快読日記

日々の読書記録

2023年の快読!

2023年12月30日 | 今年のベスト
2023年(2022年12月26日~2023年12月30日)の快読

フィクション

「真珠とダイヤモンド 上下」桐野夏生/毎日新聞出版
20代にバブル期を生きた3人の話。
望月・佳那のふたりはともかく、水矢子に対して作者が与えた運命があまりにも残酷。
バブルで自分を見失って破滅した彼らが最後に言う「大人にやられた」というセリフが印象深い。
彼らみたいな若い人たちをいけにえに私腹を肥やして逃げ切り、口を拭っている「大人」の存在をあぶりだすのが桐野夏生の凄さだと痛感しました。
70代に入ってなお、こんな作品が書けちゃう桐野夏生の胆力に圧倒されます。傑作。

「終わりなき夜に生まれつく」アガサ・クリスティ/ハヤカワ文庫
その前に読んだ「ポケットにライ麦を」よりおもしろいなんてことはあるまいと、手を付けずにいた自分は甘かったです。
人間に対する洞察力の高さとするどさ。
クリスティ本人もベストと言い切る作品だそうで、納得。
読みながらずーっと小さい違和感があって、何度もとげとげする感覚があって、
それがラストで一気に解決しちゃう爽快さといったらないです。
この話、「マイク」という男性の一人称告白体で書かれているけど、
他の人物で同じ話を語ってもそんなに大した話ではない気がします。
ストーリーがまずあって、これ「マイク」目線で行ってみるか!みたいなかんじだったのかな。
とにかく満足。小説を読む快楽ってこういうことだと思いました。

「水車小屋のネネ」津村記久子/毎日新聞出版
血縁とか恋愛関係とかではなく、がっちり手をつないだり、しがみついたりするのでもなく、
他人同士がちょっとずつ思いやって、ちょっとずつ支えあって生きる話。
人の小さな善意や思いやりみたいなもので人は育っていく。
というか、そうだったらいい。
この話では彼らをつないでいるのが「ネネ」というヨウムで、
人間の世話と話し相手を必要としている、というのがとってもうれしいです。
1981年、91年、2011年、そしてコロナ禍の2021年、と10年ごとの定点観測になっていて、
その時点の話を描きつつ、語られていない部分もしっかり伝わるのもいい。

あと、ここにでてくる姉妹の母親とその交際相手のような人、「発するコトバ=心」じゃない人。
保身や逃げのためだけに心にもない言葉を平気で発する人。
汚れた言葉を使う人、いや、言葉を汚す人。
これは津村記久子の作品に実はよく登場するタイプの人で、世の中はそういう人との闘い、みたいな側面もあるなあと感じました。

「我が友、スミス」石田夏穂/集英社
昔からボディビルダーに興味があって(ボディビルに、ではなくて)、
それで手にした増田晶文「果てなき渇望」が本当に面白かったので、
図書館で見た「我が友、スミス」がボディビルの話と知って即借りました。
まじめで自分との約束が守れる人がだけが結果を残せる競技、ボディビル。
女性のボディビルダーの中には、自分が女(の体を持つもの)であることへの葛藤を抱えている人も多く、
この作品でも主人公U野には、今の自分ではない、別の生き物になりたいという欲求があります。
でも、「果てなき渇望」にもあったように、女性のボディビルダーには「女性らしさ」が要求されるという不条理。
そこにU野が抵抗するラストもよかったですが、その行為に対するE藤のセリフで、かつてのO島もそうだったとわかる、という終わり方に、かすかな明るさが見えてよかったです。
今年は、この作品のおかげで石田夏穂にハマり、
「ケチる貴方」「黄金比の縁」「我が手の太陽」と続けて読んだ10月でした。
なんか、この世の中って息が詰まるなあ、という感じと、そこになんとか風穴を開けようともがく姿に共感します。

「冷い夏、熱い夏」吉村昭/新潮文庫
人間、生まれてくるのも大変だけど、死ぬのはほんっとに大変な仕事だ、と思いました。
津村節子「紅梅」で吉村昭の最期を読んだ後だったので、それを思い出しながらぐるぐる考え込んでしまった。

「名探偵モンク モンクと警官ストライキ」リー・ゴールドバーグ/ソフトバンク文庫
モンクをはじめ、世間から排除されやすい人たちが事件を解決するアベンジャーズ。
モンクの臨時部下4人は、強迫神経症、認知症、妄想狂、そして凶暴な人。
それぞれのアシスタントも含めて、いわゆる「変な人」の描き方がとてもいい。
優しい、とか、あたたかい、ではなく、同等というか、こういう描き方こそ真のバリアフリーだと感じました。
モンクって、「推理」をしているわけではなくて、無秩序な状態を心底嫌い、秩序を取り戻そうとしているだけ=犯人をみつけること なのがすごい!
謎解き、という点では「名探偵モンク モンク消防署に行く」と比べてゆるい気がするなあと思いながら読んでいたら、
ラストで知らされる犯人の動機に「おおっ!」と声が出ました。ゆるくなかったです。

