蓬莱の島通信ブログ別館

「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

人民解放軍が日本方面への奇襲攻撃計画をすでに準備中(下ー1):習近平はすでに対米開戦も決めている?!

2015年10月05日 | 20110311東北関東大震災と政治
(写真:尖閣列島への中国軍および関係組織の侵犯状況:過去の大規模な近代戦の例から見ると、作戦の準備期間には急激に偵察や通信量が増加し、作戦の直前にはゼロになる。グラフから見れば、沖縄方面での人民解放軍の準備は終息に向かいつつあり、作戦実施が迫っていることを窺わせる。)
1.人民解放軍が堂々とアメリカ軍に挑戦状
 習近平指導下の人民解放軍は、傲慢と妄想を現実にすり替えていた旧日本帝国の職業軍人やナチスドイツのナチス党幹部と同じように已に正気を失っているふしがみられる。
 以下は、日本でも話題になっているが、アメリカのブログで広く閲覧されている人民解放軍が発表した「対米対日開戦シミュレーション3Dアニメーション」である。

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This Is The Insane Video China Just Put Out Showing It Attacking The U.S.
Watch This Absolutely Bonkers Chinese Video of a Simulated Attack on the U.S. "A Full View of Chinese Military Strength" is an amazing watch.
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 アメリカのサイトでの紹介の内容は出ている兵器と効果などの分析で、兵器に詳しい論者が書いていると思われる。政治的な分析はしていない。とは言え、googleで「china attack」を入れると、軍事、サイバー関係でかなりの記事が出ており、アメリカで注目が集まっているのは事実と言えよう。
 china attack
 日本では宮崎駿のように「中国と戦争しても勝てない」云々という情けない話ししかできない市民も多いが、民主社会の市民として恥を知るべきだろう。「自由、平等、博愛」という民主社会を守り、それを普及する義務が民主社会の市民には存在する。そのための「日本国憲法」である。
 人民解放軍が日本方面への奇襲攻撃計画をすでに準備中(中):「集団安保」は日本の国土での戦争の問題
 また、いくらネットが自由な空間とは言え、他国への軍事攻撃動画を堂々とオンラインメディア公式サイト(騰訊視頻:ドラマや映画の著作権違反コンテンツを中国語字幕で見せている人気サイト、日本ファンやアメリカファンが増えるので著作権違反などに目くじらを立てず、もっと見てもらったほうがよい。皆さんは、このソフトはmalwareの典型なので絶対に使わないように。)で青少年に見せる異常な神経は理解できない。米軍は今も、イラクやアフガニスタンなど中近東地域で作戦中で、多数の戦死者も出ており、また、実戦を経験している予備軍人なども非常に多いので、こうした画像を見て、中国・韓国が南京事件や従軍慰安婦問題で反日キャンペーンをとっても「日本が中国に攻撃されても関係ない」という反応になるのかどうか、自国の指導者の習近平の訪米前にこんなものを堂々と流しているその無神経さ、国際観の欠如には驚きを禁じ得ない。
 そして、実際に中国艦隊はアメリカに対して威嚇、挑発行動を習近平訪米前に堂々と実施している。
 アラスカ沖のアメリカ領海を中国艦隊がパレード 「アメリカをなめてるのか」と米海軍関係者は激怒

 台湾のニュースでは台湾の来年の総統選挙のために親中国派メディアが、9月末「習近平訪米大成功」というキャンペーンをはっていたが、週末から今週の台風でニュースは消えた。
 国民党(親中派)系『聯合報』49項成果 習近平訪美豐收
 先のような、バカげた「挑発」あるいは「威嚇」が功を奏したのか、実際は、以下のようにかなり悲惨な結果に終わったと見たほうがよいだろう。

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米中「新」冷戦の幕開けか!?首脳会談で浮き彫りになった習近平の「空回り」、アメリカの「冷淡」
アメリカから邪険に扱われた習近平主席
今回の習近平主席の訪米を一言で表せば、「中国の熱気、アメリカの冷気」である。
習近平政権は今回の訪米を、今年の中国外交最大のイベントと位置づけ、それこそ国を挙げて推進してきた。
