肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ぐるりのこと。』、観ました。

2008-06-27 20:18:55 | 映画(か行)
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監督:橋口亮輔
出演:木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、寺田農、柄本明

 『ぐるりのこと。』、映画館で観ました。
1993年、何事にも几帳面な妻の翔子と法廷画家の夫カナオは、子供を授かった
幸せを噛み締めていた。どこにでもいるような幸せな夫婦だったが、ある時、子供を
亡くしてしまい、その悲しみから翔子は心を病んでしまう。うつになっていく翔子と、
彼女を全身で受け止めようとするカナオ。二人は困難に直面しながら、一つずつ一緒に
乗り越えていく‥‥。
 生きている意味が分からなくなった時…、今の自分から逃げ出したくなった時…、
どうかこの映画を観て欲しい。今年をまだ半分以上残す今(いま)6月の段階で、これが
“今年2008年度のベストムービー”になることを確信した。いや、仮に、今日が
1月の初旬だったとしても、恐らくボクは同じことを言う。それくらい、近年の日本
映画では突出した出来ばえの作品だった。橋口亮輔監督は、前作の『ハッシュ』から
今作までに費やした歳月が実に7年――。しかし、この映画を観るにつけ、たっぷり
時間を掛けた準備期間と、じっくり練り込まれた脚本の素晴らしさに納得する。
彼の映画を観ていつも思うのが、役者が与えられたセリフをただ読むのではなく、
(演技者が)役の本人になって場の空気を読み、自らの言葉でもって会話のやりとりを
行ってるんじゃないか、って。だから、台詞と台詞を繋ぐ“間の取り方”に独特の
緊張感があって、思わず引き込まれちゃう。いや、それは技術論でいう“リアリズム”
どうこうじゃなく、等身大で描かれる主人公らが抱える悩みが、直に“痛み”として
伝わってくるっていうのかな。
 考えてみれば、橋口作品に登場する人物って、誰一人として“完璧な人”なんて
見当たらない。本作『ぐるりのこと。』のヒロインも、描いた人生の青写真が崩れ始めると、
転げ落ちるように全てを失っていく。一方、夫はそんな壊れゆく妻を目にしながら、
与えられた仕事の中で“人生を自ら投げ捨てた犯罪者の姿”をスケッチしていく。
勿論、彼がそれをもって、何に気付き、何を思ってスケッチしていたのか、ボクには
分からない。映画では、それについて明確な答えは(あえて?)出していない。だけど、
一つ思うのは、人生で困難に突き当たり、どうして良いか分からなくなったとしても、
絶対に逃げ出したりしちゃいけないってこと。人は皆、弱い生き物だよ。自分の
人生ですら思い通りに進まない(涙)。だけど、間違っちゃいけない、それを社会の
せいにするんじゃなくて…、それを周囲の誰かのせいにするじゃなくて…、それを
“自分の弱さ”だと認めること……、すべてはそこから始まっていくんじゃないのかな。
うまく生きれなくたっていい…。カッコ悪くたっていい…。自分に自信が持てなく
たっていい…。今の仕事に誇りを持てなくたっていい…。今を何とか、生きてさえ
いれば…。映画終盤、夫は“自らの無力さ”を認めた上で、目の前の現実に立ち向かう
ことを決意した――、彼が妻に対してしてやれる僅かひとつの事、それは妻のそばに
居て、しっかり支えてあげること。その後のシーンは、愛の力によってよみがえった
ヒロインが、自ら描いた花の絵を眺めている。その、天井から降り注ぐ“生の輝き”を
体いっぱいに浴び、“生きる喜び”を噛み締めるヒロインの姿に、思わず胸が熱くなる(涙)。
彼ら夫婦だけに限らず、人は皆、口に言えない悩みを抱え、道によろけながら、それでも
踏み止まって、“何とか生きている”。どっかのロックシンガーが高いステージの上から
声高に人生の生き方を叫ぶような映画よりも、今観ている“観客と同じ目線”に立って、
“生きるための答え”を探していく‥‥、こういう映画の方がボクは好きだな。



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