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TOBAの、イラストと物語な毎日
現在はオリジナル作品「水辺ノ夢」連載中

「水辺ノ夢」151

2016年10月18日 | 物語「水辺ノ夢」

「へぇ」

病院の受付には医師見習いの男がいる。
圭の姿を見つけると
どこか楽しそうに言う。

「帰って来てたんだ、いつ?」
「さっき着いたばかりです」
「ふぅん」

「南一族の村の生活はどうだった」

「農業の一族だから
 また雰囲気が違って」

「居心地は良かっただろう?
 せっかく西一族の村を離れられたのに
 わざわざ戻ってくるとはね」

この村の誰もが
圭の村での立場を知っている。

「お前ってさ、」

医師見習いの男は続ける。

「タイミングが悪いというか、
 なんというか。
 そういう所、感心する」

「どういう?」

だが、忙しいのか、
面会簿に圭の名前を書き込むと
下を向いて書類仕事を始める。

「あの」

「2階の角部屋」

圭が何かを言う前に
病室を告げると
さぁ行けと言わんばかりに手を振る。

あ、と
思いついたように医師見習いの男は
圭の背中に声を掛ける。

「病室では騒がないでくれよ」

階段を上り二階の角部屋に辿り着く。
以前、祖母が居た部屋だ。
懐かしい。

高子は診察中だろうか、
と、そう思いながらドアを軽く叩く。

そこで、
何か変だと思う。

圭は杏子の居場所を知るだろう
高子を尋ねてきたつもりだった。

だが、医師見習いは
何か尋ねる前に
病室を告げた。

医師が診察している部屋に
わざわざ他人を通すだろうか。

そうじゃない、

医師見習いには
圭がこの部屋に行く事が
当たり前の理由がある。

「どうぞ」

「………っ!!」

まさかの事態に
圭は動揺する。

それでも、引き返すわけにはいかない。

久しぶりに聞く懐かしい声に
圭は少し躊躇いながらドアノブを回す。


「杏子」


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