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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」49

2014年02月11日 | 物語「水辺ノ夢」

岩陰に隠れたまま、4人は獲物を待つ。
獲物が現れたら岩陰から飛び道具で弱らせてから
近寄って止めを刺す。

今回の狩りの手段はこうだ。

「岩陰から手負いを負わせるのは私たちね」

圭と沢子はそれぞれにボウガンを構える。
広司と透は止めを刺す係だ。大きな太刀を持っている。

「二人が止めを刺しに行ったら獲物をよく見ていてね。
 向こうも必至だから、意図しない動きをするの。
 危なくなったら援護に行って」

「おいおい、俺たちが取り逃がすことは無いから安心して見てろって。
 この班には広司もいるしな!!」

広司はちらりと圭を見て言う。

「こちらが怖気づいたら相手もそれを察する。
 一番弱い奴にかかってくるぞ」

透と沢子は緊張している圭をよく気遣っている。
広司も、口調はきついが一つ間違うと命取りだから、か
一応は声を掛けてくる。

失敗はしないように。
せめて、皆の足を引っ張らないようにしなくては。

圭は皆の言葉に頷く。

獲物を待ち、わずかな時間が過ぎる。
「ねぇ、圭。東の人ってどんな感じ?」
もてあましたのか、沢子が声を潜めて聞いてくる。
「え?」
「あぁ、それは俺も気になってた」
「どんな、って」

杏子は今頃、圭の家で縫い物をして過ごしているのだろう。
西一族の村で、ろくに外も出歩けず、話す相手は圭しかいない。

気も滅入るだろうに。
話し相手が他にもいれば。

「沢子、あのさ良ければ……」

ふと、圭は言葉を止める。
皆の気配が変わった、と辺りを見回す。
透も沢子も、広司も集中している。
獲物が近くにいる。皆は感覚でそれがわかるのだと、圭は唇をかむ。

「大きい、な」

ぽつり、と
透が呟くと、沢のほとりから大きなイノシシが現れる。


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