「ハンチバック」市川沙央/文藝春秋
読書バリアフリーの話を取り上げる評者が多いけど、
実際読んでみると、それよりなにより、あのラストがしんどいです。
いいとか悪いとかではなく、作者にとってこれしかなかった、という選択なわけだから、
その心の中を精一杯想像すると深くて暗い所に落ちていきそうになる。
市川沙央って、今後も作品を書くのかな。
書くとしたら、何を書くんだろう。
必ず読むと思う。

「我が手の太陽」石田夏穂/講談社
溶接工の話。
腕のいい溶接工の「仕事」がじわじわズレて狂っていくかんじ。
志賀直哉「剃刀」みたいな話だと思いました。

「セカンドチャンス」篠田節子/講談社
今年は篠田節子はこれと「冬の光」しか読まなかった。
どっしりしていて信頼できる作家だ。ハズレなし!

「じゃむパンの日」赤染晶子/パームブックス
今年のニュースといえば、赤染晶子の新刊が読めた!ということ。
2月、ちょうど体調が思わしくなくてつらいとき、助けられました。
おもしろくておもしろくて、なくならないようにちびちび読んで、1か月後に再読しました。


ノンフィクション

「虐殺のスイッチ」森達也/ちくま文庫
戦争に関する映像や本に触れるたび「人間ってこんなにも残酷になれるのか」と愕然としてしまうことがあるけど、
そして「自分も状況によってはそうなっちゃうの?」などと思うけど、
森達也のこの言葉、腑に落ちました。目が覚めた。

「こうして人は歯車になる」
「日本人は組織と相性がよい。言い換えれば個が弱い。だから組織になじみやすい。周囲と強調することが得意だ。悪く言えば機械の部品になりやすい。だからこそ組織の命令に従うことに対し、個による摩擦が働かない」


だから、例えば戦場で地獄を味わって復員しても、意外なほどするっと日常に戻る。
人間はすんなり良いことも悪いこともする。
ドイツでも、多くの収容所でゾンダーコマンドと呼ばれる多くのユダヤ人がユダヤ人虐殺に加担していたそうです。

最後にもうひとつ引用。

「社会は加害者の声を聞きたがらない」

「貴の乱」宝島編集部
日馬富士の暴行事件をきっかけに揉めに揉めた相撲協会。
ものすごく生々しくて本当に面白くて一気読みしました。
アウトレイジみたいです。
小林慶彦という正体不明のならずものがにょろりと一匹紛れ込んだだけで、すごい勢力争いに発展します。
っていうか、これはもう抗争。
そういえば、北の富士が解説席で伊勢ヶ濱親方を「頭がいい」と評したことがあったけど、そういう意味だったのか~とうなりました。
男だけの世界って、俯瞰で見るとバカみたいです。

「「自傷的自己愛」の精神分析」斎藤環/角川新書
読んでる間、なるほど~しか言わなかった。
筆者の言う「健康な自己愛」がばっちり自分に当てはまる!!←おめでたい。
昨今の「拡大自殺」系の事件、これでほぼ読み解ける気がしました。

「女ことばってなんなのかしら?」平野卿子/河出新書
日本語って、思った以上に性別に縛られている、ということを思い知らされます。
例えば、少年/少女 という表現の不均等さ。(少男、とは言いません)
おお!言われてみれば!の連続でハッとします。

本当に、女ことばってなんなのかしら?

「自殺帳」春日武彦/晶文社
最近の春日武彦の本で一番おもしろかった。
この人の魅力は、限りなく正直に近い(完全に正直、だと社会的にいろいろ不都合がありそうなので)ことだと思いました。

「随筆集 あなたのくらしを教えてください」シリーズ(全4冊)
心身が疲れたと感じるときにじんわり効く本。

「薬物依存症の日々」清原和博/文春文庫
2016年2月2日の逮捕時のエピソードから始まるこの本を、ちょうど、次男が所属する慶応高校が甲子園で優勝した日に読んだ偶然。
清原って、野球と切り離されちゃったら生きていけない、野球以外のものを持たずに生まれてきた人なので、
息子たちはそのために生まれてきたのかも、と思ってしまいました。
元妻もえらいです。

「「助けて」が言えない」/日本評論社
松本俊彦(清原の主治医)の文章が読みたくて手にした本。
各分野の専門家の文章が収められています。
薬物依存の話以外では、男性の性被害者の話があまりに深刻でした。
知らなかったことがたくさんありました。
生涯で一度でも性被害にあう男女比は10:15、男性の比率が想像以上に多いです。
恥ずかしい、怖い、自分が汚された気がする、言っても信じてもらえないなど、なかなか周囲に相談もしづらい。
自分は男なんだから、強くあらねば、という呪縛からなかなか逃れられない。
男に生まれても、女に生まれても、どっちが当たりとかハズレとかなさそうです。
なかよく生きていきたいです。

