コールドマウンテンブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントこのアイテムの詳細を見る |
『コールドマウンテン』、観ました。
南北戦争末期。南軍兵士のインマンは、愛するエイダを置いて戦場に出る。
重傷を負ったインマンは、脱走兵としてエイダの待つコールドマウンテンへの
果てしない旅に出ることを決意。一方、彼を待ち続けるエイダは、逞しさを
身につけていく‥‥。
テレビをつけりゃ戦争のニュースばかり。今日は何人死んだとか、何処何処で
銃撃戦があったとか‥‥そんな現実を前にして、もうしばらくは反戦映画を
観る気さえ失せつつあったけど、アンソニー・ミンゲラを信じてこの映画を
観て良かった。彼の最高作『イングリッシュ・ペイシェント』が“戦争という
運命”に翻弄され弄(もてあそ)ばれる男女を描いた反戦メロドラマなら、
本作はその厳しい運命に流されつつも立ち向かう“愛の力強さ”を感じた。
特にレニー・ゼルウィガー演ずる南部の女は、この映画のキーパーソンといえる
キャラクター。悲しみも怒りも胸にしまい、強く明るく生きていく南部の女‥‥
キッドマンも、ジュード・ロウも、今回ばかりは彼女の存在感に食われ気味。
これなら彼女のオスカー受賞に物申す人はないと思うよ。
映画は文学的要素に溢れ、美しい詩的な台詞が特徴的。ただ、この映画を
観て、 物語挿入部のウサギから、ハト、カラス、ニワトリ、ブタ、ヤギ、
ヒツジまで‥‥意図的に野生動物を登場させているように思うのはボクだけか‥‥。
ヤギが草を食べ、糞をする。その糞から草が生え、また一方でヤギは
強い肉食獣に食われゆく。まさにそれは《自然の摂理》‥‥彼らは自然の中で
“己の役割”を終えて死んでいく。しかし、我ら人間は互いを憎み殺し合い、
緑の大地を血で染める。もしや、そんな人の愚行を眺めるようにそびえ立つ
コールドマウンテンは“神がいる聖地”なのかもしれない。
その冷たく哀しい景色が泣いているように見えた‥‥。