あがる』とかも、
そういう傾向があったからね。やっぱ、この2人の巨匠には何か通じ合うものが
あるんだなぁって、観てて妙に嬉しくなっちゃった。だからオイラは、この『崖の上の
ポニョ』って映画、とっても気に入ったよ。
 んじゃ、今からオイラが、この映画の良さをサクサクッと書いていくから、ラク~に
構えて読んで頂戴ね。間違っても“難しい顔”して読みなさんな。これはそういう
映画じゃないんだから。オイラが、この映画で大好きなシーンは、ある晩のこと、
船乗りの旦那さんが急遽仕事で自宅に帰って来れなくなる。何ヶ月ぶりに会えると
思っていた奥さんは、怒る。「コノヤローッ」ってなもんだ。そのままやりかけの
家事放っぽりだして、酒くらって寝ちゃうんだけど、息子のソウスケは夜の海を
眺めながら、前を通り掛かった父親の船を見つけ出す。即座にモールス信号で
「元気だよ」を送るわけだが、今度は寝ている母親を叩き起こして、お母さんも
どうぞ!!。で、彼女が旦那に送った一言がコレ、「B・A・K・A」――つまり「馬鹿ーッ」。
その、短い“バカ”の一言に込められたオンナ心と、愛情の深さ…。感じるほどに
涙がこぼれてきちゃってサ。もう長いこと映画ファンをやってるけど、「バカ」で
泣かされちゃったのは今回が初めてだもん。
 そんな風に、この映画の根幹にあるテーマは、《離れていても相手を想う気持ち》。
何か“au(エーユー)”のCMにありそうなコピーだけどサ。ちなみに、オイラは
「タダ友の輪を広げよう」のソフトバンク携帯です。関係ねぇか。まぁ、実際、この
映画で携帯電話を使っちゃうと、ドラマは成立しません。そりゃそうだ。それと、ここで
もうひとつ大切なのが、《弱者への施(ほどこ)しの気持ち》っていうのかな。主人公の
ソウスケは5歳の男の子で、一般的にみても“弱者”にあたるのだけど、嵐の最中や
旅の途中で、老人ホームのお婆ちゃん達やら、生まれたばかりの赤ちゃんやら、
妊婦さんやら、更に弱い立場で困っている人達に“贈り物”をあげる。勿論、それらは
取るに足らない、普段なら笑っちゃうような幼稚なもの。でも、それによって彼女らは
救われて、自然と観ているオイラの心も和らいでいく。つまり、平たく言えば“心の
問題”――、離れていても心と心は繋がってる。今作から劇画タッチは、デジタルから
アナログへ。今一度、人間同士の交流もアナログの良さを見つめ直しましょう、ってか。
言いたい事はよく分かる。ただ、現実問題として、今さら“携帯電話”を手放すのは
無理だがね。



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