炭素の科学

宇宙で水素、ヘリウムに次いで3番目に出来た安定な元素で、生命体に必須の有機化合物の基本の元素である炭素について知ろう

1.炭素という名称の起源

2016年01月17日 | 科学

既述のページへのリンク: ①炭素という名称の起源   ②炭素の認識:木炭は何故炭素なのか   ③元素としての炭素の性質   ④炭素の誕生   ⑤宇宙の炭素   ⑥原始太陽系の炭素   ⑦炭素と有機物   ⑧炭素原子とメタン分子   ⑨炭化水素分子内での炭素の結合   ➉分子内での炭素と酸素の共有結合   ⑪窒素の形成と水素と炭素と酸素   ⑫窒素を含んだ有機化合物と無機化合物   ⑬星(恒星)と炭素   ⑭炭化水素分子内での炭素―炭素結合と電子   ⑮複雑な構造の炭化水素、⑯複素環式化合物、⑰炭素化合物の多様性⑱炭素原子と星間分子

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日本語の炭素という名称は,炭(すみ)の素(もと)の意味(1)。国際用語のcarbone を意訳したものと考えられる。学術用語集の初版制定以前から日本語として定着していたため,そのまま学術用語として採用された(2)。国際用語はラテン語の carbo(木炭の意)からきており、同様な意味で,英語でcarbon,フランス語でcarbone,ドイツ語でKohlenstoff,イタリア語でcarbonio,スペイン語でcarbono,ポルトガル語でcarbono,中国語で「碳」と表される。
現在炭素と呼ばれるものに相当するものが存在することは有史以前から知られていた。しかし、それがcarboneと呼ばれるようになったのは、近代的な化学的手法でダイヤモンド(1772年)やグラファイト(1786年)が炭素の単体であることが認識されてからで、正式にcarbone(炭素)の名称が採用されたのは、ラヴォアジェが元素のテキストを纏めた1789年からである。

ちなみに,日本語で素を付けた名称を持つ元素は,原子番号の小さい順に,水素,ホウ素,炭素、窒素,酸素,弗素,珪素,塩素,砒素,臭素,沃素がある。
この中で,国際用語を意訳したものは,水素(水を生ずるもの),ホウ素(ホウ砂の素となるもの),窒素(生き物を窒息させる空気),酸素(酸―すっぱいものーを生むもの),珪素(珪石の素となるもの),砒素(砒石の素となるもの),臭素(悪臭を放つもの)である。
国際用語の語源と異なる日本独自の命名と思われるものに塩素がある。塩素を現す国際用語のchlorineは黄緑色を意味し,塩素の気体の色に基づくが,日本語の塩素は塩(しお,食塩)を形成する素を意味する。
国際用語の語源とは関係なく,国際用語の発音に似せた当て字に素をつけたものに弗素(フッ素)と沃素(ヨウ素)がある。フッ素の国際用語のfluorineは,蛍石(fluorite)の素となるものの意味で,意訳すれば蛍素とでもなるべきところか?ヨウ素の国際用語のiodineはヨウ素の蒸気が紫色(ギリシャ語でiodes)であることによるが,日本では江戸末期にオランダ語のjodiumを音訳してヨジウムと呼んだ。その後,明治になってドイツ語のJod(ヨード)と呼ぶのが主流となり,それに沃度と当て字をした。漢字に特別な意味は無い。
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(1) 尾藤忠旦著,「化学語源辞典」,三共出版(1977)。
(2) 昭和22年2月発足の学術文献調査特別委員会学術用語制定科会において学術用語集の初版制定時に,すでに日本語化しているものと、すでに英語以外の言語を基に訳字された用語はそのまま固定することとされた。

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