台風シーズンを迎えると想いだす情けない話です。
毎朝、妻は駅まで歩いて7~8分ほどの距離をホームまで見送ってくれていた。ドアが閉まり私が「いかにも蛙が押し潰された様な無様な格好」で出勤する姿をみていた。(乗員容積率:200%)
この駅は、なぜか低地にあって大雨が降ると冠水するので地元では知られていた。私もニュースでは知るものの経験したことはない。 妻は全く知らない。
朝、小降りだった雨も帰宅時刻には本降りとなり妻は私の雨傘を手に駅まで迎えにでていた。 私は状況判断をして、実家に寄り車を借り帰宅を急いだ。駅に迎えに行っていて妻は当然不在。家のスペアキーは持っていない。勿論、電話も携帯もないので連絡が取れない。車で駅の行ける所まで行ってみた。やはり、冠水で駅には近寄れない。
一方、妻は私の雨傘を手に同じく迎え待つ地元の奥様方7~8組と一緒に改札口にいた。一人去り二人去りそして全ての奥様方は消えた。次第に足元に水かさが増し、気づくと妻一人だけが改札口の上によじ登っていた。線路は水没し、当然の如く電車は不通となる。長靴は穿いていない。膝ぐらいまでの水かさはある。水に浸からないと帰れない状況と知るが遅し。
また、私は大声で妻を呼ぶが、遠くて声が届かない。傍まで行くには水に浸かり歩かなくてはならない。折角、車を借りたのに、ズボンの裾をめくり革靴のまま冠水に満ちた駅前広場を抜けて改札口に向かった。水かさは膝まであった。
改札口の上で思案し躊躇している妻がいた。互いに無事を確認し濡れなくてもよかったのに、仲良く濡れて帰った人には話せない情けない話でした。
情報収集の必要性は痛感したが、片手落ちでは意味がないことも知った若い頃のほろ苦い想い出でした。
終わり