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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」20

2015年03月17日 | 物語「夢幻章伝」

「へび呼ロイドー!!」

アヅチはホテル部屋のドアを叩く。

「その、私たち、調子乗りすぎたわ」

マツバは中に声をかける。

「「おーい」」


へび呼ロイドは引き籠もった!!


「―――アヅチにもっ、マツバにも」

扉の向こうから、へび呼ロイドの声が聞こえる。

「おいら達がっアアアアゥ、どんな気持ちでっ
 同僚を助けたいとゥウウウウ、思っているかっ」

ぐっと溜め。

「あなた方には、分からないでしょうねっ!!!」

「……へび呼」「……ロイド」

分けて呼んでみた。

「姉さん、兄さん、
 少しへび呼ロイドさんを1人?にしてあげようよ」
アマキに促され、2人は宿を後にする。
「……そうだな」
「また、後から戻ってくるから」

とぼとぼと3人は
再び東一族の市場を歩く。

「へび呼ロイド怒ってたわね」
「若干ネタっぽく聞こえたけどな」
「そうね、号泣会見という言葉が横切ったわ
 よく、分からないけれど」

うーん、とアヅチは頭をかく。

「美味しいご飯も、お宿も
 へび呼ロイドが出した条件だったけど」

「同僚を助けるって言う約束の下だったわね」

マツバも頷く。

「ちょっと、情報探してみましょうか」
「そうだな」

アマキはそんな2人を見ながら
よきかな、と頷く。

「ギャーズンとかよく分からないけど
 俺も協力するよ。
 気になる所とかあったら声かけて」

アマキの言葉に、それじゃあ、と
アヅチは一つの建物を指さす。

「あの建物は何だ?
 人が結構出入りしているけど」

「あぁ、あそこは公衆の浴場だよ。
 ウチの一族は基本的にみんなそこに入るよ」

「「……浴場」」

2人はゴクリとツバを飲む。

「浴場、って」
「つまり」
「「………温泉??」」

「あぁ、そうだよ。
 確か弱アルカリ泉、源泉掛け流しの」

「行こう!!」
「え?でもあそこは別に何も無いと思」
「違うわ!!
 人が集まるところに情報は集まるのよ!!」

南一族の村には温泉がない。

「知っているぞ、ユカタ、とか
 着るんだろ!!」
「そしてユアガリにコーヒー牛乳を飲むのよね」

「いや、それは大きな旅館での事であって
 というか、2人とも目的が」

「「だから情報収集だ(よ)!!」」

「うん、そういう言い方が
 出来ないことも……」

アマキは、へび呼ロイドの気持ちが
ちょっと分かった気がした。

「たのもー!!!」

アヅチ達はのれんをかき分ける。

「おお、いらっしゃい??!」

番台にいた東一族は、驚きを隠せない。
そこで、アマキがすすすっと割って入る。

「タツキ、この人達
 温泉に入った事が無いらしく」
「なるほど分かった!!」

基本的にこの浴場は
一族のみの専用施設らしい。

「ふつう、観光客は宿の風呂に入るんだけどな
 でも、その心意気、気に入ったぜ!!!」

タツキと呼ばれた東一族の少年は
ぐっと親指を立てる。

これ、東一族で流行っているのか!!?

「入るがいい、旅人達よ!!」

こっちが男湯、こっちが女湯ね、と
番台でそれぞれをタツキが案内する。

「でも、基本的には一族専用の風呂だから
 もう少し待ってくれ。
 人が少なくなったら案内するよ」
「ありがとう、助かるぜ」
「じゃあ私たちは売店でも見てこようかしら」

アヅチとマツバが席を外した後
アマキはタツキに声をかける。

「悪いな、無理をさせて」
「まぁ、少し手間はかかるけどアマキの頼みなら」

久々に楽しめるな、と
タツキは良い笑顔を見せる。

「男女の風呂入替に気付かず、湯船でばったり、とか
 男湯女湯間で会話したり、
 湯上がりのいつもと違う下ろした髪にどきっとか
 ポロリもあるよ―――そういう事だろう!!」

「あ……うん」

そうじゃないけど、もう、それでいいか、と
アマキはちょっと、どうでもよくなった。



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