監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ, ジェシー・ブラッドフォード
『父親たちの星条旗』、映画館で観ました。
太平洋戦争末期、激戦の地となった硫黄島の山頂で星条旗を掲げたアメリカ兵の
写真。全米を熱狂させ勝利へと邁進させた英雄たちの勇姿。しかし、その裏側に
覆い隠された真実…、そして英雄に祭り上げられた兵士たちの苦悩…。死闘を
繰り広げた硫黄島で、彼らは一体何を見たのか…。
イーストウッドがスピルバーグを“プロデューサー”にお迎えしたものか…、
スピルバーグがイーストウッドを“監督”にお願いしたものか…、いや、この際、
そんな事はどちらでも良い。いわゆる「水」と「油」、“ヒューマニズム”の
イーストウッドと、“娯楽志向”のスピルバーグがタッグを組んで戦争映画を
撮ることに、観る前から若干の不安はあったのだが、オイラの予感は悪い方に
当たってしまった。勿論、現在のハリウッド映画界をリードする2人の巨匠で
あるからして、悪い映画であるはずがない。映画の出来も楽々及第点はクリア
して、もしかしたらネームバリューで今年の賞レースの一角にくい込むかも
しれないけど……、ただ、それ以上を期待するのはチョットなぁ。
映画は、硫黄島に配属された3人の兵士を軸とした戦争ドラマ。彼らの、激しい
戦闘の中にいた“過去”と、ひょんな事から英雄となり、祖国に帰還した“今”とが
オーバーラップしながら、次第に隠された“戦争の裏側”が見えてくる仕組み。
ただ、ボクとしては、このフラッシュバックを多用した特殊な構成に戸惑う
ことが多くって、テーマが胸に迫るところまでは至らない。確かに、最先端の
CG(←スピルバーグの入れ知恵か??)を駆使した映像は、臨場感も迫力も
満点だが、ボクはイーストウッドの映画にはミスマッチのように感じられた。
何だかイーストウッドの個性とスピルバーグの個性が喧嘩して、互いの持ち味を
殺しあってしまった感じがするのは、ボクの気のせいだろうか。
一方で、イーストウッドの“戦争観”とでもいうのかな…、これまでの戦争
映画とは明らかに“角度の違う反戦”が、如何にも彼らしい。この映画の良い
ところは、アメリカ兵vs.日本兵、その“対決の構図”を出来る限り省略して、
あくまでもアメリカ側の一方から、この戦いの悲惨さと犠牲の大きさを描いて
いる点だ。“戦争の勝者”はアメリカである筈なのに、ここ(この映画)で
我ら観客が目にするものは、アメリカ兵が“見えない敵の攻撃”に負傷して、
息絶えていくシーンばかり。まるでイーストウッドは、その映像を通じて
我々にこう言っているようだ。《戦争に“勝者”はなく、“英雄”も存在しない。
あるものは“生と死”だけなのだ》と。そして、映画では“勝利の象徴”として
“(偽りの)英雄”となった主人公達が、心に深い傷を負ったまま、その後の
長い人生を苦しみながら生きていくことになる。何も戦場で死んだ者だけが
犠牲者とは限らない。もしかしたら、生きながらに「戦争」というあまりも
“重い十字架”を背負い続けた彼らこそ、この戦いの“最大の犠牲者”なのかも
しれない。そう、彼らの心の中の戦争は、永遠に終わることはないのだ。
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