晴耕雨読

本年三月に退職、現在は京都で通勤農業に励んでいます

「まだ考えてへん」

2008-12-05 10:56:44 | Weblog
中学3年生にとって「進路の決定」は大変重要なことである。生徒が中学校に入学以来、時に触れ折に触れ進路のことについては繰り返し指導をしている。しかし多くの生徒は進路決定の間際まで「自分の将来について真剣に考えよう」としない。
進路決定の最終段階になっても「明確な希望」がだせないまま、保護者や学校の指導に従い「なんとなく」それぞれの進路にすすむことになる。
この結果入社早々退職したり、入学早々退学となったりする。
現在、フリーターやニートの増加が社会問題になっているが、その遠因はこの辺りにあるように思える。
生徒に「自己決定能力」を早くから身につけさせるような取り組みが家庭で学校で必要な課題である。

    「まだ考えてへん」

          昭和63年12月5日  教員向け

3年生にとっては、いよいよ進路決定の時期になりました。かつて、京都の蜷川知事が゜「15の春は泣かさない」との名文句のもとで、京都方式による入学試験制度をうちたてていましたが、今は、それも語り草になってしまい、京都の中学3年生もも泣いています。
「15の春」は、生徒にとって、試練のときだといえます。

     <どこにするか考えてない>

11月22日、3年生の進路説明会が体育館でもたれました。さすがに子供の進路となると関心が高いのか、8割近くの保護者が出席していました。
この説明会の途中で、会場から抜け出してきた生徒二人と出会い、会場へ連れ戻しながら進路についての考えを聞いてみました。
「進学するのか、就職するのか決めているのか」
「できたら進学したいと思てるねん」
「どこにいこうと思っているのや」
「わからへん」
「先生が君の進路のことで心配してくれているようやが、あの先生の言うとおりにする気があるのか」
「まあまあな」
また、別の一人に対して
「君はどうするねん」
「オレの校区は県立尼崎高校やねん。ほんまは市立尼崎高校にいきたいねん」
「そんなら市立尼崎へいったらいいやないか」
「校区がちごたら、むずかしいのやろ」
「成績はどのくらいや」
「2と3で3が多い」
この二人だけでなく、出会った生徒に進路について聞いてみますが、はっきりと「どこそこの学校」「こんな仕事」と自信を持って答える生徒にはなかなか出会えません。

   <就職か進学か>

進路決定の第一段階は、「就職」か「進学」かの決定です。このとき、本心は就職を希望していながら本人や親のミエから進学する生徒もいると思います。「進学万能」の気風は改めなくてはなりません。

    <進学の目的を明確に>

進学についても、普通科にするか職業科にするかを決めなくてはなりません。職業科はむいていないが、入学しやすいから職業科にいくというのでは、入学してからたちまち高校生活に絶望して、中途退学となってしまいます。また、逆もあるでしょう。
入学の「しやすさ」「しにくさ」ではなく、高校で何を勉強したいかに重点をおいた進路指導にならなければなりません。
また、生徒と話をしていて感じることですが、「自分の成績はこれだから、もうだめだろう」と決めている生徒がいることです。
このような生徒にたいしては、努力すれば、道は開けることを説明し、自暴自棄にならないような指導をしてほしいと願っています。

     <進路指導は一年生から>

自分の生涯を左右する進路については、3年生になってから考えるのではなく、1年生の時から真剣に考えるように指導する必要があります。
3年生の11月の末になって「進路はどうするのか」と問われて、「まだ考えてへん」「まだ決めてへん」というのでは適切な進路指導はできません。
今、大きな社会問題になっているものの一つに、高校の大量中退学の問題があります。市内のある公立高校で本年の春、入学した生徒が一週間登校しただけで、退学した事例があります。
就職した生徒も、1、2か月のうちに転退職する者が後を絶ちません。
生徒の一生を左右する進路指導については、入学の時から3年後を見越した計画的な指導が必要です。