川の流れに沿って枯れススキの茂みが広がっている。茂みを押し分け踏み分けてできた様な細い道がある。しばらく進むと畳の2枚か3枚ほどの茂みを刈り取った場所に出た。すぐそばを川が静かに流れている。川釣りを楽しむ人らの場所の様に思えるが姿はない。時には怒りをぶつけるように荒れる流れを忘れたかのように静かに流れている。ふと浮かんだのがこれ。
🎵知らず知らず歩いてきた 細く長いこの道 振り返れば遥か遠く 故郷(ふるさと)が見える
でこぼこ道や曲がりくねった道 地図さえないそれもまた人生
ああ 川の流れのようにゆるやかに いくつも時代は過ぎて
ああ 川の流れのようにとめどなく 空が黄昏に染まるだけ🎵
この歌は平成元(1898)年になってすぐに出た。歌う美空ひばりのこの歌に対する心情を書いた短い文章を思い出した。自分の人生に重ねて「1滴の雨が木の根を伝い、せせらぎが小川になる。水の流れがあっちにぶつかり、こっちに突き当たりしながらだんだん大きくなる。やがて大河になり、ゆっくりと海にたどり着く」。日本の歌姫と言われる背景を伺うという。
天皇崩御の喪に服す間に、自らの体調から現役引退を余儀なくされ、最後となったステージからわずかの間に還らぬ人となった。思えば、自分の運命をたどった曲の様に思える。足下の流れはまもなく海にたどり着く。ここまでの長旅の疲れを見せず穏やかに旅のおありに向かってゆっくりと流れる。我もこうありたいものだと思い流れを見送る。