ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

芸者さんのお引きの2です。

2012-04-27 21:40:25 | 着物・古布

 

まずは…お福ちゃんに着てもらいました。

申し訳ありませんが、これに締める丸帯がありませんで、ゴマカシです。

とりあえず、帯締めたらこんな感じ…で。

 

近くによって裾模様…。あっ光ってしろっぽくなってる…。

 

        

後ろ側の柄の出方はこんなです。どこが広がっても華やかですね。

 

        

 

では細かく見ましょう。まずは前裾から左脇。

 

   

 

お酒を飲む二人、歌を詠もうとしている二人、その先輩に色紙をさしだそうとしている禿、

お囃子方でしょうか、ちょっと地味目の着物の女性は、三味線を手にしています。

ちょっとアップで見ましょう。

「ねぇねぇいいお歌、詠めた?」「なーんか、川柳しかうかんでこないのよねぇ…」ちゃうやろ…。

 

   

 

髪の描き方なんかもこまかいです。

 

         

 

こちらが禿さん、稚児髷がかわいいです。大きな手毬柄の着物もいいですね。

 

         

 

ちょっと年増風のおねえさま、丸髷ですね。

 

         

 

着物の柄も細かいです。

 

         

 

   

そしてこちらが右脇から右前。舞う人、鼓を打つ人、踊りに見とれる人…。

 

         

 

昨日出しました「鼓の人と、舞いを見る人」 

 

         

      

そして「踊る人」…。

 

       

 

この人、実はほとんど、真後ろ…。位置的に言うと、前柄との距離はこんな。

左の縦線が背縫いです。

 

      

 

上の写真の下の方が裾なわけですが、下の方に大きく長く描かれているのが「小袖幕」です。

ちょっと色が濃くなってしまいましたが…。

 

    

 

そして、実はこの着物は「襲」で入手しました。

つまり「中着」つき、だったわけです。

残念ながら、中着は薄紫でした。この色はもういちばん「薄汚れる色、褪せる色」なのです。

裾なんか汚れで茶色になってます。衿元を見ると、ずいぶん着られています。

 

           

 

中着の前はこんな感じ。向かって左、つまり「右の前」は、小袖幕をかざるためのヒモを結んだ桜の木。

左の前は小袖が一枚、無造作に掛けられています。細い市松柄は帯ですかね。

 

       

 

通常、両褄柄と言うのは、左右対称が多いです。

それの「中着」の両褄は、表着の柄と同じか、系統だったもの。

しかしこれはとてもこってまして…。

まず、上の中着の前の裏側はこちら。幔幕の前の硯箱と火焔太鼓

 

          

 

硯箱は、表の左前に「和歌」を書こうとしている人がいますね。それにあわせたもの。

つまりこの「中着の右の前の裏」は、「表の左の前の裏」と合っています。こちら。

 

           

 

ややこしいですからゆっくり…次に「中着の左の前の裏」は、 「表着の右の前の裏」と合っています。

 

        

 

ちょっとこんがらかりますね。要するに、普通は、表着の共八掛の柄は、中着の共八掛の裏と、

左右対称で、まったく同じ場合は、同じ柄が8枚とれるわけです。

中着の方がちょっと柄が地味だと、同じ柄のものが表着4枚、中着4枚になります。

ところがこの着物は、表着の表と八掛、中着の表と八掛の8枚が、全部違う柄で、

しかも、表着の右と中着の左…というように、交差するような感じで「対」になっています。

実際に着て歩いても、そんなに「上の前と、下の前」なんて変わりばんこに出るわけではありませんから、

よくよく見なければわからないのです。でも、そこが贅沢なんですね。

 

袖裏は紅絹。戦前のものだと思いますが、当時の世相を考えますと、

これは芸者さんが、ごひいきの「旦那」に作ってもらったものでしょう。

ずいぶん豪気ですよね。相当のお金持ちだったのでしょうね。

つまり、それだけ美人で売れっ妓だったのだと思いますが、たぶんこれは「花見用」に作らせたもので、

これだけのものですから、そうそう二度三度、二年三年とは着られません。

おそらく妹芸者などに譲ったのでしょう。それでも、もったいなくて中着だけかなり着た…と言う感じです。

柄行は関西好みだと思います。江戸の芸者さんだと、もっと「粋」を選んだと思いますから。

本来、黒地の五つ紋は「出の衣装」と言って、お正月に着るものですが、

舞台の時などにも着ましたから、春の桜のころの舞台できたのかもですね。

 

いずれにしても、こういう染、といいますか「柄」は、もうありませんし、今これを作ったら…

相当な価格になると思います。よく見るとシミもありますし、汚れもありますが、

着るわけではありませんから、このまま「保存」。ミニミニ博物館に飾れたらいいですねぇ。 


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12 コメント

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Unknown (陽花)
2012-04-27 22:13:50
季節限定の贅沢な襲・・・
それにしても華やかで美しいと
ため息が出ます。
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Unknown (人形屋)
2012-04-27 22:21:34
待ってました~!
いやぁ、贅沢な品ですねぇ。
柄の人物たちの髪型や着物の取り合わせにも心惹かれました。
芸者さんの衣装はドールで作りましたが、やっぱり実物大のものは違いますねぇ。
眼の保養をさせていただき、ありがとうございました。
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実写版 (たま)
2012-04-28 00:41:27
素晴らしいです~!
有吉佐和子の小説が写真解説されたみたいで、わかりやすくて嬉しいです(^^)
(博物館の学芸員さんも見習って欲しいなぁ)
中着があるのもまたびっくりでした。
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Unknown (古布遊び)
2012-04-28 07:37:52
うわあ~~素敵ですねえ!
何とも豪華で華やか。
これをお召しになった人はどんな方だったのでしょうねえ。
想像するだけで楽しくなってきます。
こういう世界があるのですねえ~~
今朝は良いものを見せていただきましたー感謝
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Unknown ()
2012-04-28 10:19:08
やはり 想像以上に素晴らしいですね

どれほどの財力の方が どれほどの魔力に掛って
この様な物を作られたのでしょうか。

画を描いた方も 仕立てた方も ここまでの仕事をされると気持ち良かったでしょうね。
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Unknown (とんぼ)
2012-04-28 20:57:16
陽花様

ほんとに何回も着られない着物ですよね。
どれだけゼータクなんだか…。
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Unknown (とんぼ)
2012-04-28 20:59:05
人形屋様

着て見せるより、衣桁にかけて飾りたいですわ。
こういう柄行は、今はないのでしょうね。
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Unknown (とんぼ)
2012-04-28 21:01:06
たま様

中着がもう少しきれいだったら…と言うのは、
贅沢かな、なんて思いました。
残っていただけマシ…だと思います。
もう袖つけなど切れていました。
説明がなかなか難しくて…。
わかりやすいといっていただいて、ほっとしています。
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Unknown (とんぼ)
2012-04-28 21:03:50
古布遊び様

まぁどれだけ美人さんだったんでしょうか。
写真でも残っていたらぜひ拝見したいところです。
飾っておきたいですわ。
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Unknown (とんぼ)
2012-04-28 21:06:18
惠様

今作ったら、いったいどれだけかかるやら。
なじみの芸者さんに、こんな着物を作るお大尽は、
奥さんにもゼータクな着物を着させてたんでしょうか。
それもまた気になったりします。
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