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2009年5月28日 中国新聞 「広場」掲載
ドクダミの白い花が咲き始めた。花はかわいいが、「あの特有のにおいが…」と敬遠する人も多い。祖母は「そのにおいが効くのにね」と根こそぎ採っていた。
採ったら奇麗に水洗いして束ね、軒下で陰干しする。パリパリに乾燥すると、あの特有のにおいは消え、乾燥ドクダミは大切な家庭薬に変わる。
腫れ物ができると家庭薬を火で温めて柔らかくし、それをもみつぶして患部へ張り付ける。二、三回繰り返すと治る。飲むと体にいいということで、特に夏場はのどを潤す水代わりにせんじたものをよく飲んだ。あせもが出ると祖母はドクダミ風呂を沸かしてくれた。そんな子どものころをあれこれ思い出す。
ドクダミは日陰や湿っている所、人間社会では出世の機会に恵まれないような場所に群生する不思議な植物だ。しかし、薬効という素晴らしいDNAは途切れることなく伝えてきた。
そんなことを思い、眺めていると「真摯に生きることですよ」とハート形の葉が語りかけるように揺れる。すると白い花はより白く見え、特有のにおいは薄らぐように感じた。
(写真:日陰でも素直に育つドクダミ)