川柳で綴るショートエッセー (16) 棲みついた鬼 2009-01-30 21:28:57 | Weblog 棲みついた鬼一匹が追い出せず 多美 いつのころからか、私の心に居座った鬼。ふくらんだり縮んだりしながら 私をあらぬ方向へ連れていこうとする。 荒れ狂う怒涛へ突き落そうとしたり、足許へ真っ赤な薔薇の棘を敷き 詰めたり。 私はもう年ですから耐えられません。 追い出し作戦の豆をぶっつけても、一向に動こうとしない。 若しかして私によく似た、とても気弱な鬼かもしれない。 雪の中で耐えてる小さな実。 北海道の春はもっと先。 これからが冬本番ですが 氷祭りとか、楽しみなことも続きます。
川柳で綴るショートエッセー (15) 花ふぶき 紙ふぶき 2009-01-27 02:57:07 | Weblog 花ふぶき紙ふぶき いま猛吹雪 多美 こんな私にも乙女の時代がありました。「豆腐屋の娘は色は白いが水くさい♪ 」 そんな私を祝福するように花びらが降りそそぐ、夢見る乙女でした。 当然のように豆腐屋を継ぎ、なにはともあれ恐いもの知らずの私でした。 働くことは素晴らしい、働け!働け!! 50CCのバイクに豆腐、油揚げを乗っけて走るは、走るは・・・ バイクに乾杯、紙ふぶき そして今。日はとっぷりと暮れ、高齢化社会の真っただ中。 雪ふぶきはいつ止むのでしょう どうしたのでしょうか、 白鳥さんたちはお留守でした。 エサやりを禁止されているので 居場所をかえたのかもしれません。 寂しそうな鴨たちでした。
川柳で綴るショートエッセー (14) レモンのレ 2009-01-26 11:36:54 | Weblog レモンのレ 復唱ばかりで日が暮れる 多美 「レはレモンのレ・・レはレモンのレ・・ ♪」 ひがないちにち壊れたレコードの ように繰り返すことば。窓の外は細かい雪がとめどなく降っている。 やりたいことがいっぱいあるのに、こんな日は頭に濡れた座布団でも乗っけたように重い。 窓の外にぼんやり眼をやっている夫に問うてみた。 「お父さん、 いまなに考えている?」 「俺か・・・ 早く春が来ないかな~と思ってさ~」 「どうして? それってさ、早く死を待つことじゃない?」 「そんなことはないさ~ 雪が溶けたら自転車に乗れるじゃないか」 だれにでも平等に過ぎてゆく時間をこの人はひょうひょうと生きている。 年中日焼けのとれない、シベリア帰りの八十五歳に脱帽だ。 私はこの人の真似はできない。相変わらずブツブツ泡吹く蟹さんである。 丑年にちなんでゆっくり生きてみようか。
川柳で綴るショートエッセー ⑬ 身の部品 2009-01-22 11:05:34 | Weblog 曲がるたび捨ててきました身の部品 多美 親からもらったときは真新しい身の部品もうん十年も たってそろそろ悲鳴をあげてくる。 その代表は脳だ。もの忘れ、失せもの、勘違い。 そして方向音痴。 それらは私を道路の真ん中に立ち往生させる。 仕方がないから再生不能は切り離す。 そのたびに軽くなっていく身の部品たち。 目も歯も耳もわたしを離れていこうとするけれど ちょっと待ってね、 ちょろちょろ赤い火があるうちは。 雪景色の中にもなにか赤いものはないのかな?と、 探してみたら、ありました。ハマナスの実です。 ずいぶん萎びてだれだかさんの顔みたい。 ハマナスの実は心臓病の薬になるって本当? 私、心臓弁膜症 なんて驚かされたことがあるんですよ。 齧ってみようかしら?
