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「辰樹と天樹」22

2016年11月04日 | T.B.2017年

 綿花を運ぶ未央子を見つけ、辰樹は声をかける。

「未央子ぉ! 精が出るなー!!」

「ああ、声が大きい人がいるわ」

「屋敷に運ぶのか!!」
「そうだけど……、あんた、声量を落としてよ」
「ほらほら、持つって!」

 辰樹は未央子から綿花のかごを奪いとる。

「ありがとう」

「なあなあ。結婚するんだって!」
「えっ。突然そんな話!?」

 辰樹は構わず話し続ける。

「天樹がな、結婚するんだって!!」
「それは、おめでとう……って、誰だっけ、その子」
「俺も早く成人したいなー!!」
「成人したところで辰樹は変わらないわよ、きっと」
「非道いな、従姉さん!」

「結婚って云えば、そう」

 未央子は、ふと思い出す。

「ほら、私の友だちの子もね、違う装飾品を付けていたのよ」
「おお。目が悪い子か」
「うふふ」

 未央子は、口元に手をやる。

「そもそも。自分の装飾品をなくしたらしいの」
「それは、一大事!」
「と、思ったら、違う装飾品を付けていたのよ!」
「おお?」
「つまり、誰かからもらったと云うことでしょ!?」
「お、おお??」
「私が思うに、男の人からもらったのよ!」

「おお!」

 辰樹は、状況を飲み込む。

「結婚するのか!」
「きっと、天院(てんいん)様からもらったんだわ!!」
「えっ。それ誰!?」
「何でそこでつまづくのよ!」

 未央子は、辰樹を腹打ちだ。

「ああ。周りは仕合わせだらけねー」

 と、云いながらも、未央子は嬉しそうだ。

「うーん」

 辰樹は片手でお腹をさする。

「陸院が余ってるんじゃないのか」
「ん?」
「未央子には、陸院が余っているんじゃないか?」
「んん?」
「だから、未央子には陸院が」
「それ、どう云う意味よ!!」

 未央子は声を大にして云う。

「ほかにももっといるでしょうがっ!!」

「顔が真っ赤だ、未央子!」

 未央子は、辰樹の持つ綿花のかごをとる。

「もう、先に行くからね!」
「怒っているのか、未央子!」

 ふたりで、いろいろ声がでかい。

 早歩きの未央子に、辰樹は後から声をかける。。

「従姉さん従姉さん! 俺はな!」
「何よ!」
「年下がいいな!」
「どうでもいいわ!!」

 辰樹は笑う。

「未央子!」
「何!?」

「俺たち、こいばなしてるな!!」
「…………」
「こいばな!!」
「……ええ」

 未央子は、ちょっと鳥肌が立った。

 未央子は、立ち止まり空を見上げる。
 辰樹も空を見る。

「雲が多くなってきたわね」
「これから、雨の降る時期に入るし」
「そうね」
「雨で気が滅入る前に、おもしろい話が出来てよかった」
「あんたでも、気が滅入ることあるの?」

 辰樹は笑う。



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