えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...ありのままに、ユーモラスに......♪

平和百人一首(1) ~平和憲法への想い~

2013年01月19日 | 平和百人一首

 昨年末の衆議院議員選挙直後に私がつぶやいた悪い予感(こちらの過去記事をご参照ください)どおり、安倍政権が改憲に向けて着々と布石を打っていますね。

 さらに、大手メディアまでもが「現憲法はアメリカからの押しつけだ」という論調をこぞって展開しています。権力に迎合することで生き残ろうとしているその姿には、営利組織としての存続の限界が見え隠れしているように私には思えます。
 メディアも一営利団体であることを、読者は何時も忘れてはならないと思います。かつて各新聞社は自社占有の印刷会社を有したけれど、現在は経営的に1社では持てなくなり、新聞社同士で共有しているのが実態と聞きました。大手新聞社とはいえ、営利組織としての経営のためにあらゆる手段を取らざるを得ないという実態と、そのためには、本来メディアとしてとるべき「客観的事実の報道」に相応(相当?!)のバイアスをかけてしまう場合があることを、読者は常に頭の隅に置きつつ、情報を読み解く必要があると思います。

 政府とそれに連動するかのごとく見えるメディアの動きに大きな危機感を抱く国民の一人として、私が微々たる一石を投じるにはどうしたらよいか...このところずっと考えておりました。憲法全文も改めて読み直しました。
 そこで思い立ったのが、手許にある「平和百人一首」の拙ブログでの普及です。これについては数年前一度記事にしました(こちらをご参照ください)が、概略に留まっていたのと、各首に作者の解説が付された冊子が後年追って出版された(非売品)ので、歌と解説両方を一首一首改めて紹介していこうと決めました。「戦争直後庶民の詠んだ平和百人一首を紹介することが、改憲への動きに対してどういう抑止力になるのか?」と嗤(わら)う方もいらっしゃるでしょう。詳しくは、最初の一首を紹介する後日の記事に譲ります。

 初回の今日は、このシリーズを始めるに先立ち、ぜひ紹介しておきたい資料等を掲載します。

 

 国立国会図書館 電子展示会「日本国憲法の誕生」

 日本国憲法の制定過程に関する概説と貴重な資料を展示・解説しているページが、こちらで見られます。次の各章のページで、改正のプロセスから施行に至るまでの詳細な各種資料を見ることができます:
 第1章 戦争終結と憲法改正の始動  
 第2章 近衛、政府の調査と民間案
 第3章 GHQ草案と日本政府の対応
 第4章 帝国議会における審議
 第5章 憲法の施行

 

 『新憲法講話』 憲法普及会編纂 政界通信社発行

 これは、日本国憲法施行直後の昭和22年5月に憲法普及会が発行したもので、憲法の正文と、憲法の精神を国民に徹底するために全国9地域で行われた講習会での憲法学者による講話からなります。
 内容はこちらで原書のまま読むことができます。(上述の電子展示会「日本国憲法の誕生」「資料と解説」の中の「第5章 憲法の施行」に掲載されています。)

 まずは、憲法の前文と9条・96条だけ、敢えてここにも掲載します。

 日本国憲法は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われわれとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

第2章 戦争の放棄 [戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認]
 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第9章 改正 [憲法改正の発議、国民投票及び公布]
 第96条 
 この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成*で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票または国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

 (*ブログ筆者注:安倍首相は、これを過半数に引き下げる考えを表明しています。国民投票までの道のりを加速するのが狙いと考えられます。なお、改憲のための国民投票制度については、総務省の「憲法改正国民投票法」をご覧ください。)

 次に、憲法普及会事務局長だった永井浩氏がこの書物の序文で記している文章を、ここに掲載します(注:内容を変えずにブログ筆者が編集しました。詳細はぜひ原文をご覧ください) 。
 「新憲法の精神が国民一般に脈々として通うまでには、かなりの年月を要するだろう。わが国民は、数百年に及ぶ封建的屈従性から脱し切れていないため、他から律せられることに慣れて、自治能力に著しい欠陥があるからだ。明治憲法も当時としては進歩的な立派な法典だったが、国民の自覚と教養がそれに伴なわなかったがために、一部特権階級の乗ずる隙をつくり、せっかくの法典の短所ばかりを助長する結果となった。
 (略)新憲法は、誕生に至るまでの期間が短く、政府、議会及び一部識者の間で論議されるにとどまった。国民一般は、敗戦後の虚脱状態に続いて苛烈な日々の生活に追われ、新憲法に対する認識と熱意は明治憲法のそれにはるかに及ばないのではないかと思われる。
 しかし、戦争によって失われた人命と国財が新憲法を生み出すための余りにも大きい犠牲であったことを思うと、無関心ではいられないし、国民の自覚と教養が伴なわなければ、いかに立派な法典であっても、いや、立派であればあるほど逆に、恐るべき結果をきたすことを思わざるを得ない。
 (略)戦時中は学説や思想までが一定の鋳型にはめこまれ、上から下に押しつけられていたがために、国民は自ら考え、判断し、実行する力をいつのまにかなくしてしまい、その惰性が今も残っているように思う。新憲法の解釈について、学者間の異論を十分に研究しながら、読者各自が自らの所見と確信を持つことが望ましいのみならず、新憲法の精神にも適うと思われる。」

 

 国立国会図書館のこのページによると、この『新憲法講話』は、普及活動を行う人を養成する際の教科書という性格が強かったそうです。直接国民への普及を図るために2,000万部発行され、全国の各家庭に配布された『新しい憲法 明るい生活』も併せてご参照ください。(リンクで原書のまま読むことができます。テキストで読むには「テキストの表示」ボタンをクリックしてください。)。