妊娠馬も駆ける 2009-01-20 00:33:44 | Weblog 帯広市の家畜改良センターという 所へ行ってきました。 ここでは今、冬の馬たちの運動不足を補う ための運動時間をもうけています。 (3月出産予定のお母さん馬)は大きなお なかを揺すって駆ける姿は迫力があり、 感動をします。 雪が降っていました。湿った重い雪を蹴っ て、走るのは大変のようです。 妊娠馬は馬力を落としてゆっくりと800m 走路を1周。 2歳馬、3歳馬は2,3周。115頭の馬たちは 朝の運動にひと汗かいていました。
川柳で綴るショートエッセー ⑫ 転げ中 2009-01-17 10:37:28 | Weblog のぼり坂くだり坂 いま転げ中 多美 のぼり坂をえんやこら、登ったのは子育ての頃でしょうか? つまずいては起き、起きては転びしながら、とにかく元気に登った気がします。 下り坂は特に意識しませんでしたが、多分、二人の子供を社会人として 送り出して以来の生活かしら。 なだらかに下っていたのですね。 ところが、この頃はブレーキの壊れた自転車で坂を転げ落ちるように時間が経 っていくのです。 この速さで落ちてゆく先はどこへ? どなたか時間を止めて下さい。 よく晴れています。気温はマイナスでも、 日の当ったトタン屋根の雪がとけて夕方 にはつららになります。
川柳で綴るショートエッセー ⑪ 影とふたり連れ 2009-01-14 19:58:14 | Weblog 」 抱きしめてやろう私の影だもの 多美 日の暮れやすい冬のバスを降りて家路に急ぐ。 電柱を何本も通り越すたびに影は形を変えて着いてくる。 伸びたり縮んだり、前になったり後ろにいったり。 今夜の影は少し肩を落としている。疲れたの? 問いかけると「うん」と言う。 そうだろうな~、○十五年もいっしょに歩いた影だもの。 とうとうこの冬の初すべり、ものの見事にスッテン転び。 帽子ははるか後ろに飛んでいる。車がスピード落として過ぎていく。 恥ずかしいから早く起き上ろうにもとっさに動けないのは年のせい。 足癖が悪いから踵がすっかり減っている。(これだもの…) 早速靴底に鋲を6本も打ってもらう、1530円。 これだって氷の道路では安心できないのだ。
川柳で綴るショートエッセー ⑩ 雪が降る 2009-01-14 07:26:02 | Weblog なにほどの禊かきょうも止まぬ雪 多美 綿雪が降る日は まったく音のない世界。 近くの家々も木も、遠くかすんで人影もなく 差し出す手のひらにみるみる積もってゆく雪は、 わたしを幻想の世界へと誘そってくれる。 どうかわたしの罪を消して下さい。 雪はもしんしん暮れてゆく。 この写真なにかに見えませんでしょうか? 流しのシンクに溜まった水なのです。 私には白クマさんに見えるのです。 左が頭で右が尻尾。ポトンとなにか 落としたようですね。
川柳で綴るショートエッセー ⑨ ひよいと跨いで 2009-01-11 00:32:32 | Weblog 結界をひょいと跨いで行ったきり 多美 昨年は喪中のハガキが例年より多く、舞い込んだ。 そのなかのおひとりは、私より一回りも年の若い方であった。 色白で威風堂々としたところは、岡本かの子(岡本太郎の母親)にどこか似た風格があり 性格もはっきりしていて、歯に衣を着せぬ物言いはどちらかと言うと男性に人気があったように思う。 彼女の素晴らしいところは、自分の持っている才能を惜しみなく人に与えることころ。 彼女は江差追分の名手であり、指導振りには定評があったが、その彼女が突然に亡くなったのである。 すすり泣きの中を仲間が唄う江差追分に送られて、この世の結界をひょいと跨いで煙になった。 もう帰っては来ない彼女を思うといまだに涙がこみ上げてくる。 (合掌) 我が家の炊飯器です。蓋をパチンと下ろしてもパッと上がってしまうのです。 それで、どんぶりに水を入れて重しにしています。 そのとなりに湯沸かしポットを置いていますが、このポットもいかれているんです。 湯をくみ上げるには大変な労力がいるんです。 なんどもギイコギイコと押さなければお湯が上がってこないのですから。 私は定額給付金を待っているのです。給付金を受ける国民に対して首相は 「是非それ以上、盛大に消費していただくのが一番正しい」と・・・。 絶対にそう致します。そのとなりの電子レンジもオープンレンジにしたいです。
