バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
秋の一日(1)小金湯不動(北海道の樹を訪ねて‐44‐)

《北海道の樹を訪ねて‐44‐小金湯不動五訪》
世の中に、いつも余裕の笑顔の人と、いつもぎりぎりの人がいるとすると、僕はいつもぎりぎりの方だ。
どうしてこんなにへとへとになっているんだ、力を抜け!と自分に言い聞かせてはみるものの、気が付けば階段の途中でへたり込んでしまうほど疲れてしまっている。
いや、特に今年に限ったことではない。僕はずっと、そんなペースで生きてきているのだ。
だからかもしれない。僕はバイクを必要としているし、バイクで走ることが僕が生きる上では今のところ、どうしても欠かせないのだ。
それにしても今年の9月はきつい。
中旬の風邪から快復したものの、疲れ、だるさに苦しめられたまま、18日の木曜日、なんとか夕方時間を空けてZOOMさんに赴き、チェーンと前後のスプロケットを交換してもらったのだった。
世の中はシルバーウィークだが、僕は23日から25日まで出張まで入っていて、そのための準備が連休中に忙しい。
19日は自宅デスクワークと午後からの休日出勤で終わった。
20日、日曜日。
昨日の仕事にミスがあり、今日は短時間だが職場に行かなければならない。
いつもは7時台に出勤するが、今日は8時台に家を出た。
途中、ちょっとだけより道をして、いつものちょっとお気に入りの場所を通る。
8時35分。
一呼吸入れたら、すぐに職場に向かった。

ミスの修正は20分で終わった。新たな持ち帰りの仕事の資料をデイバッグに詰め込んで職場を出る。
天気のいい秋の日だ。
ちょっとだけ散歩していこうか。
ふらふらと山の方へ。
もう大雪山では紅葉が山を駆け下り始めたと聞くが、さすがに石狩地方ではまだまだだ。
ふと、崖の斜面の中に一本だけ黄色く色づいた木を見つけた。9時35分。
明るい陽射し。やや冷たい感じの、爽やかな空気。
もう少し散歩しよう。

札幌市南区、国道230号線は行楽へ向かう車で長い長い車列ができている。
なんとか流れてはいるものの、これは渋滞と呼べるほどの混雑だ。
裏道に回ると、裏道もいつもより車が多い。
それでも、これもまたお気に入りの場所で、しばしバイクを停める。
黄色い絨毯は刈り入れが近づいた稲の田んぼだ。
美しい農家。
毎回通る度に眺めてしまう。
それにしても、国道があんなに混んでいるなら、中山峠で羊蹄山を見るというのもアウトだ。定山渓から朝里峠もなしにしよう。昼間までには帰ると妻に言っているのだし…。
そうだ、小金湯温泉にある大きな桂の樹、小金湯不動を久々に訪ねてみよう。
大きくて、やさしくて、好きな樹のひとつだ。一年ぶりになると思うが、変わらずにいるだろうか。
(9時42分)

小金湯不動には過去4回訪れている。
「北海道の樹を訪ねて―1 札幌小金湯桂不動(カツラ)」2007年3月1日
「北海道の樹を訪ねて14 小金湯不動再訪1」「同2」「同3」2007年8月19日
「秋空 黄葉 小金湯不動―北海道の樹を訪ねてー21」(2007年10月5日)
「北海道の樹を訪ねてー25 小金湯不動四訪」(2008年1月31日)
はじめて訪ねたときは早春、まだ雪の中だった。
夏の青葉、秋の紅葉、再び冬の姿…。
いつ訪れても、このカツラの老木はやさしく迎えてくれるような気がした。
この3年の間に、小金湯不動もその周りの環境が変わった。
古い木造の「黄金湯温泉」は取り壊され、代わりに新しい「小金湯」ができた。
樹の側にあった温泉旅館の従業員用の宿舎も取り壊され、駐車場になった。
以前より、日当たり、風通しはよくなっている。
今回は樹の北側に小さな鳥居と賽銭箱が設置されていた。
根方にコンクリの土台、幹近くまで引かれた駐車場の白線。
この樹が、地形的にこの場所の気の中心になっていると思うのだが、保護策としてはどうなのだろう…。
今日はバイクを少し離して停めた。

小金湯不動は樹齢700年以上と言われるカツラの樹だ。
元々あっただろう中央の主幹は既に失われ、主幹の周囲にびっしり生えたひこばえの枝が互いにくっつきながらびっしりと伸びて1本の樹でありながらまるで森のような概観を呈している。
東側、この樹の正面ということになるのだろうか、樹のウロの中に石の不動明王像が安置され、しめ縄が永く張られていた。
それが、今回はしめ縄はあるが不動像がない。

