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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

中国メディア:韓国新型輸送艦「ドクト」を将来の空母建造の試金石と報道

2005年07月14日 | 華人メディアの動向─「反日」宣伝の動き─
 日本のNHKニュースなどでも報道された韓国の新型輸送艦「ドクト」について、中国メディアは7月初めからかなりの記事を出して、報道している
(中国ヤフーに転載されたのは、http://cn.news.yahoo.com/050705/463/2dcy7.html
http://cn.news.yahoo.com/050710/531/2di8b.html
http://cn.news.yahoo.com/050704/1063/2dceg.html
http://cn.news.yahoo.com/050704/1308/2dcc6.htmlなど)。
 以下は、その一つ、新華網の記事である(中国ヤフーhttp://cn.news.yahoo.com/military/mil_neighbour/index.htmlに転載)

韓國“獨島”號輕型航母正式下水 明年將交付使用
新華網漢城7月12日電(記者張利)韓國一艘以“獨島”命名的輕型航空母艦12日在南部港口釜山正式下水。這艘排水量為1.4萬公頓的航空母艦在經過嚴格測試后,將於明年6月交付韓國海軍使用。
韓國總統盧武鉉在航空母艦下水儀式上表示,“獨島”號輕型航空母艦是韓國自主國防意志和世界級造船技術結出的成果,將成為韓國 海軍發展的轉機。
“獨島”號長199米,31米,最高航速23節,定員300多人,裝備近程防禦武器系統和艦對 艦飛彈,可同時搭載7架直升機、6輛坦克、7輛裝甲車、10輛卡車、3門野戰炮、2艘高速登陸艇和720人的登陸作戰部隊。
“獨島”號輕型航母2002年10月底由韓進重工業公司開始建造,被設計用來運輸登陸作戰部隊和裝備,以及用作對艦、對空和反潛作戰的指揮艦。此外,還可用於救災、國際維和行動以及緊急撤離在外國民等。http://cn.news.yahoo.com/050712/428/2dkcj.html

翻訳:韓国「ドクト」号軽空母正式に進水 来年運用へ引き渡し
新華網漢城7月12日電(記者張利)は、以下のように報道した。韓国はドクトと命名した一隻の軽空母を12日南部の港釡山で正式に進水した。この艦は、排水量1.4万トンの航空母艦で、厳格な検査の後、来年6月に韓国海軍の運用に手渡される。
韓国大統領ノムヒョンは、航空母艦の進水式で以下のように述べた。「『ドクト』号軽空母は、韓国の国防への意志と世界レベルの造船技術が結合した成果で、韓国海軍発展の転機となるであろう」
ドクト号は全長199M、幅31M、最高速度23ノット、乗員300名あまりで、近距離防禦システムと対艦対空ミサイルを裝備し、同時に垂直離着陸機7機、戦車6両、装甲車7両、トラック10両、野砲3門、高速上陸艇2隻と720名の上陸作戦部隊を搭載できる。
 ドクト号軽空母は2002年10月末から韓進重工が建造を開始、上陸作戦部隊と装備を運べるように設計され、対艦対空対潜作戦の指揮艦としても用いることができ、このほか、災害救援、国連平和維持活動および在外国民の避難にも
使用できる。

 この後、「ドクト」は竹島への韓国の主権を示すためにつけたという説明がある。記事は、日本などで報道されている多目的輸送艦LPXの艦種を「軽空母」と規定している。こうした記事と合わせて以下の「新京報」での解説も出ている。合わせて読むと、中国が韓国の海軍力増強に大きな期待を寄せ、その拡大を希望している様子が手に取るように分かる。

韓國輕型航母即將下水 兩年后將形成實際戰鬥力
海軍作戰半徑大幅延伸
韓國軍方稱,LPX在有事時可以改造並搭載海軍型協同戰鬥機(JSF),其作戰距離將由韓國的濟州島以南延伸至東南亞地區。雖然該艦無法與美國兩棲攻擊艦相提並論,但將對未來韓國海軍的兩棲作戰能力產生重要影響,也大大提升了韓國海軍兩棲作戰部隊的遠距離投送能力和快速登陸能力。
如果航母搭載垂直起降戰鬥機,作戰範圍將不受內陸機場位置的限制,可以對敵方進行全天候的空中打擊,這將起到至少吸引作戰對手兩個師進行海岸防備的效果。分析家指出,由於LPX輕型航母把韓國海軍的作戰範圍擴大到整個東亞乃至東南亞地區,因此韓國國防部考慮到由此導致的外交問題,一直將其稱為LPX兩棲直升機攻擊艦。
軍事專家認為,韓國航母發展不會就此止步,LPX輕型航母只是其發展未來大中型航母的試金石。到2012年,韓國還將擁有5萬公頓級的航空母艦,並且能起降固定翼戰鬥機。(參孫)
http://cn.news.yahoo.com/050704/1340/2dcka.html

