日が高くなる。
琴葉は北一族の村の広場にやって来る。
そこには、いろんな一族があふれている。
琴葉は、適当な場所に坐る。
先ほど買った果物を食べる。
食べ終わると、しばらくそのまま動かない。
「……疲れた」
坐ったまま、目をつむる。
父親はどこにいるのだろう。
ただ歩き回っても、見つからないことは判っている。
北一族の村は、想像以上に広い。
誰か、詳しい者に声をかけるしかない。
けれども、
琴葉はそれが苦手だった。
「どう、しよっかな……」
ふと、琴葉は気付く。
少し、眠ってしまったらしい。
何かの気配を感じ、
思わず、それを振り払う。
「何!?」
「あ、あぁ、ごめん」
はっきりしない頭で、琴葉は目の前を見る。
ひとりの男。
「……誰?」
琴葉は目を細める。
男は、人のよい笑みを浮かべる。
「何かあったのかと思って」
「何もないわよ!」
「ひとり?」
「そうよ!」
「西一族がこんなところで?」
琴葉は、男をよく見る。
北一族の格好をしている。
「ひとりで遊びに来ることだってあるわよ」
「そう?」
男は、琴葉をのぞき込む。
「誰か探している?」
「……何でよ」
「雰囲気見れば判るよ」
「…………」
「北一族の村に、そうやって人捜しに来る人が多いから」
琴葉は何も云わない。
「誰を探しているの?」
「…………」
「俺、人捜しの手伝いをしているんだ」
「手伝い?」
「そう」
「でも、」
「お金はいらないよ」
男が云う。
「北一族の村での困りごとを解決したいから、さ」
「…………」
琴葉は再度、男を見る。
云う。
「父さん、なんだけど……」
「お父さん? 君の?」
琴葉は頷く。
「村の外で働いていて」
「そうか」
男は口元に手をやる。
「北は、他一族での商売も多いからね」
男は手を出す。
「西一族が多く店を出しているところへ、連れて行ってあげる」
琴葉はその手を見る。
「きっと、君のお父さんいると思うよ」
ほら、
促されて、琴葉はその手を取る。
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