安倍晋三政権が安保関連法案を強行採決した時、本来なら中国は激しく反発しそうなものなのに、なぜかおとなしかった。それは、すでに習近平訪米3日前から、中国国内の報道が、ほとんど習近平主席の訪米一色になっていたからである。
これに対し、アメリカはと言えば、トップニュースはいつも、同時期に訪米したローマ法王の一挙手一投足である。習近平主席は、俗な言い方をすれば、邪険に扱われていた。
象徴的だったのは、25日昼に開かれたオバマ大統領と習近平主席の共同記者会見である。
アメリカ人の女性記者が、「その場を借りて」オバマ大統領に、危機に陥ったアメリカの来年度予算について問い質し、オバマ大統領が長々と答えるという場面があったのである。その間、オバマ大統領の向かって左側に立った習近平主席は、「なんのこっちゃ?」という表情で、イヤホンを耳に当てて興味なさげに聞いていた。
ちなみに中国中央テレビはこの56分間の会見を生中継せず、会見終了から4時間半を経て、12分間のダイジェスト版を放送した。しかも、中国人記者二人のヤラセ質問(あらかじめ政府に指示された質問をして、習近平主席が用意した「模範回答」を読み上げる)の部分を強調して放映したのだった。
6回目の会談で訪れた転機
記者会見の冒頭でオバマ大統領は、「習近平主席と初めて会ったのは、2012年(2月)に国家副主席として訪米した際で、今回が6回目の会談だった」と述べた。思えばその6回中、メインは2回だった。
1回目は、2013年6月にオバマ大統領が、国家主席に就任して3ヵ月の習近平主席を、カリフォルニア州の農園に1泊2日で招待し、8時間以上にわたる異例の米中首脳会談を行った時だった。
この首脳会談のしばらく後、米中双方の政府関係者に聞くと、次のように述べていた。
中国:「アメリカ側の待遇は、最高レベルのもので、オバマ大統領は何度も、『アジアのことは、これから中国と共に考えていきたい』と述べた。習近平主席は、『新型の大国関係』を提唱した。これは来るべき『G2時代』(米中が世界を主導する時代)を見越した対等な関係のことだ」
アメリカ:「今回の米中首脳会談の目的は、新しい中国の指導者である習近平という人物を見極めることにあった。習近平主席は自信がないのか、手元に置かれたペーパーを棒読みするばかりで、オバマ大統領が予期せぬことを話題にしたり質問したりすると、左右を見て随行の楊潔虎国務委員らに答えさせていた」
2回目は、昨年11月の北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)に、オバマ大統領が訪中した際で、この時も1泊2日で計8時間にわたる米中首脳会談となった。この時は、習近平主席のホームグラウンドだけあって、中南海の中にある、習近平主席が誰よりも尊敬する毛沢東主席の住居跡にまで、オバマ大統領を案内した。
この首脳会談の後、やはり米中の政府関係者に聞いたら、次のように述べていた。
中国:「オバマ大統領は、『これからアジアのことは、中国に任せていきたい』とまで言った。習近平外交の偉大なる勝利だった」
アメリカ:「米中首脳会談だけでなくAPEC全体を見ていて、中国の台頭はもはやどうしようもないと悟った。台頭する中国をいかに利用してアメリカの国益を向上させていくかを考えた」
アメリカにとって中国は「味方」から「敵」に変わりつつある
ここで見えてくる図式はこうだ。
2013年の米中首脳会談は「中<米」で、2014年の会談は、「中≒米」くらいまで来た。そこで中国としては、今年の首脳会談で「中=米」まで持っていきたかったのだろう。
だからこそワシントンに先駆けてシアトルへ行き、ボーイングの旅客機を300機も無理して買い、中国のIT産業のトップをズラリ引き連れて、「米中IT企業家会談」をセットしたのだ(もっともグーグルとツイッターは、「中国国内で禁止されているのに行っても意味がない」として欠席したが)。
だが、習近平主席が満を持してシアトルからワシントンDCに乗り込んでみると、本人も思いもよらなかったであろう「冷遇」が待ち受けていたのである。
24日のホワイトハウスでの歓迎晩餐会を終えて出てきた習近平主席は、「国賓待遇」とは思えないほどの苦虫を噛み潰したような表情をしていた。どこかで見た表情だと思ったら、昨年11月に初めて安倍首相と握手した時の様子と似ていた。
今回、オバマ政権が習近平主席を冷遇したのは、主に二つの理由によるものだろう。一つは、サイバーテロと南シナ海の埋め立て問題によって、アメリカにとって中国が「味方」から「敵」に変わりつつあることだ。アメリカはすでに大統領選モードに入っているため、オバマ大統領としては、弱腰を見せるわけにはいかない。
もう一つは、中国経済の失速である。独立まもない18世紀末から現在に至るまで、アメリカにとって中国は、常に「自国に富をもたらす黄金の市場」であり続けた。
