(以下、読売新聞【埼玉】から転載)
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ゼロから 日本語 桜咲く 戸田翔陽高の小杉さん
来日3年 早大進学 「メーク文化、中国に」夢へ一歩
県立戸田翔陽高の小杉遥さん(20)は、日本語がほとんど分からないまま、中国から来日、帰化した。語学の習得、関心を持った新聞記事のスクラップ、猛烈な勢いで吸収を続け、3年が過ぎた。県内の公立高校から間もなく総勢3万8000人の高校3年生が巣立つ。小杉さんは早大に進学する。すでに「日本のメーク文化を中国の女性たちに広げる仕事」という明確な目標も持つ。
当初はひらがなしか知らず、話せるのは「こんにちは」と「ありがとう」ぐらいだった。来日したのは2007年3月、高校2年生。中学生の時、母親(46)が日本人男性と結婚し、埼玉県に移住。祖父母と暮らす上海で、インターネットなどを通じて日本の音楽や文化に興味を募らせていた。
「みんな親切で優しくしてくれた」と話す小杉さん。春から念願の大学生だ(戸田翔陽高で)
戸田翔陽高の編入試験を受けた。国語は歯が立たなかったが、数学と英語がずば抜けていた。電子辞書を手に、友達や、県派遣の指導員から日本語の文法などを必死に学んだ。1年ほどすると、教壇に立つ先生の冗談を同級生と一緒に笑えるようになった。
外国語指導助手に依頼し、授業前に英語の個別指導を受け、慣れない古文も「面白い」と感じるようになった。中国にはない文化祭も心から楽しんだ。
小杉さんが関心を抱いたのは学校生活だけではない。環境問題や政治を中心に、気になった記事の切り抜きをファイルにとじ、社会にアンテナを向け続けた。
最大の興味はメーク。街を歩く女性たちが化粧をしている。中国で目にしたこともない光景だ。「どうして化粧をするのだろう」と調べるうち、傷やあざに施すリハビリメークの存在も知った。「中国の人にも自分を美しくする化粧、心をいやすメークを伝えたい」との夢を抱くようになった。1年前、帰化した。
3年生1学期の面談で、担任の遠井昌人教諭(34)は驚いた。小杉さんは、志望大学の入試の日程や内容をまとめ、持参していた。
掃除をする小杉さんに「ありがと」と声を掛けると、「何で先生が生徒にそんなことを言うんですか」と不思議がる。ある大学が不合格だった際には「応援してくれたのに申し訳ない」と涙を浮かべる。「自分というものをすごく持っているのに、自分だけにとらわれず、感謝の気持ちを持っている」と遠井教諭は言う。「実は『彼女のようになりたい』とあこがれる後輩もいるんですよ」
志望した早大国際教養学部のAO入試の面接では、メークの仕事に対する思いをぶつけ、合格した。「ここまで自分一人じゃ何もできなかった。たくさんの人が応援してくれたお陰」。大学では、英語以外の外国語、ビジネス分野の勉強にも挑戦したいという。在学中、通訳ボランティアも買って出ていた小杉さん。遠井教諭は「世界に羽ばたく人材に」と期待している。
(2010年2月26日 読売新聞)
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ゼロから 日本語 桜咲く 戸田翔陽高の小杉さん
来日3年 早大進学 「メーク文化、中国に」夢へ一歩
県立戸田翔陽高の小杉遥さん(20)は、日本語がほとんど分からないまま、中国から来日、帰化した。語学の習得、関心を持った新聞記事のスクラップ、猛烈な勢いで吸収を続け、3年が過ぎた。県内の公立高校から間もなく総勢3万8000人の高校3年生が巣立つ。小杉さんは早大に進学する。すでに「日本のメーク文化を中国の女性たちに広げる仕事」という明確な目標も持つ。
当初はひらがなしか知らず、話せるのは「こんにちは」と「ありがとう」ぐらいだった。来日したのは2007年3月、高校2年生。中学生の時、母親(46)が日本人男性と結婚し、埼玉県に移住。祖父母と暮らす上海で、インターネットなどを通じて日本の音楽や文化に興味を募らせていた。
「みんな親切で優しくしてくれた」と話す小杉さん。春から念願の大学生だ(戸田翔陽高で)
戸田翔陽高の編入試験を受けた。国語は歯が立たなかったが、数学と英語がずば抜けていた。電子辞書を手に、友達や、県派遣の指導員から日本語の文法などを必死に学んだ。1年ほどすると、教壇に立つ先生の冗談を同級生と一緒に笑えるようになった。
外国語指導助手に依頼し、授業前に英語の個別指導を受け、慣れない古文も「面白い」と感じるようになった。中国にはない文化祭も心から楽しんだ。
小杉さんが関心を抱いたのは学校生活だけではない。環境問題や政治を中心に、気になった記事の切り抜きをファイルにとじ、社会にアンテナを向け続けた。
最大の興味はメーク。街を歩く女性たちが化粧をしている。中国で目にしたこともない光景だ。「どうして化粧をするのだろう」と調べるうち、傷やあざに施すリハビリメークの存在も知った。「中国の人にも自分を美しくする化粧、心をいやすメークを伝えたい」との夢を抱くようになった。1年前、帰化した。
3年生1学期の面談で、担任の遠井昌人教諭(34)は驚いた。小杉さんは、志望大学の入試の日程や内容をまとめ、持参していた。
掃除をする小杉さんに「ありがと」と声を掛けると、「何で先生が生徒にそんなことを言うんですか」と不思議がる。ある大学が不合格だった際には「応援してくれたのに申し訳ない」と涙を浮かべる。「自分というものをすごく持っているのに、自分だけにとらわれず、感謝の気持ちを持っている」と遠井教諭は言う。「実は『彼女のようになりたい』とあこがれる後輩もいるんですよ」
志望した早大国際教養学部のAO入試の面接では、メークの仕事に対する思いをぶつけ、合格した。「ここまで自分一人じゃ何もできなかった。たくさんの人が応援してくれたお陰」。大学では、英語以外の外国語、ビジネス分野の勉強にも挑戦したいという。在学中、通訳ボランティアも買って出ていた小杉さん。遠井教諭は「世界に羽ばたく人材に」と期待している。
(2010年2月26日 読売新聞)