「病と障害と傍らにあった本」里山社
病気の当事者、介護者など12人の本にまつわるエッセイ集。
とくに森まゆみ・丸山正樹・川口有美子の文章が記憶に残りました。

「日本一長く服役した男」杉本宙矢・木村隆太/イーストプレス
無期囚の多くは平均20年くらいで仮釈放になる、というのは昔の話。
今は30年くらいなんだそうです。
終身刑導入の動きはあったけど挫折。
終身刑というのは囚人にとってはもちろん刑務官への負担も大きくて、困難を極めます。
そこで制度は変わらず、厳罰化を!という雰囲気だけが残ってしまいました。
さらに、無期囚釈放の高いハードルとして「受け入れ先」の問題があり、
身元を引き受けてくれる個人や施設がないと、このケースのように強盗殺人で61年服役、なんてことが起きてしまいます。
若く未熟な(といっていいと思う)記者が迷ったままのラストには誠実さを感じました。
命・時間・法律など社会制度の歴史、という大きな獲物と格闘した記録。

ほかにおもしろかったノンフィクション(読んだ順)
「心の野球」桑田真澄

「私の文学史」町田康

「ミライの源氏物語」山崎ナオコーラ

「ポワロと私」デビッド・スーシェ
 途中、スーシェの自伝なのか、ポワロの自伝なのかわからなくなります。
 いろんな俳優がポワロをやったけど、結局スーシェのポワロが最高な理由がよくわかる本。

「ラッセンとは何だったのか」
 アートな人たちのラッセンに対する憎しみがあふれた本。
 ピカソより~ フツーに~ ラッセンがすっき~!
 「普通に好き」と言われたい/言われたくないアート人たちのイラつきが手に取るようにわかり、結果、ラッセンに感心してしまいました。

「明るい原田病日記」森まゆみ

「やくざ映画入門」春日太一
 これを読んで「県警対組織暴力」を見ました。
 すっっごくおもしろかったよー!!

「聞いてチョウダイ根アカ人生」財津一郎
 「座頭市」での演技に感動し、亡くなるちょっと前に読んだ本。
 明るくて、正々堂々としていて、困難を乗り切る力があって、イメージ通り。すてきだ。

「コロナに翻弄された家」末利光
 姉と2人の妹が新型コロナに感染し、2020年の4月、妹2人が亡くなった、元NHKアナウンサーの手記。
 人生とは、とか、運命とは、とかに話が行かず、終始一貫して政治や医療システムに怒りが向けられている。
 つまり、コロナ禍とは「人災」である、と再認識しました。

「ヒロコとニャンコと音楽の魔法」谷山浩子
 谷山浩子ファンのバイブル「魔法使いの浩子さん」のアンサーソング(ブック?)みたいな、副読本みたいな本。

「ありがとうだよ、スミちゃん」萩本欽一
 プライベートを語っている珍しい本。

「人生はそれでも続く」読売新聞社会部「あれから」取材班

「NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実」NHKスペシャル取材班
 ひきこもりが社会問題とされはじめたころ、
 そうは言っても親が死んで収入がなくなれば働かざるを得ないよねえ、なんて甘く考えていたけど、
 彼らが50代以上になってきた今、衰弱死をしているという衝撃。

「水谷豊自伝」

            

あいかわらずの無節操な読書ですが、
来年もいい本にたくさん巡り合えますように。

2022年の快読!

2022年12月27日 | 今年のベスト
2022年(1月1日~12月25日)の快読!

フィクション

「ポケットにライ麦を」アガサ・クリスティ/ハヤカワ文庫
今まで読んだクリスティ作品の中で1番!
犯人を当てようとして読むとき、我々は無意識に「作者が嫌いなタイプの人間はだれか」を考える。
この犯人は一見それに当てはまらないようだが、最後にこういう人間を芯からの悪人と定めているクリスティに共感した。
読者にとって合う作家とは、人間の好みが合う作家なのだ。
ミス・マープルが、グラディスというちょっと知的レベル低めの少女を「愚か」と断罪しているようにみえて、
実はそこに不憫さや悲しさを感じているところも傑作。50歳を過ぎてこれを読めた運のよさ。

「とんこつQ&A」今村夏子/講談社
短編集。特に「嘘の道」が傑作だと思う。
今村夏子って、実は人間に対して強い嫌悪感を持っている気がする。
人間はおろかでどうしようもなくグロい。そこに“希望”みたいなものも一切持っていないようにみえる。
おっとりしたボケ風味がおもしろいせいで見えづらいけど、中心の核のところに“絶望”が食い込んでいて、それはかなり硬くて黒い。
「良夫婦」もすごい。傑作すぎて怖い。ずっとボケてて、だれも(作者も)この世界に突っ込まなくて、そしてものすごく不安定。
4編すべて3回ずつ読みました。

