多聞 きもの手帳 <男の着物日記>

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「若衆好み-江戸女の色と恋」

2009年05月31日 | きもの図書室
「若衆好み-江戸女の色と恋」 田中 優子 白倉 敬彦

「武士道と男」に関連して、氏家幹人の「サムライとヤクザ」を以前紹介した。その中では武士道と男性同性愛(男色 なんしょく、衆道 しゅどう)が切っても切れない関係にあることが記述されている。詳しいことは同じ著者の「武士道とエロス」 を参照していただきたいが、江戸時代は男性同性愛に対して、現在よりも寛容であった…というよりも、あって当然のものと考えられていたらしい。
特に「男社会」である武家社会では、衆道は一種の通過儀礼と考えられていた節がある。
ただし、現代のホモセクシャルやゲイと違っているのは、性の対象となる男性は少年が中心であったという点だ。
武家社会の衆道は、主君と従者、先輩と後輩、師匠と弟子の間の絆としての色合いが強くあったということであり、以前紹介した少女小説のミッションスクールでの女性同士の「Sister」の関係と対比できるかもしれない。

武家社会での封建的な衆道に対して、町人社会で男色の舞台の中心となったのは歌舞伎をはじめとする芸能の世界と蔭間茶屋であった。
本書は、その性の対象であった少年である「若衆 わかしゅ」を主人公に据える。主張したいのは、若衆が、その道の男性たちを虜にしたのは言うまでもないが、女たちも若衆に憧れ、若衆を追い求めたということである。そのことが主として春画資料を用いて描かれている。
これらの春画や浮世絵の中では、男が女に女が男に扮し、時には男を、時には女を魅了していく。

春画や枕絵というものはその性質上、購入者の妄想や願望をすべからく盛りこまねければならないわけで、当時の風俗をそのまま表しているものではないけれども、見ていて興味が尽きないことは確かである。

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