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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」150

2016年10月14日 | 物語「水辺ノ夢」

杏子は、窓から空を見る。

晴れ。

ずいぶんと日差しが強い気がするが、病室は快適。

杏子の横で、子どもはすやすやと眠っている。
杏子は子どもを見る。
ゆっくりと頭をなでる。

その髪色は

西一族ではありえない、黒髪。

杏子と同じ、東一族の黒髪。

けれども、

そのことを、高子も沢子も何も云わない。
いつだったか入ってきた医者の見習いは、目を細めた。

そして、巧は、

「お前に似たんだな」

そう云った。

髪色のことなのか、顔つきのことなのか。
どちらのことを云ったのかは、判らない。

巧は杏子に云う。

「狩りを教えてもらえ」
「狩りを?」
「動物を友とする東には理解出来んだろうが、狩りをさせるんだ」
「でも、この子は、」
「西に男女は関係ない」
「・・・ええ」
「狩りをさせて、地位をとれ」

杏子は巧を見る。

巧は、狩りの事故で片腕がない。
つまり
巧が狩りを教えることは出来ないのだ。

「狩りの指導をしてくれるやつならいる」
「心配だわ」
「何が」
「何って、」

杏子は、巧との会話を思い出す。

もう一度、外を見る。
誰もいない。

今日は確か、巧が必要なものを持ってくる、と云っていた。

沢子も来るだろう。
子どもが生まれてから、沢子は毎日顔を出してくれている。

そろそろ、ふたりとも来るかもしれない。



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