アキラは、海一族を見る。
山一族とは違う、出で立ち。
顔つきも、
肌の色も、
着ているものも。
そして、
腰には短刀。
「なぜ、海一族の村に?」
海一族の彼が訊いてくる。
アキラは答えない。
早くここから動かねば。
時間がない。
時が経てば、海一族が集まるはずだ。
山に帰れなくなる。
アキラは、矢に手を伸ばす。
と、
「探しに、来たのか」
彼が云う。
「仲間の山一族を、探しに来たのか?」
「……何」
アキラは手を止める。
「カオリを、知っているのか」
海一族は頷く。
間違いなかった。
カオリは、やはり、この海一族の村に来ていたのだ。
なら、
今はどこで、どんな扱いを受けているのだろう。
アキラは口を開こうとする。
が
「おい、どうした!?」
遠くから、ほかの海一族の声。
明かりが近付いてくる。
アキラは、再度、弓を持つ。
ひとりだけならともかく、大勢を相手にすることは出来ない。
目の前の海一族は、カオリを知っている。
けれども、今はまくしかない。
「…………っ!?」
突然、海一族が手を引く。
アキラは、茂みに倒れる。
「お前っ!」
「静かにしろ!」
彼は、ひとり、道に戻る。
アキラは身体を起こし、陰から様子を見る。
「どうしたんだ?」
「大丈夫、何でもない」
「そう、か?」
「すぐに追いつく。先に行っていてくれないか」
彼がそう云うと、
ほかの海一族は首を傾げながらも、この場をあとにする。
足音が消え、
あたりは静かになる。
「どう云う、つもりだ」
戻って来た彼に、アキラは云う。
「お前、海一族なのだろう」
「カオリ、と云ったな」
海一族は、アキラが告げた名を繰り返す。
「俺は、山一族のカオリを知っている」
「カオリはどこだ」
アキラは立ち上がる。
彼が云う。
「おい、武器はなしだぞ」
彼は手を広げて見せる。
自分も武器は持たない、と云う意味なのか。
けれども、
お互い初対面の身。
しかも、
敵対する一族同士。
どこまで信用してよいのか。
おそらく、相手もそう思っているはず。
それでも、
アキラも手を広げて見せる。
「カオリはどこだ」
NEXT