病棟転換型居住系施設について考える会

世界に誇る日本の精神病院の病床数と長期入院者の問題とは…。削減した病床を病院敷地内の居住系施設に転換する問題とは…。

読売新聞 2014年7月13日社説「精神医療改革 社会的入院の解消を図りたい」

2014-07-13 01:35:00 | 報道
読売新聞 2014年7月13日社説「精神医療改革 社会的入院の解消を図りたい」へのURL
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140712-OYT1T50153.html

 入院中心の治療から、在宅療養を支える体制へと、精神医療を転換させることが急務である。
 経済協力開発機構(OECD)が、日本の精神病床数は、人口当たりで加盟国平均の4倍に上っているとする報告書をまとめた。先進諸国で在宅療養が広まる中、「脱施設化」が遅れていると指摘している。
 国内では、34万の精神病床に32万人が入院し、このうち20万人が1年以上の長期入院だ。入院期間は平均約300日で、2週間前後の先進諸国との差が大きい。
 入院の必要性が低いのに、退院後の行き場がないため、病院にとどまる患者が少なくない。長い入院で生活能力が低下し、退院が困難になる例も多い。こうした社会的入院を解消する必要がある。

 日本では戦後、隔離収容型の精神医療政策の下、補助金を出して民間の精神科病院の開設を促した。少ない医師数で多数の入院患者を受け持つ特例も設けた。社会的入院が増加した背景である。
 政府は、2004年に「入院から地域へ」の転換を打ち出し、10年間で7万床の病床削減目標を掲げた。だが、この間の削減数は1万床程度にとどまる。収入減を嫌って病院側が消極的なためだ。
 今年4月には、新規の入院患者を1年以内に退院させる体制や、在宅患者の支援体制の整備を掲げた精神医療の指針が示された。
 入院は重度患者に限り、他の患者は住み慣れた地域で暮らし続ける。その方向性は適切である。
 課題は、長期の社会的入院患者の退院をいかに促進するかだ。

 厚生労働省の検討会は、病床の一部を居住施設に転換することを認める報告書をまとめた。退院の意欲が低い患者の受け皿にして、病院の経営にも配慮しながら病床削減を進めるのが狙いだ。
 しかし、居住施設への転換には、「看板の掛け替えに過ぎない」といった批判が強い。病院の敷地内に囲い込まれるという患者や家族の懸念は、理解できる。
 報告書では、患者本人の選択の自由を確保し、入居期間の規定を設けることなどを転換の条件とした。利用者を現在の長期入院患者に限定する案も示した。
 あくまでも例外的な施策と位置づけ、患者が確実に地域社会に戻れるよう制度設計すべきだ。
 患者の地域生活を支えるには、生活保護費などの金銭管理の支援や相談体制の充実が欠かせない。アパートやグループホームなどの確保も重要だ。自治体と医療・福祉機関の連携が求められる。

最新の画像もっと見る