出演:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ
『ヒトラー ~最期の12日間~』、映画館で観ました。
1945年4月20日、ベルリン。ソ連軍の砲火を避けるために、ヒトラーはドイツ
首相官邸の地下要塞に退却していた。すでに正常な感覚を失っていたヒトラーは
部下に実現不可能と思える作戦を熱く語っていた‥‥。
観終わって、しばらく考えてみる‥‥果たしてヒトラーとは何者だったのか。
戦争を、生んだ怪物だったのか……、
戦争が、生んだ怪物だったのか……。
勿論、それをどちらかに断定するなど出来るはずもないのだが、少なくとも
この映画では“後者”に近いと言っている。自分の秘書や肉親には人一倍の
気遣いと優しさを見せながらも、一度(ひとたび)司令室に入り、作戦の決断を
下すとなれば、人命より勝利を優先する“冷酷な独裁者”に変貌する。声を荒げ、
怒り狂うその形相(ぎょうそう)は、まさに戦争の狂気に憑かれた鬼のよう。
だが、ここでボクらが見落としちゃいけない大切なポイントがひとつ。
それは作品中、ヒトラーはそのほとんどを地下要塞から外に出ることはなく、
戦場や街の惨状を“その目”で確かめてないってこと。つまり、彼にとっての
戦争は“紙上の出来事”に過ぎず、彼の“目に見えぬところで”どれだけの
犠牲が伴い、どれだけの人命が失われたのかを気付いていなかった。
彼の罪の重さは“盲目”だったこと……彼方の理想(野望?)を追い過ぎて、
その手前にあるべき“人命の尊さ”が見えなかったのだ。
一方、この映画で意外だったのは、『~最期の12日間』のタイトルからして、
当然“ヒトラーの死”で完結するかと思いきや、実はその後も映画はしばらく
続いてゆく。恐らく、これはヒトラー死後も尚、その亡霊によって動かされゆく
“ナチの狂気”、、強いては人々の心底(しんてい)にまで深く入りこんだ
“ファシズムの支配”を描いている。そんな“異常な現実”さえ疑わず、
目には見えない力が、人の心と世界の全てを支配する。それが「戦争」という
“狂気に憑かれた時代”だった……。ところで、この映画について、一部から
「過去を美化している」との批判があったというが、他の人はどう思ったの
だろうか。ボクはそんな風には思わなかったけど‥‥。