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六月の風7 豊頃のハルニレ

その樹は、十勝地方豊頃町、十勝川のほとりに、立っています。
たぶん、日本で一番有名なハルニレです。
初代「この木何の木気になる木」として、TVコマーシャルに取り上げられ、一躍有名になったのは、確か1970年代だったかと思います。

広い河川敷はその川が暴れ川である証拠。
十勝川は過去何度も大洪水を起こしています。
河川工事が進んで川を直線的にしても、豊かな水辺が失われ、生態系がかなり失われる割に、洪水を完全に封じ込めることはできませんでした。

今では逆に川の流れを昔のように戻して自然に蛇行させ、適度に氾濫させることで、溜めた上での大洪水を回避する、というように治水思想も変わりつつあるようです。

上の写真では、バイクがあるところが堤防。
広々と広がる草原が全て河川敷。向こうにある森のようなものの向こうに本流が流れ、その向こうにさらに対岸の河川敷の草原が広がっています。

バイクを止め、堤防を降りてハルニレに向かいます。
広い広い河川敷。
私のほかには誰もいません。

河川敷は一面の草原。
草原の中に一条、草を刈った道がついています。
その道を歩いていきます。



とても美しい樹です。
そしてとてもやさしい表情です。

私は10年前から5年間、十勝地方に住んでいました。
その頃、この樹には毎年数回ずつ、会いに来ていました。
時には一人で、時には妻と小さな息子と一緒に。

連れて来る度に息子は大きくなり、5年前、石狩地方に引越したのを最後に、
今日までこの地には来ることがありませんでした。

5年ぶりだというのに、ここはまるで何も変わっていないかのように感じられました。

いや、初めてこの地を訪ねた20年前も、堤防やその上の建物の姿は違っても、この河川敷とこのハルニレは、今と同じように私を迎えてくれたたような気がします。

不思議な場所、素敵な場所です。


ハルニレの下から、今来た草原の道と堤防を振り返ります。

草原の中に、もう一本、ハルニレが見えます。
この樹もきれいな樹です。

堤防の上に白く小さく建物が見えます。
十勝川の河川管理者や作業員が休憩できるように作られた建物です。



ハルニレの周りは草が円形に刈られ、樹の下には厚く、ふかふかにウッドチップが敷かれています。
柵もありません。

この場にきたら誰でもきっと、ハルニレの樹の膚にに触れてみたくなるに違いありません。
私も少しさわらせてもらいました。
これだけオープンな環境で人が近寄れるようになっているのに、ナイフで傷をつけたり、名前や文字を彫ったりした跡が見つからないことに、私はほっとし、どこかありがたいような気持ちになっていました。


もう何年前のことだったでしょうか。
私は一度、この樹の下で、昼下がりから、夕方になり、日が暮れて夜になるまで、ずっと座っていたことがあります。
その時も私は一人きりで、他に誰の姿もなかったのでした。

今日はそこまで長居はできませんが、ハルニレの根方に腰を下ろし、しばらくの間、風に流れる雲や、草原や、遠くに見える低いやまなみを眺めていました。

ハルニレの幹は近くで見ると力強く、年輪と威厳を感じさせます。
同時に、たおやかな枝振りと瑞々しく柔らかな葉は、この樹の印象をとてもやさしいものにしています。

もう少しだけ、側にいてもいいですか。



6月17日火曜日。平日の午後、15時42分。
空は晴れ渡り、爽やかな風は静かに吹き渡っていきます。  (つづく)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (ぶるーあい)
2008-06-27 05:59:37
すばらしい環境のなかにあるハルニレですね、自分よりはるかに長く生きているものへの畏怖というのでしょうか、そのような気持ちは大切にしたいですね。それは世界遺産にも当てはまることでしょうね。
 
 
 
Unknown (めろん)
2008-06-27 17:43:58
オオーw(*゜o゜*)w
そこ行きましたよ♪
たしかお連れさんと一番最初に行った時かなぁ。
周りや樹も全然変わってないです^^
その樹の下まで行くのが遠くて&車も心配で
ハルニレの樹に集中できなかったのを良く覚えてます(笑)
たしかこの時もあまり晴れてなかったような^^;
 
 
 
Unknown (弾正)
2008-06-27 19:43:34
へぇ~、2代目なんですね。^^
この木が北海道にあることすら知らなかったです。
もし、バイクに乗ってなかったら一生気がついてないかも…。
北海道って寒いイメージが強くて、わざわざ行きたくないところの3本指に入っていましたけど、ここのブログ始め、他のバイクブログを見始めていつかはバイクで行ってみたいって思うようになりました。(笑
 
 
 
コメントありがとうございます。 (樹生和人)
2008-06-27 20:46:37
ぶるーあいさん、こんにちは。
そうなんです。これだけ木の周りが開けているのは珍しいと思います。
しかも、この樹の樹幹がきれいに半球形になっているということは、この木が育つ段階から、この周りには高い木や枝を張ったライバルがいなかったということなんです。
むろん、植樹したものでもありません。
なんだか、すごいですよね。
自然に対する畏怖の気持ち、大切にしたいと思います。


めろんさん、こんにちは。
おお!いらっしゃってたんですね。
そう、道から遠いんですよね、見えていてすぐ近くな感じがするだけに、数百メートルでも遠く感じるんです。
めろんさん来訪時はここも曇りでしたか…。
曇りには雲りの、雨には雨のよさがある…とはいっても、曇りや雨ばかりだと、晴れ間が恋しいですよね。陽に輝く景色がまた北海道らしく美しいのでなおさらですね。
やはしこれは晴れた日に是非また来てね!という北海道のラブコールだったのでは…、と考えるのはいかがでしょう。


弾正さん、こんにちは。
いやあ、弾正さん、北海道はいいですよ~。
私なんか家族で広島から引越しちゃいました。
もちろん、広島は広島でよく、その広島のよさは北海道にはないものなのですけれど。
爽やかな六月、夏の盛りの8月上旬など、最高ですので、是非おいでください。
あえて真冬に来て、雪と氷の大地を満喫(バイクでは普通は無理ですけど)するのもお勧めです!!
まだまだ素敵なところが多いので、バイクで走ってはご紹介したいと思います。

 
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