川柳で綴るショートエッセー ⑧ ひろう罪 2009-01-08 10:50:50 | Weblog 花びらを吐いた数だけひろう罪 私は恋をした ねじり鉢巻きで盆踊りの太鼓を打つたくましい腕に その彼は私の親友の彼 私は横恋慕 胸の中は真っ赤な薔薇の花びらで埋め尽くされて・・・ 苦しさにいちまいづつ吐いた花びらは罪の匂いがした 新聞で目に入った広告文で「菊枕」というタイトルが気に なった本。夫に頼んで図書館から借りてきてももらった。 どさっと手渡されたその本の重いこと。 松本清張なんて読んだことがない。政治か、企業の難し いことを書いた本だと思っていたから。 目次をはぐって見ると確かにある「菊枕」 あらっ、私にも読める 滑らかな文体。短編小説集だから読みやすい。不謹慎にもベットに 持って入った。寝て読むには向かないな~と思いながら胸に載せて読ん でいるうちに眠ってしまったらしい。この夜、私は本の下敷きになって死ぬとこだった。
川柳で綴るショートエッセー ⑦ ソックスの中で 2009-01-07 06:41:00 | Weblog ソックスの中でいじめにあう小指 多美 </f ピンクと黒のよこしまのかわいいハイソックスを見つけました。 五本指で水虫予防にいいかも。 手袋の五本指は目をつぶってもいっぺんにはめれるのに、足の指ときたら 一本、一本誘導しなければ、はまらないのです。 小指なんか、縮こまっていて指定席に収めるのに大変です。 無理やりつまんで、やれ履けた。これってなかなか気持ちのいいものですね。 ところがせっかく入った小指がすぐ飛び出してしまうのです。 実はこの小指は小さい頃、ネズミに齧られて変形の片輪ものなのです。 今の時代の子供たちの陰湿ないじめは、ほんの小さなことからでも起こる 悲しい現実ですね。 泌尿科で造影剤を打っての検査を終わったときのこと。 水をたくさん飲んでください、と言われた。 自販機には水のポトルがあったが、水にお金を出すなんて 馬鹿らしい。でも背に腹はかえれない、一本買って飲んだ。 それが美味しいこと。舌に優しいなんとも言えないまろやかさ。 いくらでも飲めてしまう。 帯広は日本一美味しい水と言われていたけれど・・・。 沸かしてお茶をいれたらその甘いこと。これが怪我の功名というものかしら。
川柳で綴るショートエッセー⑥ 紙の帆を上げて 2009-01-05 17:08:52 | Weblog 紙の帆を上げて出港 雨ふるな 多美 夫が出稼ぎに出たあとの留守番は小さな子供ふたりと私と猫一匹。 ある夜、台風が迫っていて、風とともに勢いよく雨が降り出した。 ささくれ立った柾屋根はこんなに穴ぼこだったのか、と驚くほどの雨漏りが始まった。 盥にバケツ、洗面器。それでも足りなくて鍋釜、どんぶりまで動員。 天井からの隙間風を防ぐために重ねて貼った新聞紙に、溜まった雨が大きくたるんで もう破けそうだ、と思う間もなく鈍い音を立てて破れ、子供たちの布団の上にザーッと 降ってきた。あわてて押入れの中に子等を運んだが、押入れの中も雨だった。 その夜はみんなでびしょ濡れになり、海へ流されるかと思った。 今こそ危うい現代の世にあって紙の帆をあげて出港の祈りは続く。 帰省していた孫が茨城へ帰って行った。 フエルトで手作りのマスコット人形の額。皆様のお出でを待ってます。
明けましておめでとうございます。 2009-01-01 07:55:17 | Weblog 新年明けましておめでとうございます。 昨年中は大変お世話になり、有難うございました。 本年もなにとぞ宜しくお願い申し上げます。 今年の抱負は昨年暮れから試行錯誤していました、川柳に自分史的なエッセー を添えて更新していきたいと考えております。 どうか応援をお願い申し上げます。