ところが昨今の中国経済の停滞によって、それほど特別な魅力がなくなってしまったのである。その証拠に、今年上半期のアメリカら中国への直接投資は、前年同期比で、37.6%も減少している。
オバマ大統領は、かつて胡錦濤主席に言ったように、今回も「アメリカは、平和的に繁栄し台頭する中国を歓迎する」と述べた。つまり「平和的でない」、もしくは「繁栄しない」中国は歓迎しないのである。
以下、今回の米中首脳会談の「成果」を、個々の問題別に見ていこう。
【米中投資協定(BIT)】
米中は当初、今回の習近平主席訪米の目玉に、BITの締結を持ってこようとしていたが、どうにもまとまらない。そこで、目標を、「今回の米中首脳会談での締結」から「オバマ大統領の任期中の締結」に後退させた。
米中のBIT交渉は、2008年以降、21回も行われている。焦点は、双方のネガティブリストとアメリカの最先端技術への投資問題である。
中国政府は、アメリカとのBIT締結を、2001年のWTO(世界貿易機関)加盟に次ぐ「第二の開国」と捉えている。それはBITが、「相手国の企業を国内企業と同等とみなす」ことを基本原則としているからだ。そこで双方がネガティブリストを出し合い、「この分野だけは勘弁してほしい」という交渉をやってきたわけだ。
中国にとっては、BITを結ぶことにより、国有企業改革に大きな影響が出てくる。現在の中国市場の状況を大まかに言えば、優遇されている度合いが、「外資系企業<中国の民営企業<中国の国有企業」であるが、BITを締結することによって、「外資系企業=中国の民営企業=中国の国有企業」としなければならなくなるのだ。
習近平執行部は8月24日に、国有企業改革の基本方針を定めた。それによると、国有企業の市場の寡占化と、中国共産党の指導強化が2大トピックとなっている。これはまさに、BITの精神と相反するものだ。
また、銀行業を外資系に開放すれば、中国の金融が、政府のコントロール下に置けなくなるという懸念も、中国側にはある。
一方のアメリカ側は、中国企業を一般の企業ではなくて、中国共産党の出先機関のように捉えているため、最先端技術の分野への中国企業の投資を認めたら、軍事的に利用されてしまうという懸念を持っている。
だがそうは言っても、アメリカは雇用に直結する中国からの投資は増やしたい。海外からアメリカへの投資額は、リーマンショックのあった2008年が3,063億ドルだが、2014年は860億ドルにまで減っている。そんな中、中国からアメリカへの投資は突出していて、2012年から2015年上半期までの投資額は、164億9,800万ドルに上る。
この額は、すでに同時期のアメリカから中国への投資額98億ドルを上回っているのである。しかも、2014年だけで120億ドルも投資し、92社のアメリカ企業を買収している。まさに、中国企業のアメリカへの「爆投資」は、とどまるところを知らない勢いだ。
米中は、9月9日から11日、ワシントンで第21回BIT交渉を行い、新たな双方のネガティブリストについて議論を行ったが、最終結論には至らなかった。どのみち、上院の3分の2の賛成が得られないと批准には至らないので、まだ当分は交渉が続くと見てよいだろう。
【サイバーテロ問題】
この問題に関しては、25日の共同記者会見で、アメリカ人記者が真っ先に質問した。するとオバマ大統領は、チラッと右隣に立つ習近平主席の方を見やってから、厳しい表情でこう述べた。
「その問題は、習近平主席と厳しい議論をした。少なくとも、米中両政府は今後、あらゆるサイバーテロに共同で対抗していく。これが本日の首脳会談の進展だ。だが本当に進展があるかは、今後の状況を見ていかねばならない」
すると、習近平主席が言い添えた。
「中国政府もサイバーテロには反対する。この点に関して、オバマ大統領と多く意見交換して、新たな合意に至った。中国のインターネット愛好者は、6億人以上もいて、世界最大だ。インターネット空間は、多くの機会に溢れており、アメリカとの協力関係を深めていきたい」
こうした応酬を見る限り、やはりオバマ大統領は習近平主席に対して、かなり激しい口調でサイバーテロへの非難を行ったものと思われる。何せ7月9日、アメリカ政府のコンピュータがサイバーテロに遭い、2000万人に上る個人情報が流出していて、アメリカはこれを中国政府が関与したサイバーテロと認識しているのだ。
結局、米中は今後、年に2回のサイバーテロ防止のための政府間協議を行うことで合意した。
【南シナ海の埋め立て問題】
これは習近平主席が、にべもなく突っぱねた。
「南シナ海は古代から中国の領海であり、どの国にも内政干渉はさせない。ただし、周辺諸国との平和的話し合いを続けること、及び国際法に基づいた自由な航行については保証する」
オバマ大統領は、軍や共和党強硬派のことも考えて、首脳会談では激しい応酬となったのだろうが、記者会見では南シナ海問題について、深くは言及しなかった。