「燕は戻ってこない」桐野夏生/集英社
人間の多層性。中心部は小心で臆病で少し生真面目なリキ。
外側から見ると浅はかでこらえ性がなく熟考できないタイプ。
さらにこれを他人から見ると、物静か、だったり“キレイ”に見えたりする。
そういうことが丁寧に描かれている。
そのほかの人物も、例えばリキの母親や同級生のような、つまらないからこそリアルな人物から、
りりこのようなトリックスターまで幅広い。何がすごいって、それぞれの人物が使う“言葉”が全然違う、その正確な書き分けがすごい。
最初からほとんど外圧によって動いてきたリキが、最後の最後に100%自分の意志で決断する場面があり、
その底知れなさみたいなのが不気味でズンッときた。

「失われた岬」篠田節子/角川書店
「砂に埋もれる犬」桐野夏生/角川書店
「団地のふたり」藤野千夜/U-NEXT
「現代生活独習ノート」津村記久子/講談社
「花火」吉村昭/中公文庫
「ソーネチカ」リュドミラ・ウリツカヤ/新潮社
「なぜ「星図」が開いていたか」松本清張/新潮文庫



ノンフィクション

「嫌われた監督」鈴木忠平/文藝春秋
プロ野球についての知識は全然ないけど、落合博満のことはずーっと気になっている。
半分は福嗣くんのお父さんとして、だけど。
あとの半分は、この人の思慮深さと周囲の理解を求めていないようにみえること。
去年、落合の映画評論集「戦士の休息」を読んでとってもおもしろかった。
深く鋭い洞察力を持つがゆえに孤独にならざるを得ない落合だけど、信子がいるからいいんだよね~。
そういうタイミングでこの本を読んだ。
好き嫌いで選手を見ない、感情ではなく契約で関係を結ぶ、チームのためではなく家族のために野球をしろと選手を諭す。
しがらみや好悪や感情で動く群れからしたら全然面白くないから、上層部には嫌われるが、
選手一人ひとりと誠実に(ちょっと不器用なくらい誠実に)関わり、彼らの内面を変えていった結果、チームは快進撃を続ける。
川崎に死に場所を与える場面では、久しぶりに泣きながらページをめくった。
最終的には結果を出しすぎて年俸が上がり(もともとそういう契約だった)、そのせいで財政が圧迫されて解任、という結末。
でも、任期の最後の方で、落合のものの考え方がチームにしっかり染み込んでいたところにうなった。
世の中がみんな落合的価値観で動いたらどんなに楽だろうと思った。
星野仙一的な、群れが幅を利かす社会はしんどい。徒党を組むのはきつい。
好き嫌いで物事が決まっていくのもつらい。
好きって言ってくる人は、何かの拍子に大嫌いにも針がふれるので恐ろしい。

「忠臣蔵入門」春日太一/角川新書
史実としての赤穂事件ではなく、長い間日本人に愛されてきたコンテンツとしての「忠臣蔵」をがっちり教えてくれる本。
ちょうど介護生活に入ってBSの時代劇ばかりを見ていて、忠臣蔵もドラマや映画、三波春夫の歌謡浪曲など、何度も見る中で、そのストーリーや名場面、キャラクターなどだいぶ詳しくなったところだったのでグッドタイミング。
ちなみにわたしが忠臣蔵に出るとしたら天野屋利兵衛がいいな~。
何度見ても、だれのを見ても、本当にうまくできた話で、知れば知るほどおもしろい。
そもそも自分は何で「忠臣蔵」を知ったのか、と振り返ると、子供のころに見たドリフのコントなんですねえ。
このいなかざむらいめがぁ!っていう。

「虚空の人 清原和博を巡る旅」鈴木忠平/文藝春秋
「嫌われた監督」のときはまだ日刊スポーツの記者だった鈴木忠平がフリーになって書いたのがこの本、というプロローグから“鈴木忠平を巡る旅”というかんじで期待が高まったが、その期待以上の作品だった。
清原が、自分に生まれたことを後悔する場面がある。
自分に生まれたことを後悔する、これ以上の悲しみがあるだろうか。
出所した清原を支えた弟分の男性が自殺、その後を引き継いだ宮地さんとサカイさんの献身、その2人に清原が甲子園のホームランボールを1つずつ贈るところ、読んでいるこちら側の感情も耐えられないほど揺さぶられる。
1985年のドラフトで桑田は悪役となり、清原は「かわいそうな人」になって、何をやっても許され同情されるようになった。
巨人の内部にどういう動きがあったんだろう。
“人を疑わない男”清原と、“人を信じない男”桑田の対比も壮絶だ。
どちらもたった高3で大人にひどい目にあわされて、それをずっとひきずっている。
特異な才能に大人が群がって奪い合い騙しあう構図は、マイク・タイソンを彷彿とさせる。
清原という人自体はどちらかというと無垢で空洞で、そこが人を引き付ける引力になっていることはまちがいない。
一方の桑田真澄にもすごく興味がわいた。