翻訳:韓国軽空母進水 二年後実戦力を形成
海軍作戦半径の大幅な延長
韓国軍当局は以下のように述べている。LPXは、有事のとき改造して海軍協同型戦闘機を搭載し、その作戦距離は韓国済州島から南へ伸びて東南アジアに到る。この艦は、米国の強襲揚陸艦と同列には論じられないが、将来の韓国海軍の上陸作戦能力に大きな影響を与え、また韓国海軍の上陸作戦部隊の遠距離投入能力と迅速な上陸能力を大きく向上させる。
 もし空母が垂直離着陸機を搭載すれば、作戦範囲は内陸の飛行場の場所の制限を受けず、敵方に全天候で空中打撃を続けることが出来る。これは、作戦相手の少なくとも2個師団を引き付け、海岸防備を進める効果が期待できる。軍事分析家は、LPX軽空母によって韓国海軍の作戦範囲は、東アジア全域と東南アジアに拡大したので、これにより韓国国防部はこれが外交問題になることを考慮して、LPXを水陸両用垂直離着陸機攻撃艦と呼ぼうとしていると指摘している。
 また、軍事専門家は、以下のように見ている。韓国の空母の発展はこれにとどまらず、LPX軽空母は将来の大型中型空母の試金石に過ぎない。2012年までに韓国は5万トンの空母を擁し、固定翼戦闘機の離発着を可能にする。

 この記事で注目される点は、中国メディアが、「敵方」という言い方を使っていることである。旧来の視点から脱却できない日本メディアの思考では、“韓国の敵は北朝鮮”という先入観で「敵方」を北朝鮮だと判断してしまいがちだが、中国メディアの「敵方」とは何だろうか。この記事では、軽空母「ドクト」は、主に上陸作戦での運用が行なわれると明記され、作戦範囲は済州島を南へ延長した東アジア、東南アジアだとしている。この記事での「敵方」は、明らかに海洋国家で上陸作戦先の国で、また陸続きの半島の北朝鮮などではない国、つまり、東アジアの日本と台湾、および他の東南アジア諸国(フィリピン、インドネシアなど)が想定されている。中国メディアが極めて軍国主義的拡張主義の文脈で「ドクト」進水を紹介していることを、日本の読者は十分認識するべきである。
 そうした「敵方」が日本であり、中国韓国軍が協力して敵方へ侵攻するという軍国主義的拡張主義の文脈から記事が書かれていると読むと、繰り返し「敵」という言い方が出てくる、以上に続く以下の部分も極めて興味深い言説と言える。

對特定海區實施海空控制
韓國北部大部分瀕臨東海,東海也是韓國進入太平洋的主要出海口。因此,從道統上來說,東海一直是韓國海軍防禦的重點海區,它對韓國的國防、對外貿易乃至國民經濟的發展都起著舉足輕重的作用。在出現危機時,只要控制住東海,就能確保韓國內陸不受來自海上的威脅;反之丟失了東海,整個韓國的國土就會暴露在敵人砲火之下,對韓國生死攸關的出海通道也將被堵死。LPX艦的一個重要作用就是在戰時發揮本身對空對海控制能力強、機動性好、持續作戰時間長的特點,與其他兵力一起,奪取東海海域的海空優勢、實施海上控制,進而打通東海通向太平洋的通道。
攻擊和消滅敵方海上兵力
要保衛本國不受來自海上的威脅,最好的辦法就是在敵人進入本國領海前,消滅其海上有生力量。在戰時,韓國海軍的LPX艦可與其他艦艇(護衛艦、潛艇、補給船等)組成強有力的合成編隊,前出至東海以外,使用航母的艦載機和護航艦艇裝備的多種先進的對空、對艦武器,攻擊和消滅企圖闖入東海防禦海區內的敵方飛機、潛艇和水面作戰艦艇等。
http://cn.news.yahoo.com/050704/1340/2dcka.html

翻訳:特定海域で制空制海権確保を実施
 韓国北部の大半は、東シナ海に面し、東シナ海は韓国の太平洋への主要な海の出口である。これにより、今まで言われてきたように、東シナ海は韓国海軍の防禦の重点海域で、それは韓国の国防、対外貿易および国民経済の発展のいずれもにいかなる動きも重要な作用を起こす。危機が出現したとき、東シナ海をコントロールすることは、韓国内陸部が海からの脅威を受けないことを保証する。しかし、東シナ海を失えば、韓国の国土全体が敵の戦火にさらされ、韓国の生命線である海への出口は閉ざされる。LPX艦の重要な働きの一つは、戦時に制空制海権確保の能力を強め、機動性が好く、持續作戰時間が長い特徴は、その他の兵力とともに,東シナ海海域の海空優勢を奪取し、制海権を確保して、東シナ海から太平洋へ向かう通路を打通する。
敵方海上兵力への攻撃とその殲滅
本国を防衞するために海上から威脅を受けない、最も好い方法は、敵が本国の領海に進入する前に、その海軍力を殲滅することである。戦時,韓国海軍のLPX艦は、その他の艦艇(護衛艦、潛艇、補給船等)とともに強力な艦隊をつくり、東シナ海の外へと進出して,空母の艦載機と護航艦艇が装備する多種の先進的対空対艦兵器を使用して、攻擊和消滅東シナ海の防禦海域へ侵入しようとする敵方の飛行機、潜水艦と水上作戦艦艇などを攻撃して殲滅する。)