ニュアンスから読み取る限り、オバマ大統領は、「サイバーテロ」で押して「南シナ海」で引いた印象である。習近平主席からすれば、その逆だ。中国政府はサイバーテロ自体を認めていないのだから、この辺りは、中国の外交的勝利と言えるだろう。
だが、その結果、日本にとっては大変由々しきことになってきた。先週のこのコラムでも書いたが、安倍政権があれほど苦労して安保法制を成立させたのは、東シナ海と南シナ海における中国の軍事的脅威に、日米共同で対抗するためである。ところが南シナ海の問題に対して、オバマ政権は何とも腰砕けなのである。
このまま行くと、「南シナ海はアメリカ軍の代わりに自衛隊が守ってくれ」と言い出しかねない。近未来の南シナ海における日中緊張を予感させる米中首脳会談だった。
【中国経済と金融】
中国経済の昨今の減速と、8月11日から13日にかけて中国が人民元の対ドルレートを突然4.5%切り下げた問題を、アメリカ人記者が指摘した。すると、習近平主席は、手元の紙をめくりながら反論した。
「中国経済はいまや、『新常態』(新たな正常な状態)に入ったのだ。今年上半期も7%成長を維持しており、通年でも同レベルで進む予定だ。それでもGDPはアメリカより小さいので、今後の発展の余地はまだある。
2005年の人民元改革以来、人民元はドルに対して35%も上がっている。8月にレートの中間値を下げたが、人民元とドルの為替は依然として安定している。
IMFがSDR(特別引き出し権)を人民元に与えることに賛成することと、2010年のIMFの合意事項(中国の議決権を6位から3位に引き上げる決定)を、アメリカ政府はできるだけ早く批准すると、オバマ大統領は述べた」
このIMFにおけるSDR問題でオバマ大統領の賛意を引き出したことは、今回の習近平主席訪米の最大の成果ではなかろうか。
現在、SDRを取得しているのは、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4つの通貨だけで、今年年末に開かれるIMF総務会で、人民元が、SDRを取得する5番目の通貨になることが中国の悲願だ。すでにラガルドIMF専務理事も賛意を表明しており、残るはアメリカの同意となっていた。
【北朝鮮問題】
全般的にイライラした空気の米中首脳会談だったが、両首脳が共に「一片の陽光」のような雰囲気を見せたのが、イランと北朝鮮の核開発への対策について言及した時だった。
イランの核問題に関しては7月14日、関係各国が包括的合意に達し、7月20日には国連安保理がイランへの経済制裁解除を決めた。これを「米中共同外交の賜」と両首脳が評価したのだ。
一方の北朝鮮の核開発に関しても、「朝鮮半島の非核化のために米中双方が協力していくことで一致した」と、両首脳は会見で述べた。加えて習近平主席は、「一刻も早く北朝鮮が6ヵ国協議に復帰することを望む」と言い添えた。
これは、10月10日に朝鮮労働党創建70周年を迎える北朝鮮に対して、「絶対に核実験をやるなよ」と牽制する意味がある。同時に、もし核実験を強行した場合、もしくは長距離弾道ミサイルの実験を行った場合、米中が国連安保理を使って北朝鮮にどのような制裁を再度行うかというところまで詰めたのではなかろうか。そしてその先にあるのは、「金正恩政権転覆」という米中共同作業だろう。
他にも、100万人のアメリカの若者を中国に送る交流とか、2016年を米中観光年とすることなどで合意した。
すべては「皇帝気取りの統治」が招いたツケ
冒頭でも述べたように、全体的に「中国の熱気、アメリカの冷気」を感じさせるアンバランスな米中首脳会談だった。2年前に訪米して以来、習近平主席が唱え続けている「新たな大国関係」も、すっかり空回りしてしまった。
だが考えてみれば、経済の失速も、サイバーテロや南シナ海の埋め立ても、習近平政権の「身から出た錆」だ。いずれも胡錦濤政権時代にはなかったことで、習近平主席の「皇帝気取り」の統治が招いているのである。
9月27日の「中秋節」(中秋の名月)に、少なからぬ中国人から「微信」(WeChat)の挨拶が届いた。その中で、次のように書いてきた知人がいた。
〈 今回のアメリカ訪問で、あまりの冷遇ぶりに一番驚いたのは、当の習近平本人ではないか。主席の帰国後に、一体誰が責任を取って「腐敗分子」として粛清されるのかが、早くも話題になっている。 〉
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 オバマは退任が迫り、次の選挙の関係でほとんど民主党候補に有利にはならない習近平にかまうどころではなく、中国から日程が重ならないようにとの要請がくり返しあったにもかかわらず、同じ時期にローマ教皇の訪米を重ねることで、習近平と近いという今までのオバマや民主党の印象を消し、むしろ次の選挙に大きなプラスになるローマ教皇訪米に政府の全力を注いだとも言える。