「清原和博への告白」鈴木忠平/文藝春秋
甲子園で清原にホームランを打たれた投手たち(を中心とした対戦相手)のその後や清原への思いを取材した本。
清原ブームが続いていた私としては、これも読んでおこうくらいの気持ちだったんだけど、これが本当に名著だった。
鈴木忠平って、人の人生を救いとる力(ある種のしつこさとあたたかさと図々しさ)に長けていて、
文章はちょっとどうかというくらいエモーショナルでぐいぐい引き込まれる。
打たれた投手や捕手たち、ひとりを除いてほとんどが甲子園の試合でしか清原と接していない。言葉を交わしたこともない。
しかし、その後の人生の折に触れて彼らは清原のことを考える。これはたぶん一生続く。
清原を「虚空の人」とはよく言ったと思う。だからこその引力。
彼らにとって清原とは何だったのか。
ゆったりしたスイングでホームランを放つ、打たれても痛みを感じないのが清原だと口をそろえて証言するのもおもしろかった。
むしろ桑田の方が斬るような打法で怖いんだって。くーっ!野球のことよくわからないけど、なんだかすごい。

「定本 桑田真澄」スポーツグラフィック・ナンバー/文春文庫
清原に関する本を読むと、その奥にある大きな存在である桑田真澄が気になって仕方ない。
ちょっと落合博満とも共通点がある。
インタビューも若いころのものから大人になってからのもそろっていて、
通して読むことで、桑田真澄の頭の良さと信じる力の強さがよくわかる。
そしてそれは経験によるものというよりも資質的なもので、清原との違いがすごい。

「ドリフターズとその時代」笹山敬輔/文春新書
志村けんが亡くなったことで、ドリフターズにひと区切りついたタイミングで書かれた本。
おおっ!!と思ったところはたくさんあったけど、一番印象に残ったのは志村けんといかりや長介との複雑でデリケートな関係だ。
親子のようなライバルのような戦友のような。
どちらも父親との葛藤を抱え、徹底的に完璧主義者で、反発した時期もあったようだけど、互いが一番の理解者でもあった。
たしかにこの二人は似ている。
加藤茶はもちろん、他のメンバーについてもとってもよく調べられていて大満足。
荒井注が体力的な問題でドリフを脱退した年齢が今の自分とそんなに変わらないことに衝撃を受けた。

「永遠のPL学園」柳川悠二/小学館
PL学園野球部の最後の部員になった62期生の最後の戦い。
結局、廃部になったのは何度も起きた暴力事件と、何より教団の資金力不足・PL教団信者の激減。
三代目に入ってから、いろんな歯車がかみ合わなくなるんだなあ・・・。
よく取材されていて充実した1冊だが、鈴木忠平のドラマティックかつエモーショナルな文章になれたせいか薄味に感じられる。
しきれ!!PL!!

「Wうつ」萩原流行・まゆ美/廣済堂書店
中村吉右衛門版「忠臣蔵」で、天野屋利兵衛を演じた萩原流行(見る前はミスキャストでは?と思ったけど、さっぱりして品がある天野屋利兵衛になっていてすっごくよかった)が不幸な事故で亡くなってだいぶたつが、警察車両との事故であったせいか、その後の経過の詳細がよくわからない。
クセが強くてギラギラと華やかな萩原とその妻の話。
2人とも不安定で危なっかしいけど、お互いにこの人しかいなかった夫婦だ。
萩原がミュージカルで鹿賀丈史の代役を務めたことをきっかけにうつを発症していく過程とその症状、妻へのダメージ、強さともろさの落差がすごい。

「文人悪食」嵐山光三郎/新潮文庫
近代文学のオールスターのエピソードは濃くて(濃すぎて)大満足。
なにより嵐山光三郎のものの見方や考え方が爽快。
でも岡本かの子を悪く言い過ぎ!おもしろいからいいけど。
思い入れがある作家とそうじゃない人との落差はあるけど、そこもまたいい。
“小林秀雄は畏怖されるが親しまれることはない”とか中也の非道っぷりの暴露(あの美少年風肖像写真まで否定していて笑った)もいい。
壇一雄や深沢七郎といった深く関わった人についての文章は特に滋味に溢れている。
続けて嵐山の「NHK人間講座 2000年10月~12月期 追悼もまた文学なり」「文人悪妻」もおもしろかった。

「冷酷」小野一光/幻冬舎アウトロー文庫
座間の白石某の事件の話。解説で森達也もいうように、生まれついての殺人者というのがいるとしたらこの人かも。
断定できないのは、白石の家庭や生育環境についてほとんど調べられていないから。
しかし、それを知りたいと思うのは、そんな人間はいない、成育歴の中で何かあったに違いない、という因果関係を求めて納得したいというこちら側の欲求でしかない。
人を殺し、その死体をどう解体したかという話と、次の面会でハシカンの写真集を差し入れてね、をまったく同じ調子で語る人間は、「冷酷」という言葉では掴みきれない。