根方の、たくさんの地蔵がある辺りに、移転、安置されていた。新たに小さな祠も作られ、賽銭箱が置かれている。
並んだ石の地蔵たちは、さまざまな仏の像たちだったが、中に「大正8年…男児死産…」と彫られた石仏もあった。
この樹の寿命が700年~800年、仏教がこの地に入って百数十年。
この場所で、この巨樹に、人々はいろんな思いを訴えて来たのだろう。

ざっと、風が舞い、ハート型の小金湯不動の葉が、いくつか空に舞った。
カツラの落葉は他の広葉樹よりも早い。
老いつつも、小金湯不動は今年も大きな樹冠いっぱいに葉をつけ、そして秋、周りの木々よりも一足先に紅葉して散っていく。
今日も何人かの人が鳥居の前で手を合わせ、祈りや願いを捧げていた。
僕はあと幾度、このカツラの樹を訪ねるだろう。
僕がこの世からいなくなった後でも、小金湯不動にはここに立っていてほしい…。
ふと、そんな思いが胸をよぎった。
それは、この樹の老いを、今まで訪ねた中でも一番強く感じたからかもしれなかった。
いや、そんな感傷的な自分勝手な想像こそが、この樹の周りにまとわり付く枷(かせ)になっていくのかもしれない。
秋の陽に光る数え切れないほどの葉。
いままでになく疲れた自分。
秋の日は、命のことを考えさせる。
2009年9月20日、10時01分。
大きな桂の老木に挨拶を捧げ、僕は5回目の訪問を終える。
(「秋の一日」つづく)
世の中に、いつも余裕の笑顔の人と、いつもぎりぎりの人がいるとすると、僕はいつもぎりぎりの方だ。
どうしてこんなにへとへとになっているんだ、力を抜け!と自分に言い聞かせてはみるものの、気が付けば階段の途中でへたり込んでしまうほど疲れてしまっている。
いや、特に今年に限ったことではない。僕はずっと、そんなペースで生きてきているのだ。
だからかもしれない。僕はバイクを必要としているし、バイクで走ることが僕が生きる上では今のところ、どうしても欠かせないのだ。
それにしても今年の9月はきつい。
中旬の風邪から快復したものの、疲れ、だるさに苦しめられたまま、18日の木曜日、なんとか夕方時間を空けてZOOMさんに赴き、チェーンと前後のスプロケットを交換してもらったのだった。
世の中はシルバーウィークだが、僕は23日から25日まで出張まで入っていて、そのための準備が連休中に忙しい。
19日は自宅デスクワークと午後からの休日出勤で終わった。
20日、日曜日。
昨日の仕事にミスがあり、今日は短時間だが職場に行かなければならない。
いつもは7時台に出勤するが、今日は8時台に家を出た。
途中、ちょっとだけより道をして、いつものちょっとお気に入りの場所を通る。
8時35分。
一呼吸入れたら、すぐに職場に向かった。

ミスの修正は20分で終わった。新たな持ち帰りの仕事の資料をデイバッグに詰め込んで職場を出る。
天気のいい秋の日だ。
ちょっとだけ散歩していこうか。
ふらふらと山の方へ。
もう大雪山では紅葉が山を駆け下り始めたと聞くが、さすがに石狩地方ではまだまだだ。
ふと、崖の斜面の中に一本だけ黄色く色づいた木を見つけた。9時35分。
明るい陽射し。やや冷たい感じの、爽やかな空気。
もう少し散歩しよう。

札幌市南区、国道230号線は行楽へ向かう車で長い長い車列ができている。
なんとか流れてはいるものの、これは渋滞と呼べるほどの混雑だ。
裏道に回ると、裏道もいつもより車が多い。
それでも、これもまたお気に入りの場所で、しばしバイクを停める。
黄色い絨毯は刈り入れが近づいた稲の田んぼだ。
美しい農家。
毎回通る度に眺めてしまう。
それにしても、国道があんなに混んでいるなら、中山峠で羊蹄山を見るというのもアウトだ。定山渓から朝里峠もなしにしよう。昼間までには帰ると妻に言っているのだし…。
そうだ、小金湯温泉にある大きな桂の樹、小金湯不動を久々に訪ねてみよう。
大きくて、やさしくて、好きな樹のひとつだ。一年ぶりになると思うが、変わらずにいるだろうか。
(9時42分)