 日本にとっては、この点を見逃してはならない。今後の外交選択肢としてカトリック教会や新教系教会などを視野に入れる必要がある。「日本は政教分離だから関係ない」などと言っていられる状態ではもうない。

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習近平主席とローマ法王との同時訪米
政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司
 今年9月22日から25日までの習近平国家主席訪米は中国の威光を内外に知らしめる絶好の機会だった。中国共産党にしてみれば、同月3日の「抗日戦勝70周年」(「9・3大閲兵」)式典に続く、大イベントである。
 太平洋を挟んで、東側には、下り坂にあるとはいえ未だ世界最強の米国、西側には、昇竜の如く現れた新興国の中国、その両首脳会談である。当然、世界の耳目を集めるはずだった。
 ところが、習近平主席訪米はローマ教皇フランシスコ(以下、法王、あるいは、ローマ法王)訪米と重なった。中国共産党は、習主席訪米時期とローマ法王訪米時期が重ならないように、再三、米国側へ求めていた。ローマ法王の訪米にスポットライトが当たり、習主席のそれが霞んでしまう恐れがあったからだろう。だが、それが現実になっている。
 オバマ政権は、ローマ法王の訪米を優先した。アルゼンチン・ブエノスアイレス出身(南米初)のローマ法王が、米国とキューバの国交回復の仲裁役を果たしたからである。任期が残り少ないオバマ大統領としては、54年ぶりのキューバとの国交回復で“レガシー”作りを図った。法王のお陰で、それが実現したのである。
 そこで、オバマ政権は、9月22日からのローマ法王訪米を歓迎した。大統領だけでなく、ミッシェル夫人ら家族、それにバイデン副大統領もワシントン郊外アンドルーズ空軍基地で出迎えている。異例の歓待ぶりだろう。翌23日、オバマ大統領はローマ法王と会談した。翌24日、法王は米連邦議会での演説を行っている。だが、習近平にはその機会が与えられなかった。
 習近平は9月23日、「アリババ」の馬雲(ジャック・マー)や「百度」の李彦宏(ロビン・リー)らを引き連れてシアトル入りし、米財界人と会談している。そこには「Facebook」のマーク・ザッカーバーグなどの姿もあった。習近平としては米国からの投資を呼びかけるつもりだった。現在、深刻な「キャピタル・フライト」が起きているからである。その中で習近平は、米ボーイング社から旅客機300機(約4.5兆円相当)を購入すると発表した。
 同25日、ようやくオバマ・習近平会談が行われた。事前に①中国軍のサイバー攻撃問題、②東シナ海・南シナ海での中国軍膨張問題、③中国国内の人権問題、④人民元切り下げ問題などが話し合われると予想されていた。結局、首脳会談では、両国はお互いサイバー攻撃で企業情報を窃取しないことで合意している(他は両国の主張に開きがあり、合意が得られなかったと思われる)。
 習近平としては、米国へ逃亡した令完成(その交換条件として、共産党は①令一族が米国に保有する約6億ドル資産放棄、②米国にいる2万5千人<全体の約半数>の中国人不法滞在者の帰国を受け容れる)等の要注意人物を逮捕・帰国させたかったに違いない(今のところ、この件に関しての情報はない)。
  実は、米マスコミも習近平主席の訪米ついては冷淡であった。愛や希望を説くローマ法王に比べ、習近平は国内で人権を蹂躙する、あるいは少数民族や宗教者を弾圧する独裁者だからである。
 2013年にローマ法王に就任したフランシスコは、“進歩的”な考えの持ち主であり、かつ、それを率直に口にした(グローバル資本主義を批判したり、地球温暖化・環境問題で警鐘を鳴らしたりするなど)。したがって、米国民の中にはカトリック教徒でなくても、ローマ法王を崇拝している人も少なくない。また米国のアイルランド系・イタリア系・ポーランド系、およびヒスパニック系住民はカトリック教徒であるので、少なくとも国民の20%以上がカトリック教を信じている。9月23日、ホワイトハウス周辺でのパレードで、フランシスコは数千人の米国民から大歓迎を受けた。
 一方、中国共産党は米国政府側に習主席に対するデモ対策を要請していた。だが、同月25日、オバマ・習近平会談後、習主席の車列に“陳情者”が飛び出し直訴を敢行している。また、ファーストレディ 彭麗媛の車列にも“陳情者”が直訴する一幕があった。