〈そのほかおもしろかった本〉
・「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦/河出文庫
  ここまで心の中を吐き出したものを読んじゃっていいのか、と何度も思いながら読了。
・「美しい日本のくせ字」井原奈津子/パイインターナショナル
  やっぱり手書きの文字は好きだ。
  南辛坊みたいなセンスある(自覚的な)くせ字と、まったく無自覚な、ド天然のくせ字、どちらも鑑賞に値する。
・「潜入・ゴミ屋敷」笹井恵里子/中公新書
・「8050問題」黒川祥子/集英社文庫



年間100冊読めたらすごいなあ、くらいだったわたしの読書生活でしたが、
どっぷり介護のおかげで読書量は倍増。わはは。いいこともあるんですねえ。
介護って、待機時間が長いんです。ただついているっていう時間。
そんなわけで、一つのテーマをぐいぐい読むという楽しみを得られたよい1年でした。
久しぶりに更新もできてよかったです。
来年もいい本がいっぱい読めますように。

「分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議」河合香織

2021年09月07日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
8月31日(火)

「分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議」河合香織(岩波書店 2021年)を読了。

尾身さんをはじめとする専門家会議を、
所詮御用学者でしょくらいに思っている人にぜひお勧めしたいです。

結局、政府と専門家会議は、国民へのメッセージの「内容」よりもその「表現」で争っているようでした。
率直に伝えたい専門家会議と、言質を取られたくない、あとで間違いでしたは許されないと考える政府とでは、そもそもがなじまない。

そして、政府は都合が悪くなると「専門家の意見を伺って」とか言って逃げ、
かと思えばひとことの相談もなしに大きな決断をしたり(一斉休校やアベノマスク)します。
控えめに言って、やりづらい。
ストレートに言えば、腹が立つ。

でも、そんな“悪役”になりやすい厚労省をはじめとする国側で働く人たちにも言い分はあるし、正義もある、
そこら辺もしっかり拾っているいい本だと思いました。

この著者は、事実を追究する以上に、対象者の内面もすくいとるような取材をしていて、誠実さを感じます。
尾身さんに関しても、周囲の人たちの話や事実を積み重ねることで、
その知性や人間性、自分の感情をコントロールできる精神力が伝わってきました。
それ以外のメンバーについても、ああ、日本にはこういう人たちがいてくれてるんだなあ、と頼もしく感じつつ、なんだか謝りたいようなお礼を言いたいような気持ちになります。

ところで、専門家会議のメンバーの日当は17,599円。
兼職規定を理由にそれすら受け取らない人もいるそうです。
交通費等もゼロ。
使命感や責任感で日夜動いている。
それなのに彼らには脅迫状が届き、メンバーの弁護士は専門家の暴走を止めなかったと訴えられ、尾身さんには殺害予告まで届きます。どうなってんですかね。

「女帝 小池百合子」石井妙子

2021年08月23日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
8月20日(金)

「女帝 小池百合子」石井妙子(文藝春秋 2020年)を読了。

「利用するか攻撃して傷つけるか」の二択でしか人と関われない人の話。

嘘が多すぎて麻痺しちゃったのか
もともと良心がないのか。
嘘つきだから人を信用できないという不幸。

華やかなひとつ違いのいとこの存在、
ある種の人格障害といえる父親(破天荒とは別物)、
生まれつきの顔のアザとか、
山岸凉子の絵で脳内再生してしまいました。

この人は細木数子にそっくりです。

軽薄で、他人に共感する力がごっそり抜け落ちてる小池百合子の総理就任を、この本が阻止してくれるのか。

しかし、考えようによっては、
親やじいちゃんの代からの代議士ですみたいな貴族だらけの政界で
野良犬がのし上がるにはこれしかなかったとも読めます。

「「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症」坂爪真吾

2021年08月20日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
8月14日(土)

「「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症」坂爪真吾(徳間書店 2020年)を読了。

もうフェミニストvsマチズモみたいな単純な話じゃないんですね。
昭和は遠くなりにけり。

「ツイフェミ(ツイッターフェミニズム)」が、フェミニズムに理解がある「リベラル男子」までをも攻撃するとか、
オタク対フェミニスト(「女体」を強調したアニメ絵のポスターなどに関連して)、
LGBTへの差別・そしてその内部の複雑極まる対立構造などなど。

特に驚き、嫌悪感を持ったのは、
“ネットで怒ったりケンカしたりしてる人たちの多くがその件の当事者ではない”ということです。

ガラケー愛用者でSNSとは縁がない(好きな作家などのツイートを数ヵ月に1回PCで覗くくらいが限界)わたしから見ると、
な、なんだかすごいことになってるな…、くらいの感想しか持てず、くわばらくわばら(読むのがしんどい)、だったんですが、
終盤、これらの行動を「依存症」と位置付けてからの分析はとてもおもしろかったです。

