快読日記

日々の読書記録

「ゴミ屋敷奮闘記」村田らむ

2014年07月14日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《7/12読了 有峰書店新社 2014年刊 【ノンフィクション】 むらた・らむ》

「著者が2年間、ゴミ屋敷専門お掃除業者「孫の手」で働いて見えてきたゴミ屋敷のリアル。」(帯より)

ひところ、よく見たゴミ屋敷のニュースですが、最近ないですよね。
どうやらそれは、ゴミ屋敷が特別なものじゃなくなってきている証拠らしいです。
実はわたしも片付けが苦手で、ゴミ屋敷に住む独居老人なんていう報道を見ると、他人事とは思えない。
30年くらいしたら、自分もああなっちゃうのか、という恐怖におののきながら、怖いもの見たさで手にとってしまいました。

登場するのは20件あまりのゴミ屋敷たち。
天井まで積まれたゴミのせいで家主の生活スペースは浸食され、中には車上生活をしている人もいます。
生理用品(使用済み)やペットボトルに詰め込まれた尿、アダルトグッズなどが大量に出てきたり、詰まった便器にそのまま糞便をためこんだり、食糧を何年も放置したり、とにかくありとあらゆる人間の恥部大集合、というかんじ。
ゴミの地層を崩していくと、下の方にはきちんと生活していた形跡があったりして、ちょっと悲しい。
失恋とか超多忙とか、なんとなくにしても理由があるパターンもあるけど、多くは筆者が言うように「片づけ方を教わってこなかった」というのが正解かもしれません。
だから、反省を促し再発を防ぐためにも、清掃に家主を立ち会わせるという基本ルールは正しい。
(この「孫の手」には“ちゃんとやってるか?”と声をかけてくれるアフターサービスもある。)

さて、自宅をゴミ屋敷化してしまう人たちに共通点はあるのか?
答えは「NO」かもしれません。
彼らのほとんどは、町ですれ違ったらゴミ屋敷に住んでるとは思えない“普通の人”らしいし、特に疾患があるとか特殊な性格であるとか、そういうのはないみたいです。
筆者は、家主たちに心の中でつっこみながらも、見下したり断罪したりせず、淡々と現状をレポートするだけで、だからこそ、彼らの窮状が伝わります。
ひどいのになると、自殺まで考えるというから話は深刻です。

巻末の社長の奥さんインタビューでは、普通の便利屋さんがゴミ屋敷バスターになるきっかけや、仕事に対する思いが語られ、本書の中で一番グッとくるところでした。

「一緒に片付けながら話を聞いてあげると、その子の部屋がゴミ屋敷になった原因、その子が持っている心の闇が見えてくるんですよ。ただ、それが見えてきたって、私は精神科医ではないですからね、治してあげることはできない。
でも怪我している場所をそっとさすってあげるだけで、痛みってやわらぐでしょ? たとえ治らなくても。」(185p)

とにかく、こんな怖いことになる前に片付けなければ!

/「ゴミ屋敷奮闘記」村田らむ