 周知のように、バチカン市国はヨーロッパで唯一台湾との国交があり、中国とは国交がない。数年前から「バチカンは台湾との国交を断絶し、中国との国交を樹立するのではないか」という噂が流れていた。バチカンとしては、できれば中国と国交を樹立し、同国内のカトリック教徒(信者は約1.2億人という)に対する宗教の自由を保障してもらいたいだろう。
 しかし、依然、両国間で国交は結ばれていない。習政権による「家庭教会」等の非公認のカトリック教会への弾圧(十字架を破壊)が災いしているのかもしれない。
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 前回もご紹介したように、プチ・ヒトラーを気取る習近平は、就任以来、非常に厳しい弾圧政策をキリスト教徒にとっている。中華民族絶対優位という妄想に取り憑かれて、ウイグル族、満州族、蒙古族の男性を虐殺して、女性達を強姦し漢民族の子どもを生ませるという「民族浄化戦争」を進める習近平にとって、中華民族=自分を越える権威と人気を持つ宗教指導者は最大の敵である。
 教会を破壊・・・中国で急激に高まってるキリスト教への圧力
 日本市民は、日本が「民主国家」である以上、信教の自由を脅かす存在は、民主主義の基盤を破壊する存在として認めてはならない。また、アメリカ人の気質を理解するためにも、キリスト教を理解しておくことは非常に大切なポイントである。日本の仏教や神道を理解してもらうためにも、民主国家の宗教理解は不可欠の要素であり、交流の基本とも言える。今までの日本人は、あまりにも独善的(日本には日本の宗教がある、他の国にはない)か無神経、無関心すぎた。
 アメリカ人のチャレンジ精神はキリスト教の影響!?教会の礼拝に行って気づいたこと。
 キリスト教世界、イスラム教世界共に、相手の宗教の価値の肯定面(両者共に実は社会的相互扶助、博愛の精神の基本になっている)を見出して、関わっていくことが重要であろう。日本の仏教には平等思想が、神道には勧善懲悪の思想があり、上下関係や強弱関係あるいは、進歩非進歩のような尺度で相手との関係を捉えず、相互の建設的価値観の共通点を見出していくことができれば、それは大きな安全保障の基礎になる。

2.日本における文化の貧困を超えて
 第二次世界大戦で大日本帝国が滅亡して誕生した「日本国」の外交は、基本的に今まで国際協力という名目で「金が儲かればそれでよい」式の前近代的な経済絶対のヴェネティア式外交を展開してきたのでもっと、今後は民主主義を基軸(自由、平等、博愛と基本理念を共有していくこと)によって、軌道修正していく必要がある。民主主義の基本は、近代的教育制度であり、とくにアジア、アフリカ、中南米で十分初等、中等教育が普及しておらず、文盲の国民が大量に放置されている社会に対しては、教育支援を中心にした自立可能な「殖産興業(近代設備だけを輸出しても管理できないので、途上国には廃虚の発電所や水道、工場などが溢れている。まず、近代市民を育て、自国にあった自立的産業育成を目指す必要がある)」を援助の中心にすべきだろう。
 持続可能な開発のための2030アジェンダ
 開発援助の経済効果をめぐる諸論点
 今までの日本は、すべてを「物質」に還元していた。援助といえば、設備を作る、製品をあげる、建物を造る等々で、人的文化的社会的宗教的な協力という社会文化的側面が完全に欠如していた。これは、教養や海外知識の殆んどない地方の中下級武士が作った明治政府の支配階級が「西洋文明=科学技術・物質文明・経済第一(戦前は軍事も)」と誤解した結果、その後継政府の「日本国」の支配階級でも、海外との関係で文化が完全に欠落してきたためと考えられる。明治時代からそうであるが、市民の文化を支配階級は利用しながら完全に無視してきた。明治、大正期の有名な政治家や軍人のうち、どのぐらい漱石や芥川の理解者がいたか、考えてみると分かるだろう。逆に文化と言えば保護しないと絶滅してしまうような「伝統芸能(相撲、歌舞伎、能、工芸類、舞妓)」などと解釈されて、海外との交流でもそうした「絶滅危惧種のほろびそうな伝統文化=日本文化」という完全な誤解を海外に与えてしまった。
 最近、やっとソフトパワーが重要ということがおぼろげながら政治家や官僚に分かり、「クールJapan」などの戦略が出されたが、韓国はすでに2000年前後から、「韓国のメディア産業育成」をひとつの中心に据えていた。その結果が、「韓流」の世界的拡大である。
 「韓流」振興政策
 イギリスも1990年代から、「クールブリテン」の政策を始め、現在では人文社会系の大学学科と「クリエイティブ産業」を結びつけた、かなり高度な文化政策を展開して、世界的に評価されている。
 クリエイティブ産業が支える英国経済
 日本の場合は完全に出遅れ、また、「文化」とは何か政治家や官僚に理解する素養や教養がほぼ完全に欠けているため、また、関係したメディア人や大学関係者も「団塊の世代」の無教養なメンバーが多かったためか、以下のような悲惨な「クールJapan」政策になってしまった。