 

 映画 「日本の青空」 大澤 豊 監督 小室皓充 プロデューサー

 これは、日本国憲法施行60年に当たった2007年に、憲法誕生を巡る真実を若い女性の視点から描いた映画です。ドキュメンタリー映画は一般人にはむずかしいけれど、劇映画ならわかりやすいのではないか、という趣旨で作られました。
 現在は上映されていませんが、無料鑑賞会用DVDが発売されています。個人鑑賞目的ではなかなか手が出ない金額(8万円)なので、せめてくだんのホームページを、あるいはあらすじだけでもご一読ください。ちなみに、映画を観た私のレビューをこちらに載せています。

 この映画の中で、鈴木安蔵を中心とした民間人による「憲法研究会」が作成した憲法草案が実はGHQの草案の手本となっていたという事実が、明らかにされています。

 また、この映画でも描かれたベアテ・シロタ・ゴードンさんが、奇しくも安倍政権が誕生してまもなく亡くなりましたね。残念です。

 

 『戦後史の正体 1945-2012』  孫崎 享(まごさきうける)著 創元社発刊

 これは、元外務省の国際情報局長が、今までほとんど語られることのなかった“米国からの圧力”を軸に、戦後史を読み解いた著書です。
 まだ読み始めたばかりで紹介するのも恥ずかしいのですが、目次と概要を見ただけでも、多くの人に読んでもらいたいと思える内容です。ぜひ一度手に取ってみてください。

 

 『災害派遣と「軍隊」の狭間で ―戦う自衛隊の人づくり』 布施祐仁(ふせゆうじん)著 かもがわ出版発刊

 「この本は、日米同盟に引きずられる形で『一人前』の軍隊に近づきつつある、自衛隊の『人づくり』」を取材したものである。実際の戦場で任務を遂行できる『一人前』の兵士をつくるために、今、自衛隊の内外でどのようなことが行われているのか―。現役の自衛官や元自衛官へのインタビュー、そして情報公開法を活用して入手した自衛隊の内部文書などを元に追った。」(「はじめに―狭間で揺れる自衛隊」より引用)

 この著書もまだ読み終えていませんが、その中の一文を引用します:
 「アメリカにも匹敵する『貧困大国化』が、自衛隊への『経済的徴兵制』をいっそう後押ししているのは間違いないだろう。」

 

 堤 未果氏(ジャーナリスト)の講演

 数年前に聴講し、過去何度かその内容に触れてきた堤 未果(つつみみか)氏の講演について、また紹介させてください。ぜひこちらの過去記事をご一読ください。私には、現在の日本社会が9.11直後のアメリカ社会と重なり、同様のリスクをはらんでいるように見えて仕方ありません。

 原発再稼動や衆院選の結果や改憲を目指す動きなどの事態に直面する度に、実は悄然としてしまう私...。でも、そんなときには、堤さんが講演を結んだ言葉に立ち返ることにしています(くだんの過去記事の一部記載内容と重複します)。
 イラク帰還兵の言葉:
  イラクに行く前      敵はテロリストだと思っていた
  イラクに行ってから   敵はホワイトハウス・大企業・メディアだと気づいた
  イラクより戻ってから  真の敵は無知だった自分だったと気づいた 
 個人名ばかりが表に出るニュースは要注意である。問題は個人ではなく、それを生み出した「仕組み」であることを見抜くことが大事だ。
 *諦めたらその時点でおしまいだから、諦めてしまうことも敵になる。

 

 このシリーズの初回記事は以上です。こんな冗長な記事に最後までおつき合いくださり、心から感謝します。

  「改憲するなら内閣総理大臣を直接選挙にしたい&被爆国として国防軍を持つことが国際社会での名誉ある地位を占めることになるとはとても思えない」takuetsu@管理人でした。

 

 追記: 次の著書も手に取ってみてください。私の亡き父と妹の著書です。
      『死闘 天宝山―日中戦争深発掘 増補改訂版  小柴典居 著
      『ピンク色の雲 ―おばあちゃんのヒロシマ』 宇留賀佳代子 著 稲田善樹 絵

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テーマフォト ~亜芸術ギャ... | トップ | 折り紙 ~季節の風物:椿~ »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとう! (ピーチ)
2013-01-20 16:51:42
etuちゃん、たくさんの資料紹介ありがとう

今の政権は恐ろしいくらいに怪しすぎる!

●以下の様な「エコノミスト」誌記事の日本語訳が、あるメーリングリストで流れましたので、御参考までにお知らせしますね。
憲法、教育、対アジア外交、戦争責任問題等々、どうなることかです。

日本の新内閣:未来に背を向けて
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36873
(開くまでにかなり時間がかかるけど)

●また以下の様な記事もあります。
「産経新聞」の報道
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130111/plc13011101460004-n1.htm
男女共同参画会議に教育学者の高橋史朗氏 伝統的家族観へ是正も 
返信する
ピーチさんへ:こちらこそありがとう! (takuetsu@管理人)
2013-01-21 17:33:06
ピーチさん、こちらにもコメントありがとう!!

長ったらしい記事を読んでくださり、感謝です。
ご紹介の記事も拝読しました。上のURL、すぐつながりましたよ。パソコンとかブラウザにもよるのかな?

中国のようなでたらめな国を牽制するには、「自ら核兵器を持つ」 or 「あくまでもアメリカの属国に甘んじて核の傘下にいる」...それしかないと考えられているのでしょうが...。
&そのいずれを選ぶにも九条がネックになるから、政府はやっきになって改正しようとしているのでしょうが...。
一旦タガを外した桶がどうなるか...想像しただけでも怖ろしいですよね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

平和百人一首」カテゴリの最新記事