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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」91

2014年08月05日 | 物語「水辺ノ夢」

杏子は朝食を並べる。
野菜中心の料理に
見よう見まねで作った西一族の料理が一品。

圭と杏子と、そして湶の3人分。

「いただきます」

湶が一緒に住み始めて数日。

夕食は湶が気を使い
別に食べる時はあるが
朝食は3人で揃って食べる。

「なんだ、こっちの料理はあまりって言ってたけど、
 上手に出来てるよ」

西一族の料理を食べながら
湶が言う。

「ありがとう。
 変じゃないなら良かったわ」

「圭がうまく教えたのかな」

なぁ、と湶は圭に言う。

「俺は、何もしてないよ」

圭は湶を見ずに答える。

素っ気ない態度は相変わらずで、
仲良く、と言うには程遠いが
同じテーブルについて
会話に答える様にはなっている。

圭自身も、受け入れるしか、ない
と諦めている部分がある。

「俺、今日は出かけてくるな」

湶が言う。

圭はふぅん、と言ったきりだったので
杏子がかわりに問いかける。

「病院、に?」

いいや、と湶は首を降る。

「狩りに参加しろって」

その言葉に杏子は思わず圭を見る。
湶が、狩りに。

圭は一瞬動きを止めるが
まるで聞かなかったように食事を続ける。

「初めての狩りだから
 どうなるか分からないけどな」

あんまり、自信無いんだ、と
湶は笑う。

圭はちらり、と湶を見る。
圭はこの兄の事をよく知らない。
自分と違って体に問題は無さそうだ。
でも狩りの腕前はどうなのだろう。

比べても、仕方ない、のに。

湶が出掛けた後
圭も食器を片付ける。

「圭、今日は家にいる??」

杏子の言葉に圭は振り向く。

「今日は、病院に」

祖母の所だ。

「……そう。分かった」

以前から定期的に行っている。
もともと予定していた事。だけど。
圭は、杏子を避けてしまったような気分になる。

いつも通り話しているはず、なのに
あれ以来どこか気まずい、と
圭は思う。



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