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 高校生になったおジャ魔女たちを描いたラノベ「おジャ魔女どれみ16」も、「おジャ魔女どれみ17」、「おジャ魔女どれみ18」と歳を重ねていき、9冊目となる「おジャ魔女どれみ19」でついに完結しました。



以降、大きなネタバレはしていないつもりですが、「おジャ魔女どれみ19」および、同シリーズの若干のネタばれが含まれている可能性があります。未読の方はご注意ください。



 本書では高校を卒業したどれみたちの、その後の1年間の様子が描かれています。
 これまでのシリーズはずっとどれみの一人称視点で描かれていたのですが、本書ではあいこ、おんぷ、ももこ、はづき、そしてどれみと、5人それぞれが1章ずつを担当し、各人の視点から、高校卒業後の一年間の様子が語られます。
 あくまでも物語としてみた場合には、各章の内容はかぶっている部分がかなりあります。しかし一人称視点で描かれているため、みんながそれぞれどんな思いでいたのかがしっかりと描写されています。同じ一つの出来事でも、それぞれの視点から多層的に描かれているため、物語に深みを与えていると思います。

 これまでのシリーズで描かれてきた高校生のどれみたちは、良くも悪くも波乱万丈な出来事がてんこもりでした。個人的には、ちょっとドラマチックにしすぎじゃないの? と思ったりした部分もありました。それでも、仲間たちと助けあったり、励ましあったり、涙を流したりしながら、夢に向かって一歩ずつ進んでいきました。
 そんな高校生活を経て、それぞれの新しいステージへと踏み出していく。これまでのような、それこそマンガみたいに派手な展開は、本書にはありません。ただ夢に向かって努力していく彼女たちの日常の風景が、淡々とつづられています。
 それだって、けして平坦なものではありません。しかしここで語られる物語は、非日常的な奇想天外なハプニングではなく、地に足の着いた、彼女たち自身の人生の物語なのです。つまづいたりすることもあるけれど、彼女たちには夢がある。すばらしい仲間がいる。ハナやマジョリカをはじめとして、別に魔女界とのつながりが切れたわけじゃないけど、彼女たちは魔女見習いを今度こそ本当に卒業して、自分の道を自分の力で切り開いていく。言ってみれば、本書は1冊まるまる、アニメシリーズを含めたおジャ魔女どれみ全体のエピローグであると思います。私はエピローグには時間をかけるべし主義者なので、この構成には大満足です。

 読後感は、「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」の最終回の後に似ていますね。長いシリーズが終わっちゃったという寂しさも大きいのですが、夢への第一歩を踏み出したどれみたちのこれからを思えば、やっぱり笑顔が浮かんできます。
 この後の話が描かれる可能性は限りなく低いと思いますが、彼女たちの前途に、洋々たる未来が開けんことを願ってやみません。



 と、本書については個人的にかなり満足度の高い出来になっているのですが、完結した今、シリーズ全体を振り返ってみると、ちょっとどうだったかなぁという点がないでもありません。その最たるものが、この企画の根幹に関わる部分でもあるのですが、やっぱりどれみたちが再び魔女見習いになっちゃった部分だと思うんですよね。

 「おジャ魔女どれみ16」の感想でも書きましたが、アニメシリーズからの流れを考えると、高校生になってまた魔女見習いを始める必要性がどうにも薄いんですよね。
 アニメシリーズのときより能力も行動力も増しているんだから、魔法なしでも充分話を展開できたと思います。実際、ラノベシリーズを通して、魔法の使用率はそんなに高くありませんし、物語における重要性もさほどありません。もしどうしても魔法が必要なら、ハナでもマジョリカでもFLAT4 でも使えたわけですしね(そのハナも魔法をあまり使わなかったので、シリーズ後半は役割がなくてほとんど空気でした。サッカーしてたFLAT4 の方が、むしろ目立ってましたね)。

 いやまあ、どれみを復活させるにあたって、魔法抜きで行きましょうという判断がありえないというのも理解できますけどね。普通に考えれば、そりゃ魔法を使わせたくなりますし、多分、使わせるべきなんです。
 でも、ラノベシリーズがアニメシリーズの続編として正当な道を歩んだばっかりに(いや、これもまったくもって正しいんですけど)、アニメシリーズで一度卒業したはずの魔女見習いという設定が、どうしても中途半端になってしまった感じは否めません。魔女見習いの部分はどうしても蛇足というか、アニメで言う販促パートみたいというか……。
 まあ、それだけアニメシリーズがよくできていたということでもあると思いますけどね。やっぱりすごい作品ですよ、「おジャ魔女どれみ」は。



 なんだかんだで、ラノベシリーズも楽しませてもらいました。不満点もないではありませんでしたけど、アニメシリーズの続編として、しっかりと「おジャ魔女どれみ」していました。ファンの設定するハードルはかなり高いものだったと思いますけど、それを充分に超える仕事をしてくれたと思います。

 アニメで4年間、ラノベでも4年間。結構長くおジャ魔女たちと付き合ってきましたが、さすがにそろそろ打ち止めでしょうかね。巻末の栗山緑インタビューでは、どれみたちが婚活をする「おジャ魔女どれみ26」なんて言葉も出てきていますが、さすがにこれはないでしょう。第一、婚活話をやるにしても、どれみとはづきはもう相手が決まっちゃってますし、ここからまた新キャラで恋のライバルなんか出しても、それこそ蛇足以外の何物でもありません。
 ぽっぷももう中学生になっていて「おジャ魔女ぽっぷ」をやるタイミングも逃しちゃったし、続編を作るなら子供世代を主役にした、「おジャ魔女どれみ36」くらいですかね。新世代のおジャ魔女たちを、母として、教師として、そして魔女見習いの先輩としてどれみが見守る。うーん、これなら是非、アニメで観てみたいですね。


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