「自分の痛みと他人の痛みの区別がつかない」で怒り狂い、
その怒りがもたらす快感がクセになり、依存してしまう。
でも、これはかなりストレスフルですよね。

最後に「原因は、思想ではない」と言い切るあたりにも納得しました。

納得したんですが、
そうした「怒りの快楽」依存症で、SNSでの「放火」などがやめられない苦しみを抱えた人たち(もちろん依存の自覚はない)からしたら、
筆者の、ちょっと彼ら彼女らを見下した(ようにみえるくらいクリアな分析)態度にイライラしちゃうだろうなあ、と思いました。
ほとんど逆恨みに近い感情なんだけど。
それが冷静な指摘であればあるほど怒りを燃え上がらせてしまう。

やっかいな感情です。

とにかく、さっさとSNSから離れられればいいのにね。
それができれば苦労しないか…。

「癒しのチャペル」辛酸なめ子

2021年08月11日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
8月10日(火)

癒しを求めたさまざまな体験記「癒しのチャペル」辛酸なめ子(白夜書房 2003年)を読了。

ここ数年来のにわかなめ子ファンのわたしですが、
18年も前の辛酸なめ子は期待以上にエグかったです。

ボランティア体験では「プロの障害者」の強靭な精神力に打ちのめされ、
ジョン・レノン・ミュージアムでは、「ジョンはヨーコの囚われの身であった」と確信、
80歳の森光子が18歳の少女を演じた舞台上の姿を描いたイラストは悪意に満ち、
正月の一般参賀では当時の天皇陛下の前立腺に思いを馳せる…。

特に、女子アナや中森明菜とファンとの込み入った関係を看破する辛酸なめ子には敬服しました。

偏狭な今の日本だと、確実に各方面に謝罪しなきゃ収まらないものもある気がします。
とりあえず、辛酸なめ子が今回の東京オリンピック開会式に関係してなくてよかった…と胸を撫で下ろしました。

「電車のおじさん」辛酸なめ子

2021年08月11日 | 日本の小説
8月8日(日)

「電車のおじさん」辛酸なめ子(小学館 2021年)を読了。

リアルな恋愛の煩わしさやリスクを避けつつ、
でも女性ホルモンの分泌は促したい、という欲望をかなえるとなれば、
もう、この主人公・玉恵(20代OL・ 男性を“好きかキモいか”で分けている )のように「妄想プラトニック推しおじさん」しかないかもしれません。

最後に出てくる「プラトニック介護」までくると、手が届かない領域です。

「音の旅人 津軽三味線・高橋竹山ものがたり」藤田博保

2021年08月07日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
7月29日(木)

「音の旅人 津軽三味線・高橋竹山ものがたり」藤田博保(金の星社 1986年)を読了。

北島三郎「風雪ながれ旅」のモデル・高橋竹山の評伝。
でも、児童向けなんです。しぶい。

幼少期のはしかが原因で失明してから、
三味線を覚え、かど付けをしながら各地をまわり、
津軽三味線の名人といわれるまでになった人の話です。

図書館で「高橋竹山」で検索したら唯一出てきた本で、
おもしろくて一気読みしてしまいました。

文章のリズムや言葉のチョイスもなつかしいかんじがします。

目の見えない人がひとりで三味線を抱えてかど付けをする光景は、
遠い昔の遠い国のことみたいですが、
ついこの前まで普通にあったんですね。
見たことなんかないのに、
知ってる場面のような気がします。

自伝もあるようなので読んでみたいです。

「ほんとうの長州力」KAMINOGE編集部

2021年08月07日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
7月26日(月)

「ほんとうの長州力」KAMINOGE編集部(辰巳出版 2020年)を読了。

雑誌「KAMINOGE」の山本さん(本当は井上さん)によるインタビュー集。というか雑談集。
2012年から2020年まで。

プロレスの話はほぼなくて、
長州の雑談力が遺憾なく発揮されている傑作でした。

ワイドショーネタ(情報源はミヤネ屋)もしっかり押さえてるし、
最初は警戒してた山本さんに対して、回を追うごとにどんどん心を開いていく姿がちょっと感動的です。

休憩を取りながらじゃないと読めないおもしろさでした。


「―― もし、長州さんが山口県知事になったら何をやりますか?
 長州 山口物産展をやるよな(キッパリ)。」(58p)


(引用者注:草間彌生の話になって)
「長州 (略)俺もあんなマルが描けたらと思うよね。ダイナミ~ック!
 ―― いきなり出ました、猪瀬直樹のモノマネ!(笑)
 長州 東京オリンピック、ダイナミ~ック!」(92p)

「小説8050」林真理子

2021年07月27日 | 日本の小説
7月22日(木)

「小説8050」林真理子(新潮社 2021年)を読了。

そのまんま、いわゆる“8050問題”の話。
うまいタイトルです。

話の展開は早いし、
語り口は読ませるし、
虚実の織り混ぜ方が巧妙でグイグイ引き付けられます、すごくおもしろかったです。

表現には、独特のデリカシーのなさがあって、
それが読み手を強く引っ張る力になっているところが魅力だ。

「バカに唾をかけろ」呉智英

2021年07月27日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
7月24日(土)

