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「ヨツバとカイ」2

2014年08月05日 | T.B.2000年


北一族の村は西一族の村の隣にあって、
馬車を使うと短い時間で辿り着く。

北一族の村には大きな市場があり、活気もある。
ヨツバも何度も訪れている。

目的があるわけでもなく
ただ、ぼんやりと来てしまったので
何をしようか、と辺りを見回す。

市場で買い物をして、北一族の料理を食べて
そんな風に過ごそう。

そう思っていた所で思わず目が止まった。
黒髪に黒の瞳。

「あぁ」

東一族だ。

西一族とは敵対する一族。
ここは各地から人が集まるので、東一族がいてもおかしくはない。
動きを止めたヨツバに、向こうも気付いたのだろう。
東一族もヨツバに視線を向ける。

どうするつもりなのだろう。

声を掛けてきたのは、東一族が先。
少し距離を置いた状態のまま、言う。

「君、西一族の人?」

敵対はしているが、交流が無い今、
ヨツバは東一族に対する敵対心を持ってはいない。
ただ、やはり相手にするときは気をつけなければと思う。

思いながらもヨツバは答える。

「あなた、以前もこの村に居たわよね。
 何か探し物でもしているの?」

そう。ヨツバは彼を見かけていた。
その時は敵の一族だと身を引いて距離を置いていたけれど
二度目なので、少し、慣れた。

「……俺を」

「えぇ、あなた背が高いでしょう。
 目立つからすぐ分かるわ」

「そうか、見ていたのか」

東一族の彼は、そうかそうか、と呟いた後
自分の名前を名乗る。
名乗ったのだが、聞き慣れない響きにヨツバは首をかしげる。

「そちらには無い響きなのかな」
「無いと思うわ…イ…イン?」

「『カイ』でいいよ。そう呼ばれる事が多いし」

年代も近いのだろう。
交流が無いからこそなのか、向こうもヨツバに対する警戒心が見られない。
そういうフリなのかも知れないが

それでもいいか、とヨツバは思う。


「私はヨツバ。よろしくね、カイ」


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