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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」82

2015年12月01日 | 物語「夢幻章伝」

「どうする!!」
「どっちの意見を取るっていうの?」

へび呼ロイドの真の姿なんて
どうでもいいアヅチとマツバは
行く先をへび呼ロイドに任せた。

「……え?
 あああ、あのね」

ふと、地面の方を見つめていたへび呼ロイドだが

「分かった分かった!!」

仕方ないな、君たち、
という感じで胸を張る。

「西でご飯を食べたいというアヅチに
 それぐらいなら北に戻るというマツバ。
 二人の意見を尊重して
 どちらにも納得のいくお昼にしようじゃないか」

「そんな手段があるか?」
「携帯食料とか嫌よ」

ノンノン。

へび呼ロイドが変に気取っている。

「じゃ~ん。
 これをご覧なさいな!!」

すちゃっと取り出されたのは
ある馬車のチケット。

「「こ、これは!!」」

おののく、アヅチとマツバ。

「高級馬車、9つ星、の乗車チケットじゃない!!」
「高額にも関わらず人気でチケットが中々取れないという
 あの伝説の馬車。
 しかも、最後尾のスィート指定席だと!!」

「西一族の湖畔沿いの道を経由するものの
 一度も止まらず南一族の村へ向かう特急だから
 西一族の村には止まらないし」

マツバの問題解決。

「全席高級食材を使った料理が
 ふんだんに振る舞われるからご飯の面も解決!!」

アヅチも空腹問題も。

何これ、へび呼ロイド
太っ腹なサービスすぎじゃない。

「二人には本当に感謝しているんだ。
 すごくお世話になったからね。
 ほら、もうすぐ馬車が通る時間だよ」

「「…………」」

むむっと、顔を見合わせる
アヅチとマツバ。

「おい、へび呼ロイド」
「え?
 あぁ、日当も払うっていう約束だったね。
 それは後日きちんと指定した口座に払うよ」
「ねぇ、へび呼ロイド」
「大丈夫だって、念書が必要なら
 おいら達きちんと書くよ。
 印鑑は無いけど、拇印なら押せるから」

「「へび呼ロイド!!!」」

アヅチとマツバの
強めの声が辺りに響く。

「今後ろに隠した
 その紙を見せろ」
「え?」
「私たちには気づかれないとでも思った」
「あ、うう」

はい、と
へび呼ロイドはおずおずと
その小さなメモ紙を差し出す。

それは、先程
みんなが見逃してしまった一枚の紙。

『旅に出ます、探さないでくださいby同僚』

「探さないで、だって?」
「どういう事?」

うっ、と急に声が小さくなる
へび呼ロイド。

「それは、おいら達にも分からない」

ぶわっと、急に目に光る物が。

「おおおお、おいら達の事
 嫌いに、ぐずっ、なっちゃったのかも。
 しばらくギャーズンの元に居て
 そっちが良かったのにってなったの、ぐずっ、かも、うう」

うわぁああああああん、と遂に泣き出す
へび呼ロイド。

「折角、助けたのにいいうわぁあああ」

「へび呼ロイドの事
 嫌いになったとは限らないじゃない」
「何か事情があるのかもしれないしな」

「そう信じたいよ。
 大丈夫、話し合えば、きっと分かり合えるよ。
 あははは、ごめん。おいら達としたことが
 取り乱しちゃって」

「おい、何で俺たちに頼らない」
「そうよ、それなのに
 無理やり村に返そうとして
 へび呼ロイドこそ
 私たちの事、嫌いになったの?」

「違うよ!!」

ふるふるとへび呼ロイドが首をキコキコ振る。

「おいら達、旅を甘く見すぎていたんだ。
 さっきの戦いもだけど
 アヅチは危うく窒息するところだったし、
 マツバにも危険な目に」

まさかの展開
ギャーズンによる
アヅチの丸呑み。

アヅチはちょっと思い出し寒気。

「もうこれ以上は迷惑をかけられないよ。
 おいら達の問題だ。おいら達で解決するよ」

その時、馬車の蹄の音が響き始める。
高級馬車9つ星が周回ルートを回って来たのだ。

うん、
うむ、と
頷き合うアヅチ&マツバ。

「俺、東一族の懐石料理って食べてないんだよな」
「そうね、
 温泉の無料入場券ももらっているし
 使わない手はないわね」

「……2人とも?」

「行こうぜ、へび呼ロイド」
「同僚達、何処へ行ったのかしら。
 早く追いかけた方が良いわよね」

「2人とも~!!!」

何故か、背景に咲き乱れる花。
降り注ぐ光。
照らし出される2人と一匹。

突然のスローモーション。

「と、それはともかく!!!」

空気を打ち砕くアヅチ。

「えぇえええええ?」
「何よ、色々台無しね」

「まずは、南一族の村に帰ろう。
 また旅に出る前に
 俺には解決しなくてはいけないことが」

馬車に向かい歩き始めるアヅチ。
それに続くマツバとへび呼ロイド。

「南一族は今、豆の収穫時期で」

うんうん。

「俺は、その作業をほっぽり出して
 旅に出ていた訳だ」

そう言えば、そんな会話もあったな。

「それを、俺の姉貴がマジで怒っているらしい」

ごくり、と
今までのどの瞬間よりも
真剣な顔を浮かべるアヅチ。

「超怖い、ウチの姉貴に
 まずは謝りに帰らなくては!!!!」


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