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「琴葉と紅葉」20

2017年05月05日 | T.B.2019年

 強い光と共に、砂埃が舞い上がる。

 何も見えない。

「視界を奪った!」
「取り押さえろ!」

「…………」
「…………」

「……何?」

 砂埃の中に、誰もいない。

「どう云う、ことだ?」
「いったいどこへ!」

「北一族式魔術、か」

 その声は、男たちの後方から。

「なっ」
「お前、」

 離れたところに、彼と琴葉はいる。

「何!?」
「逃がすな!」

「ねえ!」

 琴葉は足を痛めて、立ち上がることが出来ない。
 坐ったまま、彼を掴む。

「逃げようよ!」

 彼は首を振る。

「騒ぎを大きくしたくない」
「そんなこと云ったって!」

 男たちが、迫ってくる。

 が

 突然、男たちの動きが止まる。

「何だ?」
「動、けない」
「どう云う、」

「足下に」

 彼が指を差す。

「これがここで使える限界だ」

「…………!!」

「これ以上、大きな術は使いたくない」

 男たちの足下に、陣が現れている。

「紋章、術!?」
「これはっ」

「紋章術のことも、俺のことも他言されると困るんだ」

「お前、西一族じゃ、」

 男たちが何か云う。

 その瞬間

 男たちは倒れる。

「…………!」

 琴葉は目を見開く。

「何……?」

 何もなかったかのように、あたりは静かになっている。
 そして
 地面に描かれた陣も、もはやない。

 そこに、男たちが倒れているだけ。

「何?」

 彼を見る。

「今のは、何?」
「さあ?」

「と云うか!」

 琴葉は声を上げる。

「どうするの!」
「どうって?」
「だって、殺、」
「殺?」
「殺したんじゃ」
「人を殺すことが怖いの?」
「あんた」
「大丈夫。殺してないよ」

 彼が云う。

「眠っているだけだ」
「眠って?」
「そう」

 彼が訊く。

「殺してほしかった?」
「殺っ」
「だから、殺してほしかった?」
「何を云うのよ!」
「だって、足を怪我させられたんだろう」
「いや。うん、これは、」

 彼が云う。

「目が覚めたら、今のことは全部忘れているよ」



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