小金湯不動には過去4回訪れている。
「北海道の樹を訪ねて―1 札幌小金湯桂不動(カツラ)」2007年3月1日
「北海道の樹を訪ねて14 小金湯不動再訪1」「同2」「同3」2007年8月19日
「秋空 黄葉 小金湯不動―北海道の樹を訪ねてー21」(2007年10月5日)
「北海道の樹を訪ねてー25 小金湯不動四訪」(2008年1月31日)
はじめて訪ねたときは早春、まだ雪の中だった。
夏の青葉、秋の紅葉、再び冬の姿…。
いつ訪れても、このカツラの老木はやさしく迎えてくれるような気がした。
この3年の間に、小金湯不動もその周りの環境が変わった。
古い木造の「黄金湯温泉」は取り壊され、代わりに新しい「小金湯」ができた。
樹の側にあった温泉旅館の従業員用の宿舎も取り壊され、駐車場になった。
以前より、日当たり、風通しはよくなっている。
今回は樹の北側に小さな鳥居と賽銭箱が設置されていた。
根方にコンクリの土台、幹近くまで引かれた駐車場の白線。
この樹が、地形的にこの場所の気の中心になっていると思うのだが、保護策としてはどうなのだろう…。
今日はバイクを少し離して停めた。

小金湯不動は樹齢700年以上と言われるカツラの樹だ。
元々あっただろう中央の主幹は既に失われ、主幹の周囲にびっしり生えたひこばえの枝が互いにくっつきながらびっしりと伸びて1本の樹でありながらまるで森のような概観を呈している。
東側、この樹の正面ということになるのだろうか、樹のウロの中に石の不動明王像が安置され、しめ縄が永く張られていた。
それが、今回はしめ縄はあるが不動像がない。

根方の、たくさんの地蔵がある辺りに、移転、安置されていた。新たに小さな祠も作られ、賽銭箱が置かれている。
並んだ石の地蔵たちは、さまざまな仏の像たちだったが、中に「大正8年…男児死産…」と彫られた石仏もあった。
この樹の寿命が700年~800年、仏教がこの地に入って百数十年。
この場所で、この巨樹に、人々はいろんな思いを訴えて来たのだろう。

ざっと、風が舞い、ハート型の小金湯不動の葉が、いくつか空に舞った。
カツラの落葉は他の広葉樹よりも早い。
老いつつも、小金湯不動は今年も大きな樹冠いっぱいに葉をつけ、そして秋、周りの木々よりも一足先に紅葉して散っていく。
今日も何人かの人が鳥居の前で手を合わせ、祈りや願いを捧げていた。
僕はあと幾度、このカツラの樹を訪ねるだろう。
僕がこの世からいなくなった後でも、小金湯不動にはここに立っていてほしい…。
ふと、そんな思いが胸をよぎった。
それは、この樹の老いを、今まで訪ねた中でも一番強く感じたからかもしれなかった。
いや、そんな感傷的な自分勝手な想像こそが、この樹の周りにまとわり付く枷(かせ)になっていくのかもしれない。
秋の陽に光る数え切れないほどの葉。
いままでになく疲れた自分。
秋の日は、命のことを考えさせる。
2009年9月20日、10時01分。
大きな桂の老木に挨拶を捧げ、僕は5回目の訪問を終える。
(「秋の一日」つづく)
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

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生き急いでるこんな世の中だからこそかもしれませんが(^_^;。
コメントレスありがとうございます☆★
絶対的な速さではなく、コンパクトでかつキビキビとした走りってのが僕の思うホンダマインドなんですよ~(笑→すみません、昔からホンダ党です。車はオデッセイを発表したあたりから見限りましたが…。あんな肥大化した車を作ってしまって…本田宗一郎は泣いてますな)。FTRを選んだのはそんなとこにも理由はあるんですが、250クラス(現在は223)でしか出てないってのも魅力の一つでしたね♪♪
今日は福山の鞆にソロツーリングです。僕の住んでる岡山市からだと適当に近い(笑)距離にあって、癒やしとうまいご飯を求めて出かけるには絶好の場所なんですよ♪♪
明日からの出張がんばってくださいね★☆
鞆の浦、いいですね。瀬戸内の静かな海、四季を通じて美しいですよね。
昔、広島市に住んでいたので、思い出します。
私にとってのホンダの印象は「チャレンジングスピリッツ」です。
「これは売れるだろう」ではなく、「これこそが我々の理想だ」という車やバイクを、どんどん発表してもらいたいと思っています。
出張頑張ってきます。ありがとうございます。