 この記事で、重要な点は、三つある。一つは、中国メディアが、日本・台湾という海洋での敵国を想定して、韓国の位置を極めて恣意的に扱っている点である。この解説記事は冒頭で「韓国北部の大半は、東シナ海に面し、東シナ海は韓国の太平洋への主要な海の出口である」と述べているが、これは明らかに意図的な誘導である。小学生でも、地図をみれば朝鮮半島の西は黄海、南は対馬海峡、東は日本海であることは分かるにもかかわらず、なぜそれを無理に東シナ海に限定しているのか。そこから、この記事の意図するところが明らかになってくると思われる。つまり、東シナ海に広く国土をさらしている中国にとってこそ、東シナ海は生命線であるが、日本やロシアと韓国が良好な関係を続けていれば、韓国には東シナ海以外にも海への出口はあるということである。こうした書き方になるのは、中国が今後行う東シナ海での作戦のために韓国海軍の協力が必要だという前提がなければ成り立たず、この解説はそれを中国国民へ伝えるプロパガンダであると考えるのが妥当であろう。
二つには、韓国が今後、従来の国際関係を大きく変える可能性が示されている点である。記事は、「危機が出現したとき、東シナ海をコントロールすることは、韓国内陸部が海からの脅威を受けないことを保証する。しかし、東シナ海を失えば、韓国の国土全体が敵の戦火にさらされ、韓国の生命線である海への出口は閉ざされる」と書いているが、今まで通り日本やアメリカと協力関係を持っていれば、東シナ海が韓国の生命線になることはあり得ないし、日本と同様、エネルギーも食糧もほとんど自給できない韓国がシーレーン防衛を言い出せば、中東から太平洋全域を確保しなければならず、東シナ海だけを戦場に想定するのは、極めて非現実的である。なぜ、こうした非現実的な解説が出てくるのか。東シナ海確保だけを強調しているのは、そこが将来の主戦場になる可能性の暗示であろう。つまり、日本や台湾を攻撃する際、中国軍と協力する韓国軍による沖縄、九州などへの侵攻が必要であることを、想定した書き方である。
 最後に、制空制海権確保という具体的任務が与えられている点である。ここには、今後、中国、韓国軍が、日本、台湾など海洋地域に侵攻する際の、任務が明記されていると言ってもよい。今年から始まった韓国軍の米式装備による軍備大増強(このページでもすでに紹介したhttp://blogs.yahoo.co.jp/kei_shi347/5217551.html)と、この内容は明らかに重なっており、中国が韓国にこうした役割を期待していることが、ここからよく分かる。

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3 コメント

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どうも… (kyouji)
2005-07-15 13:34:57
 ソ連と別れて、日本と結んだ時に日本に言ってたのと

そっくりですね。

 韓国、理性より感情が先にたつだけに、冷静な判断は

のぞめないかな?
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台湾の切り札はイージス艦 (tsubamerailstar)
2005-07-18 16:14:50
よい休日を過ごされましたでしょうか?

ミラー開設おめでとうございます。個人的にはヤフー系はいちいちログインしないとコメント書けないし(しかも文字数が限られる)、使い勝手が・・・・



>台湾沖縄などへの通信施設などへのピンポイント攻撃と空挺部隊や工作員などによる奇襲攻撃を、今後10年は最も警戒する必要があるかもしれないと思いました。台湾の総督府も防禦を真剣に考えないといけないかもしれません。今後、戦争の危険性は、ますます高まりますね。



96年のミサイル危機時に中国が何を想定していたのかをよく検証する必要がありそうですね。

中華民國国防部も四月に西岸地域に人民解放軍が上陸したことを想定する大規模演習を実施しました(ミラージュ2000を高速道路から離発着させたのもこの時でしたっけ?)が、この地域の被害はある程度覚悟しておく必要があると思います。それと金門・馬祖ですね。

ここは米華相互防衛援助条約時代から、米国は防衛対象から外しておりました。台湾有事の際の米軍の動きはかなりグレーで実際その時まで読めないと思いますが、金門・馬祖に対しては動かないものと思われます。



いよいよ米国がイージス艦を売る段階に入ってきたかな、と思います。米第七艦隊との共通運用やデータシェアリングも可能ですから次のお買い物はこれに尽きると思いますね。



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新居へありがとうございます (蓬莱の島通信ブログ)
2005-07-20 14:10:34
新居へご訪問ありがとうございます。yahooブログは、仲間同士で登録したりるにはいいのですが、記事やコメントに文字制限があったり、フォントが読みにくいなど、書き入れや閲覧機能はもう一つですね。また、書いていて、全部消えてしまったという経験が何度もあります。gooは、字数制限がないのが助かります。

長い記事は、こちらでは一つにできます。
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