「あら。お出かけ?」
隣人に声をかけられ、夫婦は顔を上げる。
「ああ、こんにちは」
隣人が云う。
「たくさんの荷物じゃない?」
「ええ」
妻が頷く。
「しばらく、家を空けることになるかと」
「何かあったの?」
「私の母が、体調を崩したとかで・・・」
「それは大変ねぇ!」
白色系の髪の夫婦に、黒髪の隣人は豆を差し出す。
「ほら。とれたてだから!」
隣人が云う。
「うちの豆を食べたら、きっと元気になるわ!」
「まあ、こんなにたくさん・・・」
「持っていって!」
「ありがとう」
「何事もなく、帰ってこられるといいわね」
隣人は、妻の肩を叩く。
「申し訳ないんですが・・・」
横から、夫が声をかける。
「うちの畑」
「ええ、みんなで面倒みておくわ!」
隣人が云う。
「お互い大変よねぇ。うちは、娘が子どもを生むのよ!」
「あぁ。そうでしたか」
「3人目!」
「ああ・・・」
「本当、お互い大変よねぇ!」
隣人は笑いながら手を振り、この場を去る。
夫婦は、隣人に頭を下げる。
「さあ。行こうか」
隣人の姿が見えなくなると、夫は荷物を持つ。
もうすぐ、西一族の村へ向かう馬車が出る。
「久しぶりね」
妻は、そう云うと夫を見る。
「大丈夫かしら」
「お義母さんのこと?」
「それもだけど・・・」
「先に行ったあいつなら、うまくやっているさ」
「ええ」
夫婦は、馬車に乗り込む。
広いスペースがあるが、乗っているのは数人。
馬車はゆっくりと動き出す。
「お義母さんのことは心配だけど、それ以外のことは大丈夫だろ」
夫が云う。
「補佐役、・・・弟が、うまいことやってくれているはずだ」
「そうね」
妻が云う。
「本当に久しぶりだわ。・・・圭」
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