「バカに唾をかけろ」呉智英(小学館新書 2021年)を読了。

いくらバカでも唾かけないでほしいけど、
その博覧強記ぶりと一貫した正論すぎる主張には感心を通り越して笑ってしまいます。

絶対音感を持つ人は狂った音程にイライラするとよく言うけど、
それに似た感覚なのかもしれません。
ストレスたまりそうです。

かれこれ30年くらい呉智英の本を愛読していますが、
昔は爽快だったのに、最近は切なさを感じるようになりました。

たとえば、「何ともおかしい『歴史的仮名遣い』」の項のこんなところ。

「何十年も前『古事記』を読んでいて気づいた。皇祖神たちは初めから日本語を話している。ああ、皇祖神より日本語の方が先なのだと知った。日本語こそ日本文化の基礎であり核である」(41p)

言葉の誤用や無知 (←特に似非知識人の) にめちゃくちゃ厳しい呉智英ですが、
正しい思考や論説は正しい言葉の上にしか成り立たないからなんです。たぶん。

「命がけの証言」清水ともみ

2021年07月26日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
7月11日(月)

「命がけの証言」清水ともみ(ワック 2021年)を読了。

この本、ベストセラーになって欲しい。
わたしは図書館でたまたま見て、
そのタイトルにちょっと特殊な引きを感じて借りたんですが、
これは買わねばなりません。

東トルキスタンのウイグル人に対する中国共産党の非道(虐待、殺戮、臓器狩りなど)はここまでひどいんですね、読んでて震えがきます。

日本では“中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害”という表現にとどまった報道しかされず、
詳細はほとんど知られていない気がします。
民放で昼にやってる生放送のニュースで、
“この件は中国当局からの圧力があって報道できない”と発言したアナウンサーが変なタイミングで急にいなくなった(他番組に異動)というエピソードがこの作品でも紹介されていますが、
なんで日本は中国に対してこんなに気を遣うんでしょうか。謎すぎる。
彼らの犯罪行為は決して許されるものではない。
ナチスドイツ以下の非道、という表現はおおげさではないと思います。

「暴走老人 犯罪劇場」高橋ユキ

2021年07月26日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
7月6日(火)

「暴走老人 犯罪劇場」高橋ユキ(洋泉社新書 2017年)を読了。

この前読んだ春日武彦の本で話題になっていたので読んでみました。
「つけびの村」の人の本だし、と思って。

老いると円熟方向に行く人と先鋭化する人とに分かれる。
(先鋭化、というのは、もともとある猜疑心や攻撃性や被害者意識などが、という意味で)
後者のさらに一部が犯罪に走る、
そんな“暴走老人”たちが被告になったいくつもの裁判傍聴記です。

取り上げられた事件はどれも興味深いものばかりだけど、
ところどころ文章が読みにくい、わかりにくい。
慣用的な表現の誤用や文法的にどうか、という表現もあり、
誤解したまま読み進め、途中で気づいて引き返すのはストレスでした。

あと、それぞれの章の冒頭に事件当時の新聞記事が出ていて、
そこで被告人以外の人物の実名が明らかになっているのに、
なぜか本文では仮名になっていて(たとえば記事には佐藤とある人物を本文では鈴木と呼ぶ)混乱します。
小さい記事の部分なんか読まないと思ってるのかな。わからん。
仮名にするなら記事の実名部分は消しとけばいいのに。

終盤、春日武彦が登場してびっくりしました。
これ、高橋&春日の対談だったらよかったです。

「新・人間関係のルール」辛酸なめ子

2021年07月26日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
7月5日(月)

「新・人間関係のルール」辛酸なめ子(光文社新書 2021年)を読了。

たとえばあいづちの仕方、
タクシー運転手やショップ店員との会話、
同窓会や飲み会対策などなど、
ささいなことほど正解がなくて難しいですね、言われてみれば。

辛酸なめ子の何がいいって、
“実はそういうのが苦手な自分は特別な人間なのだ、もちろんいい意味で”みたいな優越感(といっていいと思う)がないところ。
繊細自慢、デリケート自慢、不器用自慢、ああいうのはちょっと、いただけない。


コミュニケーションスキルといえば、
先日終わった名古屋場所で、
北の富士の一言(忘れちゃった)に対して、
テレビの前で「ん?どういう意味?」と思った瞬間、
アナウンサーの吉田さんが「そのココロは?」と返していて、
なるほどー! と膝を打ちました、そう言えばいいのか!
それはどういう意味ですか、じゃあ角が立つもんね、さすがです。

「消費セラピー」辛酸なめ子

2021年07月25日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
7月3日(土)

「消費セラピー」辛酸なめ子(2006年 集英社文庫)を読了。

解説文でも指摘されていましたが、
「消費」は「買い物」と比べると無機質な言葉。

自分に対する突き放し方が絶妙なんですよねえ。