べんきょうなせん(='ω')

べんきょうは論理で考えるトレーニング
熊本県山鹿市中高大学受験の "あすく" です

森のこぎつねは寒い寒いってないてるでしょうね|体験と教科書から表現を広げる

2010年02月12日 | 国語
 続きです。

 つもった雪をはじめて見た子狐(こぎつね)には、雪がどんなものに見えたのでしょうか。声に出して読んでみよう。だれかに聞いてもらおう。そのままノートに書き写してみよう。


 寒い冬が北方から、狐(きつね)の親子の棲(す)んでいる森へもやって来ました。

 或朝(あるあさ)洞穴(ほらあな)から子供の狐が出ようとしましたが、
「あっ」と叫んで眼(め)を抑(おさ)えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴(ちょうだい)早く早く」と言いました。

 母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を抑えている子供の手を恐る恐るとりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。母さん狐は洞穴の入口から外へ出て始めてわけが解(わか)りました。昨夜のうちに、真白な雪がどっさり降ったのです。その雪の上からお陽(ひ)さまがキラキラと照(てら)していたので、雪は眩(まぶ)しいほど反射していたのです。雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射をうけたので、眼に何か刺さったと思ったのでした。

 子供の狐は遊びに行きました。真綿(まわた)のように柔(やわら)かい雪の上を駈(か)け廻(まわ)ると、雪の粉(こ)が、しぶきのように飛び散って小さい虹(にじ)がすっと映るのでした。

 すると突然、うしろで、
「どたどた、ざーっ」と物凄(ものすご)い音がして、パン粉のような粉雪(こなゆき)が、ふわーっと子狐におっかぶさって来ました。子狐はびっくりして、雪の中にころがるようにして十米(メートル)も向こうへ逃げました。何だろうと思ってふり返って見ましたが何もいませんでした。それは樅(もみ)の枝から雪がなだれ落ちたのでした。まだ枝と枝の間から白い絹糸のように雪がこぼれていました。

 間もなく洞穴へ帰って来た子狐は、
「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と言って、濡(ぬ)れて牡丹色(ぼたんいろ)になった両手を母さん狐の前にさしだしました。母さん狐は、その手に、は――っと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、
「もうすぐ暖(あたたか)くなるよ、雪をさわると、すぐ暖くなるもんだよ」といいましたが、かあいい坊やの手に霜焼(しもやけ)ができてはかわいそうだから、夜になったら、町まで行って、坊(ぼう)やのお手々にあうような毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。

 暗い暗い夜が風呂敷(ふろしき)のような影をひろげて野原や森を包みにやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く浮びあがっていました。

「手袋(てぶくろ)を買いに」より


 子狐の経験を、マネできたでしょうか?これを「追体験」(ついたいけん)といい、だれかと経験を共有(きょうゆう・ともにもちあう)して、共感することができるものです。

 作者の紹介(しょうかい)に、続きます。(塾長)


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