「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

「秋葉原事件」の背後に見える「派遣労働者」の不安

2008-06-12 12:39:22 | Weblog
 やはり!起きましたね。
 8日昼、東京・秋葉原の歩行者天国は”地獄”の様相を呈しました。7人が死亡し、10人が重軽傷を負った。現行犯で逮捕された青年は、静岡に住む25歳の派遣社員だった。
 メディアは、現場中継からはじまり、被害者遺族、友人の”やり場”のない怒りを伝えました。青年が携帯サイトに予告の書き込みをしていたことや、トラック、ナイフの入手経路、職場のことを詳細に報道しました。携帯サイトの書き込みはまるで「日記」です。「誰かが止めてくれると思った」と語っているといいます。おもえば、7年前のこの日,大阪の池田小学校で児童8人の命が奪われています。
 
 瞬間的に頭の中をよぎったのは「派遣労働者」です。
 またまた安全工学の「ハインリッヒの法則」を思い出しています。「気になることを見過ごすと、大事故につながる」というものです。1990年に労働者派遣法が強引に成立させられました。たしか、当時の社会党も賛成したのじゃないかな。2004年に、さらに大企業の使い勝手のいい法律になってしまった。派遣労働者は一気に増えたのです。「今後どうなるのか」と気になっていたのが「労働法制」の改悪でした。

 事件の翌日、福田首相は「社会的背景を調査するよう」国家公安委員長に命じました。どんな報告になるのでしょうかね。「キレやすい若者が増えている」というのでしょうか。「キレやすい若者を事前に察知して、予防策を講じなければ」とでもするのですかね。「この際、道徳教育の拡大を」なんて言い始めるのではないですかね。
 福田首相の頭の中に、格差社会のなかの「派遣労働者」の実態を調べるという考え方があるのでしょうかね。

 青年が派遣されていた関東自動車工業(トヨタグループだそうです)東富士工場では、今月末から来月末にかけて派遣社員を200人から50人にするというリストラ計画が示されていたといいます。大企業は、自分たちがつくらせた法律で、好き勝手に安い賃金で雇い入れたり、都合が悪くなると「辞めてくれ」なのです。彼は対象外だったそうですが、知らなかった。
 仕事場に行ったらツナギが無かった。辞めろってか わかったよ」という書き込みがあった。「服がない」と大声で叫び、そのまま退社している(東京新聞)。
 いみじくも「派遣労働者」の不安と怒りが出ているのです。福田首相の頭の中に、このような若者が多いという認識があったとしたら、たいしたものですがねえ・・・。

 「派遣労働者問題を真正面からとりあげてみては」とテレビ局に電話してみましたよ。ぼくはいろんなところでテレビの話をさせられていますが、必ずと言っていいほど「テレビ局に電話しても、暖簾に腕押し。まともに聞いてもらえない」という声をききます。「そんなことはない。局にはそれぞれ視聴者の声を聞く係りがいるのです」と答えてきていたのです。
 視聴者のみなさんの言うことももっともだとわかりましたね。NHKは「視聴者コールセンター」が出ます。(余談ですが、わが家の電話でかけたら「おかけになった電話には、お客さまからの電話はおつなぎできません」というアナウンスが返ってきた。受信料不払いだとつながらないのでしょうね。携帯でかけたらつながりましたよ。『その時歴史が動いた』”我が言は万人の声”の資料がほしいと電話したときは、番組資料を送ってもらって感謝したものです。あれは03年5月だった。その後、ブラックリストでもできているのでしょうかね)
 日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ東京は「視聴者センター」。テレビ朝日は「視聴者窓口」にかかりますね。
 答えは、一様に「私どもの方から担当者に伝えます」というものです。素気ない。
 『一秒の世界』という番組のなかで世界の軍事費をとりあげていたことに感動してTBSに電話したときは、わざわざ担当者から電話がかかってきて詳しいことを教えてもらったことがあります。最近のことです。いまやそんなコミュニケーションが図れる仕組みになっていない。
 ぼくが現役のころは「どんな電話でもつないでくれ」と交換台にお願いしていた。本番中でもつないでもらっていた。「昔と今は違う。ダイヤルインなど電話の方式もかわってきている」という向きもありますが、それでいいのでしょうかねえ。
 話はちょっとそれますが、ある局は活字メディアからの取材にもルールをつくっています。「すべて総合広報部が見解をまとめる。個人的に勝手にしゃべってはならない」というのです。ありもしないことをベラベラしゃべる番組担当者なんていませんよ。なにが怖くてそんなルールをつくるのか、理解に苦しみますよ。いまや、テレビの現場に「自由闊達」さはなくなっているのですかね。
 開かれた報道機関になりたいと思うのであれば、視聴者との「塀」、他メディアとの「塀」をいかにひくくするかでしょうに。

 11日の『スーパーモーニング』(テレビ朝日)で、鳥越俊太郎さんが「今回の事件のキーワードは”派遣労働者”だ」という趣旨の発言をしていました。12日の朝も、繰り返し強調していました。突っ込んだ議論にはなっていませんが、この「視点」を広げてほしいものです。

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