 クールジャパン政策について
 見て、笑ってしまった。コンテンツ、ファッション、衣食住関連、地域産品、サービスにいったいどんな文化の関連があるというのか?これを作った人間は、完全に文化を製品=ものと勘違いしている。明治維新を神聖化している今の政治家、官僚、経営者の「もの造り」症候群の最悪の例のひとつであろう。イギリスの場合は、大学改革をクリエイティブ産業育成に結合して、今まであった文学、歴史などリソースをメディア、デザイン、ファッション等に結合して英国文化として発信できるベースを作った。ダイソンなどのデザインや、博物館、演劇などの現在のイギリス文化ビジネスもそこから発展したのである。
 クリエイティブ産業が支える英国経済
 日本の支配階級(政治家、官僚、経営者)の多くは、そのスキャンダルを見れば分かるように、権力、酒、金、女、グルメのような低劣な欲望を満たすぐらいの教養しかないので、「もの造り、もの造り」と気違いのように息巻くぐらいしかできない。「クールブリテン」を出せたブレア首相(小泉首相は、オペラを趣味にできただけ、日本の支配階級の中では完全に抜きんでている)などとは大違いだろう。
 ジョゼフ・ナイが述べたように、文化はソフト・パワーである。安全保障の要のひとつで、それが揺らごうとしているのは日本の今後にとって、非常に憂慮すべき状態と言える。安倍首相は、2014年ぐらいまではブレーンの政策があったので外交政策は非常に優秀で、また、経済政策も基本を押さえていた。今年の戦後70周年の演説や挨拶もよく工夫されていた。しかし、内政面では失策が多すぎる。今年の「大学の人文社会科学系学科原則廃止」政策や「GDP600億円」目標、「一億総活躍」論などの個々ばらばらな提唱を見ると、残念ながらこの人たちは何も分かっていないことがよく分かる。
 イギリスのブレア首相が日本の首相だったなら、こういっただろう。
<日本は深刻な少子高齢化社会を迎え、全面的再生政策が必要です。そのために日本文化や各国文化との交流を基盤にした文化産業をサービス業の革新に据えて、「GDP600億円」を目標に、各地域と都市の連携と新興をはかり、国民ひとりひとりに日本的でしかもグローバルな文化活動への参与を求めます。大学の人文社会科学系学科には日本文化を発展させ、海外文化を紹介し、地域産業と人材育成に結びつける徹底した改革を求めます。文化の舞台こそ、21世紀に「一億総活躍」できる未来の可能性を開きます>
 スマート・パワー
 日本の停滞の大きな原因は、この点にある。もし、本当に経済を再生させたいなら、教育基盤=文化産業=サービス業=地方の個性の結び付を目指していく以外に、方法はないだろう。アップルの成功は製品をクラウドサービスとして提供した点にあった。別に電話やタブレットだけを売っていたわけではない。サービス業とシステム的に結合していない製造業は基本的にはもう時代遅れの産業である。
 
3.アメリカで広がる中国開戦論
 アメリカでは、2013年ぐらいから中国が開戦準備を進めているという記事が、一般の雑誌にも出始めた。以下は、ネット雑誌『アメリカン・シンカー』に出た、未来学研究者の中国開戦準備の推測である。
 根拠は、尖閣列島への中国の侵犯が2013年から激増し、南沙列島の基地を拡張して制空権を確保し、今後の侵攻する明かな挑戦行為で国境線の変更を意図しているという点にある。

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China Prepares for War
By David Archibald
Apart from their frantic dredging and island-building in the South China Sea, China is now also building an air and naval base in the Nanji Islands (27° 27’ N, 121° 04’ E) which is the closest part of China to the Senkaku Islands. They had previously built an airfield on a ridge (26° 56’ N, 120° 05’ E) near Xiapu to be close to the Senkakus. The current Google Earth image shows some Su-27s or clones at the western end of the apron and some J-8 Finbacks in the center of the apron.
The new base in the Nanji Islands is only a few minutes closer to the Senkakus by jet aircraft but it puts China within ferry distance by helicopter. A photo carried by the Japan Times shows a hill with its top flattened and now bearing at least eight helipads:
The round trip from the Nanji Islands to the Senkakus is 370 miles (600 km). The ferry range of Chinese troop transport helicopters is 500 miles (800 km). Japan has coast guard vessels around the Senkakus. They are unarmed. Chinese ships would be interdicted by the Japanese coast guard vessels and China would be the aggressor. But helicopters could fly right past the Japanese coast guard and land troops unopposed. Within minutes there would be photographs of the Chinese flag being raised on the peaks of the islands. A few minutes later they would be on the net. And Japan would be the aggressor in removing them. So that is what these helipads are for. It is all about how to start a war without being painted as the aggressor.
When China has been the aggressor all along, as shown by this graph from Japan’s Ministry of Foreign Affairs:
The red bars are the number of Chinese incursions to Japan’s territorial waters around the Senkakus per month. It is apparent that this is a directed and sustained effort. Now the Chinese are also directing literally hundreds of vessels to the Osagawa Islands in the Second Island Chain, which includes Iwo Jima.
With respect to the Senkakus, Chinese people have never lived on these islands. Japanese living on the islands peaked at more than 200 prior to World War I. The Chinese claim does not have any foundation whatsoever.
With respect to the South China Sea, last month the Department of State released Report No. 143 on "Maritime Claims in the South China Sea". The report shows why China’s claims there are invalid. The Philippines has a claim against China over its territorial ambitions in the South China Sea before the International Tribunal for the Law of the Sea in Hamburg. The Tribunal may produce a result by the end of this year. An adverse finding may have trade repercussions for China.
The nations around the South China Sea are preparing for war and so are the U.S. Marines. The Marines are building a command post at Oyster Bay on the west side of the Island of Palawan, which is the closest part of the Philippines to the Chinese bases in the South China Sea. The Marines would see their role as scraping the Chinese off their artificial islands once hostilities break out. It is good to see that somebody besides China is planning ahead.
Back to the Senkakus. The Japanese have not put any troops on these islands because they didn’t want to escalate the situation. That is completely misreading it. The Chinese preparations on the Nanji Islands etc. mean that the war is coming. All Japan can do is put itself in a better position. What it needs to do soon is send a team of archeologists to the Senkakus to curate the Japanese habitation of these islands, with logistical support provided by a company of naval marines. The important thing is that they will run up the Japanese flag every day. If they Chinese have to step over dead Japanese bodies when they attack, that will put Japan in a far better moral position.
David Archibald, a visiting fellow at the Institute of World Politics in Washington, D.C., is the author of Twilight of Abundance (Regnery, 2014).
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 中国経済の壊滅的状況が明確になれば、中国の軍事力拡大も抑制される可能性があるが、現状ではそれは希望的観測に過ぎない。2020年までに予想される人民解放軍による沖縄方面での島嶼局地戦および、日本本土での中国人武裝民兵による重要施設破壊や民族浄化戦闘に対して、日本社会は緊急に備える必要があると言える。


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